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異世界よ、これが無職だ!〜災厄の魔女と始める異世界無双〜  作者: 湊カケル
1章 追放〜翻弄され続けた男は自由を渇望する〜
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13話 無職はなぜか言葉を理解する


 やつらに連れ去られてから一体どれぐらい経ったか……少なくとも1週間は経っているはずだ。


 あれから毎日騎士達のストレス発散のためのサンドバッグにされている。

 草むらみたいな所でボロボロにされることもあれば荒野みたいなところの時もある。そのおかげで身体は既に満身創痍の状態が続いている。

 しかし絶対に死にはしない。 俺の身体はギリギリで持ち堪えている。 というか持ち堪えさせられている。 青鎧の集団は全員で大体15人ぐらいいて、その中の1人だけが回復系の魔導を使える。

 俺は鎧達にボロ雑巾のように扱われたあと、死なないようにその回復役に回復の魔導をかけられる。 一応、傷はある程度治るのだがすぐにまた鎧らに殴られ蹴られる。 

 ずっとこれの繰り返しだ。 しかし何事も続くと慣れてくるもので案外これが耐えられる。 というのも地球、日本でも言葉か暴力かの違いはあったが、俺がやられていたことは同じだったから。 

 回復されているだけましとさえ思えてくる俺はもうやばいかも知れない。 それこそ日本にいた時は死にたいとすら思っていた時もあったし……。 別に今、思っていないわけでもないんだが。

 ムカついていないかといえばめちゃくちゃムカついている。 もし俺がチートとかを持ってたらどのように仕返しするかのシミュレーションまで完璧にできてしまった。 

 チートなんて持ってないが…………。


 いや、考えてみたら陰湿じゃない分だけこっちの方が幼稚か。 肉体的には辛いけど……。 だがメンタルにこない分まだ持ちこたえられる。


 こんなことを考え始めた俺はやはりやばいのかも知れない……。








 まだ暴力は終わらない……。

 いつまでこんなことを続けるつもりなのか……。

 本当にやばいかもしれない、最近俺の思考が固定化され始めている。





 青鎧の奴ら絶対殺してやる殺してやる。

 惨めに凄惨に殺してやる。

 ただ殺すだけじゃ飽き足らない。

 肉体的にだけじゃない、精神的にも殺してやる。

 死にたいと懇願するように殺してやる。

 復讐してやるっ……


 殺す…殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す絶対に殺してやる。


 誰を殺す? 誰が俺をこんな風にした? 誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だッ! 誰が俺をこんな状況にしやがったッ!?


 青鎧の奴ら。

 それと奴らを手引ひたヤツらがいるナ、それも多分王とか宰相とかその辺りモ、そうじゃなきゃあの部屋に入れないハズ。

 それなら何故。

 何故俺にあんな条件を出してきた? 何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故。


 アァ、分からない。イライラするな。





 あれからさらに2週間ぐらい経ち、頭がようやく落ち着いて来た。 一昨日ぐらいまでは本気で殺すとかやばいことしか呟いてなかった気がする。 冷静に戻れた理由はどうやって殺すかを考え始めたからと、これ以上の辛さを味わったことがあったからだな……殺す……っと、落ち着こう、俺。

 気が緩むと出てくるな。

 

 ちなみに未だに暴力は継続中である。

 しかしここまでくると逆に不思議に思えてくる。 奴らは俺をボコることに飽きはしないのだろうかと。


 俺もボコられている間、何もしなかったわけだでは無い。 必死に抗おうとしたし逃げ出そうともしたしやつらを殺そうともした。 逆に、反撃され棒切れのようにされたが。

 しかし今の何もない、分からない状態では逃げ出せないことが早いうちにわかった。


 だからそれからは観察に徹していた。 この辺りだな、落ち着き始めたのは、もちろんやつらへの殺意は微塵も失っていない、むしろ増している。

 だからこその観察、力で負けているなら頭を使うしかない。 


 相手も人間だ。 長時間旅をしていればある程度ルーティンのようなものも決まってくる。


 まず一つ分かったことはいつも俺がサンドバックにされる時間帯は奴らの休憩中であることだ。 これは馬とかの休憩も兼ねているらしい。 

 時々俺が床に倒れた時に馬に水をやってるのが地面から見えた。


 二つ目は、夜には基本的に進軍は止めていること。 深夜でも移動していたのは最初のうちだけだった。たぶん何かの理由で早く城を離れたかったのかもしれないな。 その理由までは分からないが……。 こっちの言葉が分からないから、奴らか情報を聞けないのが悔しいところだ。


サンドバッグが終了後は馬車の荷台へと投げ込まれる。 そしてすぐに鍵がかけられその前に見張りが立ってそのまま夜が明ける。

 最近はこれの繰り返しだ。


 そして今日この夜、俺の耳に思いがけない声が聞こえてきた。

 深夜、外にはいつも通り2人だけ見張りがいて雑談を交わしている。

 普段なら何を言ってるか分からないから特に気にもしない。 しかし今日はなんとはなしに馬車の空いた隙間から様子をやつらの伺ってみた。

 それが出来るのもこの馬車がボロかったお陰だが……。 しかもうまい具合に光の加減で中から外は見えるが、中が暗いため外から中は見えないという状態になっていた。

 それもサンドバックにされている時に確認済みだ。

 なんて優秀なサンドバッグ何だろう、俺は。

 はぁ……。


 「*(*(%^%)(#$#)(()% 隊長の話を」

 「%*^%聞いてないが」


何の話だ? 

 …………って、ん? 今おかしくなかったか? 何気なく聞いていたが。 あいつら今日本語喋ってなかったか?

 耳を澄ましてみると他にも何か聞こえてくる。


「隊長もそろそろあのガキをサンドバックにするってのに飽きてきたって事だよ。 まあ、3週間も殴ってりゃそりゃ飽きるわ。 あのガキ泣き叫んだりしたのも最初の何日かしかしねーし。 もしかしたら痛みとかねーのかもしれねーな」


 は? 何言ってくれてんだ? 

 全然痛覚あるんだが? 普通にめっちゃ痛いんだが?

 てかやっぱり日本語聞こえるぞ?


 「ちげーねー。 だけどよ飽きたっつっても隊長はどうする気なんだ? 俺たちはシドが治せる範囲でしか痛めつけられないだろ? 俺らは殺しちゃいけないとの上からの仰せだし」

 「ああ?ちげーよお前、その命令は俺らの手で奴が死ななきゃいいってことなんだよ」

 「ん?どういうこった? 」

 「はぁ、これだからバカはよぅ。 つまり俺らが直接手を出さなければ死んでもいいらしい。 だからゴブリンを使うんだってよ」


 奴らが言うゴブリンとはこの異世界において最下級の魔物だ。 一般人でも2人ぐらいいれば倒せると言われている魔物で、外見は緑色の肌をしており頭には二本のツノが生え、知能は低い。 そして顔面は豚のようだとよく言われているらしい。

 ローリーとの「日本語のお勉強」を一緒にしている時に教えてもらった。


 「何をするんだ? あんな雑魚を使って。 しかもあのガキかなり弱いから下手したら死んじまうぞ?」


 そう、青鎧のやつらならゴブリンを殺すことなど本当に片手間のようにできる。 

 だから奴らがゴブリンを侮るのも無理はない。 そもそもゴブリンの恐ろしさはその異常な繁殖力だから戦闘ではことさら恐れる必要はない。

 だが俺の場合は違う。 一般人2人で倒すことのできるゴブリンということは、単純計算でいえば俺が20人必要ということになる。

 俺のステータスは基本的には一般人の1/10しかないのだから。

 俺1人でやつらと相対したらもう逃げに徹するしか、生き残る方法はないだろう。


 まじか……。


 かなり暗鬱とした気持ちになってきた。 なぜ異世界の言語を喋っているはずの彼らの言葉がわかるのかという疑問がどうでもいいほどに。


 「別にいいんだよ、それはそれで。 死んじまっても、殺すのはゴブリンだし、上からの命令にも逆らっていねぇ。 死体も食ってくれるはずだしな。」

 「おぉ、頭いいな」

 「ああ、だがそれは隊長の本当の目的じゃねぇ。 隊長の真の目的はゴブリンにあの異世界人を犯させることなんだよ」

 「襲わせる……つってもあいつは男だぞ?」

 「ばーっか、んなこと知ってるよ。 だがゴブリンどもはアホだ、それもとてつもなく。ちっと女の格好でもさせれば気づかねーだろ」

 「た、たしかに……。 隊長は天才だなおぉい!」


 話を聞いていた男が興奮気味にそう叫ぶ。

 っておい!? なんで天才なんだよ! 悪趣味にもほどがあるだろ!

 あいつらぁ……。 俺がゴブリンに襲われないように必死になって逃げる様を見て楽しもうとか本当に腐ってるな。 虫唾が走る。

 悪態を思いっきりあいつらに吐いてやりたい。

 やりたいが、それを寸前のところで我慢する。


 奴らは俺が言葉が理解できないことを知っているからここまで情報を大声で漏洩してくれるんだ。 もし言葉を理解できていることを知れば奴らみたいなあほで低能なやつらでもここまで迂闊に話したりはしここまでなくなるはずだろう。


 「で、それはいつ結構なんだ!? もうすぐ始まるのか!?」


 話を教えて貰った方の男はやばいくらい興奮していた、隣で話していた男が軽く引くくらいに。

 下手したらナニをおったててそうなぐらいに。


 「……はぁ、ばっか。 今やってもよく見えねーだろうが、あいつの泣きわめく様子とかをよぅ。 だからショーが始まるのは明日の昼ごろだってよ。 今もう一個の馬車の方ではあいつが逃げ切れるか逃げ切れないかで賭けをやってるそうだ」

 「だからさっきからあっちの方が騒がしいのか!? てことは今すぐにでも参戦しなきゃいけねぇなぁそりゃ」

 「ちょ、待て待て、後ちょっとで見張りも交代だろうが」

 「……しょうがねぇ、じゃあもうちっとだけ待つか。 あー早く交代にならねぇかなぁ」


 カタカタと小刻みに貧乏ゆすりをする音が聞こえてくる、一刻も早く賭けに行きたいらしい。

 2人の会話を盗み聞きながら思考を整理する。


 まずゴブリンに犯されたりしたら俺が持たない身体も心も。

 またゴブリンに追いかけられるような展開になってもこっちの詰みだ。 無様に逃げ回って襲われる姿しか浮かばない。

 だが幸いなことにそれは明日の昼からだからまだ余裕がある。 今までのルーティンから考えても俺が逃げてないかを確認するのも明日の朝。 

 つまり今から日が昇ってくるまでは基本的に見回りには来ない。 てことはそれまでに逃げ出すしか俺が無事な方法はないわけだ。


 しかしゴブリンよりも強い魔物、というかゴブリンが最底辺なんだが、そんなやつらが跋扈する世界でステータスがゴミの俺が1人逃げても野垂れ死ぬだけだよな。 何回か青鎧の男たちが狼っぽい魔物とかとも戦っているのを目にしているし。


 さーてどうしよう……。 ここに残っては弄ばれて死亡、逃げ出してもどうなるかわからない。 正に四面楚歌って感じだが……。


 でもここに残るという選択肢はないな。 まず逃げるのは確定だろう。 大人しくゴブリンに犯されるなんてごめんだし、そんなことになるぐらいだったら死んだ方がましだ。 

 ただ大人しくやられるなんて俺の矜恃に反する。


 よし、一か八か逃げるか。

 覚悟は決まった。


 「奴らに一泡吹かせてやるか」


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明日は3話更新です。

そして第1章終了予定です。

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