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108話 無職と魔女には通じない


 

  ――「眠れ 氷棺(アイスコフィン)


戦場にいる誰もが空に浮かぶ二人を仰ぎ見る。

仮面をつけた二人の影。


その一人が莫大なまでの()()らしきをものを放ちこの場を物理的に止めて見せた。

この戦場にいる。


「範囲魔導かっ?!」


魔導士たちは遅ればせながら、自身を包む氷膜に気付く。


「ちっ、厄介なものを」


炎系の魔導を使うものが詠唱をはじめ、溶かそうと試みるが、、、


「っ?! なっなんだこれは、全然溶けないッ!」


ゼニスがイシュバル、帝国両軍に向けて放った魔法。

もちろんその威力は広範囲に展開している分ゼニス本来のものより格段に衰えている。

それなのに、


「なんだこの氷っ?! こんな魔導みたことないぞ?!」

「あ、ありえないっ!」


皆一様に阿鼻叫喚。


「静まれぃぃッ!!!!」

「落ち着けぇぇッ!!!」


両軍ともに自軍の総大将が一喝。

それによって軍の統括自体はなんを逃れたが、だが未知の者に対しての恐怖は強い。


しかしゼニスは最初に攻撃を加えてから追加の攻撃をせず、ただ二人して悠然と宙に浮いている。

仮面をつけているせいで、仮面の奥の顔は覗けず何を考えているのかの意図も不明。


ただ分かっているのは……


「お前たちは、たった二人で、獣国ノーラの助太刀をし、俺たちイシュバルと帝国、この2国を相手取る、それでいいんだよな??」


自分達の敵だということ。

最大限の警戒をしながら、ブランは宙にいる2人に向かって問いかける。

それに対する2人の反応はない。

いや見えない。


「……無言は肯定とみなす。

回復魔導使えるものたちは勇者たちを優先に回復。 それ以外は自身の氷解させたのち、それぞれの部隊で行動、俺が前に出るっ!!」


ブランはかけられるだけの魔導を自身にかけ、宙に浮く二人に向かって跳躍。

同時に動ける魔導師、それに帝国側からも援護の魔導。


【全魔武闘】


「これならあいつらとだって互角に!!」


溢れ出る全能感。

それは利害や利権その他全てを投げ打って、イシュバルとして使えるありったけの魔導。


ブランはあふれ出る支援魔導を一発で抑え込み、自身の力とする。

ある意味それは圧倒的な経験と、極限の集中状態にあってこそ為しえた芸当。


っ?!だがこれは長くはもたないっ……


内心ではそう冷静に分析しながらも、ブランは自身の剣身へとマナを貯めていく。

己のすべてを賭けて。

目の前の敵を滅さんとす。


それさえなれば。後は帝国に良いトコロを多く取られようが獣人たちを滅ぼすことにはひとまず成功する。

ならばそのあとは従順なふりをしながら、また力を蓄えればいい。

それこそこの10年、ノーラの攻撃に耐え忍んだように。


なれば今こそは目の前の敵にすべてを注ぎ倒すのみ。


自身でも制御しきれないギリギリまでマナを緻密にコントロールし、暴発寸前まで貯めて、貯めて、貯めて。


全てを開放する。


「消滅せよ、聖撃」


渾身の一撃。

圧倒的な光の奔流は仮面の二人を呑みこみ、その後ろにいるノーラのすべてを巻き込む勢い。


全てを吞み込む。

そのはず。


だがなんだこの言い知れぬ不安は。


「ぐっ……」

「大丈夫ですか?!」

「あ、ああ」


部下の肩を借り何とか立ち上がる。

自身の聖撃が迫っても仮面の二人は微動だにしない。


すると仮面の一人、氷の魔導を放たなかったもう一人が前へと進み出てくる。


「まさか、一人で抑える気か!!聖撃を!! あれは勇者様の1撃にも匹敵するっ!!潔く諦めろ!!」


部下たちが氷で足を凍らせながらも声を張り上げる。

すると仮面の男はこちらへと一瞬見やりそして、


「ふっ」


()()()()()()


軽く前に手を向け薙ぎ払う。

それだけ。

ただそれだけで、聖撃が、イシュバルすべての力を込めた1撃がかき消えた。

かき消されたっ。


「――――――は?」


声にならなかった。

まさか聖撃がかき消された、ただの一振りで?!


「あ、ありえないっ!?」


その瞬間。


パァンっ。


甲高い音が鳴り響き男の仮面に激突する。

意識外の攻撃。

イシュバルの誰もがなんの音か一瞬分からなかった。


ただこの状況で、唯一力を温存していた蒼血騎士団が一斉に発砲。


誰もが倒せた。

そう考えた。


「はぁっ?! 化け物かあいつは?! 貫通力を高めた代物だぞっ?! ちっ」


もう一発今度は別の弾を発射。

それは二人の目前で爆発し煙幕を張る。


「スモークか、今のうちに態勢を立て直す、っておい?!」


ブランが宣言したと同時に蒼血騎士団が一目散に撤退。

逆に帝国軍が前線を押し上げようとしてくる。


考えることは一緒。


「あいつら自分だけでっ!! 一旦帝国のところまで前線を後退!」


ただそれでも微動だにしない。


「……殿はミシャスたのむ、」

「ええッ、「ここは僕が行きます!」」

「柊?」


「ここは僕がっ!?」

「しかしお前はさっきの闘いの疲労がまだ」

「もう回復しました、それにミシャスさんは指揮があるでしょ?」 「しかしここで勇者たちを失う訳には!!だからここは私が」


どちらも譲らない。


「いやここはミシャスだ!柊達は一旦下がるぞ!」

「しかし……」

「くどいッッ!!」


初めてという程に見せるブランの怒気。


「っ!?」

「ここでお前らを死なす訳には行かないんだっ、この中で奴らに勝てる可能性があるのはお前らだけなんだよッ!!!悔しいことにな、だから行くぞ」


ッ!!!


その物言いに反射的に言い返そうとして、ブランが剣の柄をこれでもかと握りしめ、唇からは血が滲み出ている。


「……ッ!?分かり……ッ……ましたッ!」


そこからは速かった。

腐っても正規兵。迅速に退却していく。


「ここは通す訳には行かないっ!!」


残るはミシャスとその精鋭100名。


そこでようやく仮面の男、レイヤが動く。


「…………時間もこれだけあれば十分だろ。それにしてもこの程度か」


「なんですってっ!??」


初めて喋る仮面の男の声。

その声はどこかで聞いた事があるきがする。


「我願い奉るは業火の精霊なり。全てを焼き貫き灰燼にきせ。汝を滅ぼすは圧倒的な業火なり。後悔せよ懺悔せよ、汝は大罪人なり。ギガフレア!!」


圧倒的な魔導。

「先程ブランさんに援護をしたのにもかかわらず、まだこれだけの魔導。さすがです、これなら!!」


その後も矢継ぎ早に残りの兵たちは魔導を立て続けに放つ。

それはまるで命を燃やすように。


そんな決死の期待をしながら、半分祈るような気持ちで魔導の行く末を退却しながらも見る。


「はぁ」


ため息で全てをまたはじき飛ばした。


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