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106話 全てを賭けて


「うぉぉぉぉぉぉっ!!!」


柊は自身を鼓舞するように雄叫びと共に駆け、ライガールへ目にも止まらぬ速さで斬りかかっていく。

それはさながら荒れ狂う暴風のようで、敵も味方でさえも二人の間には入り込めない。

この場で相対する1人を除いて。


「いいぞぉ、いいな心地いいっ!!そうだこれだこれこれが戦い、闘争だっ!! 覚悟をきめた者との戦いはいいよなぁッ!?おい!!」


獰猛に笑うライガール。


ライガールは臆することなく面と向かって拳で彼の剣戟を耐え凌ぎ、あまつさえ反撃までしていく。

斬撃と拳撃の応酬。


だが急所にこそ当たらずとも、柊にはライガールの拳戟一発一発と重くのしかかっていく。


「っこの戦闘狂がっ?!」


ライガールも拳戟がかすった瞬間に1度距離を取って立て直しを図り、また超速でライガールへと斬り掛かる。


そんな攻撃が応酬される事に少しづつ柊は速く、強くなっていく。

初めは押されていた柊も徐々に徐々にライガールの攻撃に対応していく。


「あのライガール様についていけるとはっ!?」


「柊がここまでできるなんて……」


驚き方に違いはあれど皆一様に驚愕する。

獣人たちは獣王の息子であるライガールに柊がついていけることに、イシュバル側は柊の急激な成長、順応力の高さに。


だが本人たちは別。

いや戦っている本人たちだからこそ冷静に状況を分析していた。


「この戦いは長く続かねぇ、わかってんだろ? おまえも」


「……ああそうだ、あんたにダメージこそ与えてはいるが僕の方がばてるのは速い。 このまま続けてもジリ貧なだけ」


「そうだそうだ!! じゃあどうするんだ!? ああんっ!?」


「一気に決めるっ」


「……へぇ」


柊は言葉とは裏腹に一気に距離をとり、残りの全ての力を込め、最後の魔導を発動する。


「それを素直に待て、と?」

「ああそうだ」


一気に距離をとる柊に対し、ライガールはその分距離を詰める。

否、詰めようとする。


「ー-おいおい俺たちの存在を忘れてないか? 身体強化一極集中!! 大槍剛竜撃」


秋人は柊が引くのに併せて高速でスイッチし代わりに前線にでる。

大剣を様々な角度で乱舞していく。秋人が振った剣の残像しか周りの者には見えていない。


「さっきより格段に速くなったじゃねぇか坊主。 やっと()を殺す覚悟ができたってわけか、だがな――」


風が唸りをあげるほどの秋人の斬りかかり。

それは先ほどの柊の攻撃にも一瞬だけでも勝るほどのもの。


「――さっきの俺ではもうないんだよっ!」


この戦いで成長しているのは柊たちだけではない。

秋人達もまた成長している。

そしてライガールもこの極限状態で進化している。


秋人の斬りかかりはライガールの身体を斬りつけ派手に血が出る、が見た目のみで傷自体は深くない。

後にあるのは、隙だらけの秋人の身体。


「お前はもう寝てろォォっ!!」


切り込んで前傾姿勢になっている秋人に思いきり踏み込み、カウンターの1撃を放とうとして、ライガールは秋人が嗤っていることに気づく。


だから咄嗟に拳をふるうのをやめ、蹴り飛ばしその反動で退いたのは本能だった。

その直後に響く声。


「我願い奉るは遥かなる風なり、風は何物にも縛られず、汝を縛る。汝に雷鳴天風をもって天の裁きを与えたまえ!!雷天迅風弩」


突如先ほどまでたっていた場所に無数の極大な雷を宿した矢を模した魔導が降り注ぐ。


「ッ?!」


全てを避けきれず1発がライガールの腕へと刺さる。


「ちっ、な、攻撃力もさることながら相手も麻痺させるってか、嫌な魔導だな」


遠目を見れば放った魔導士本人は誰かに支えてもらっている。

文字通りほとんど全力で放った業なのだろう。

そのおかげでこっちは左腕はしびれてまともには使えないが。


「だがまだ右腕は残ってる」


だがあの魔導士はマナがたまって復活されても厄介。

ならば後ろを先につぶすか。

そう考え、一歩を踏みしめようとして感じるマナの波動。


「我が怨敵を貫け、聖光レナトゥス!!!」


真横からノータイムで放たれた光の攻撃はライガールの心臓に向かって放たれた。

余りの速さに一瞬で回避を諦め、身体の位置をなんとかずらす。

ギリギリで心臓を割け、右腹部を貫通する。


「がはっ?!」


吐血しながらもその威力の高さに思わず――


「――ははっ、今代の聖女は攻撃強すぎだろ」


ライガールは優先順位を変更。

まずは夏希をターゲットに。

腹部の傷など気にせず、一気に距離を詰め殴り掛かる。

夏希はマナ切れなのか、反応できていない。

そのままだったら確実に当たっていた。


「夏希ぃぃッ!!」


間に割って入るガードするのは先ほど吹き飛ばした秋人。


(予測して飛んできたのか、いや本能か。さっきの1撃もなかなか効いてるはずなんだが……)


ライガールは秋人にもかまわず思いきり殴りつける。


「ぐはっ?!」

「きゃあぁっ?!」


派手に吹き飛び地面に突っ伏す2人。

即座に起き上がる様子はない。


秋人、夏希、桜、ライガールはそのすべての攻撃をさばききった。

残るは勇者ただ一人。


「……みんなすまない、いやありがとう!! おかげで間に合ったっ!!」


遠目に見れば柊が怒りの形相を浮かべているのが見える。


「お前の仲間は全て倒したぞ? あとはお前だけだ」


「秋人、桜、夏希、それにみんなが稼いでくれた時間無駄にはしない!!」


柊の剣に膨大なそれこそこの戦場の誰もが見えるほどの光が集まり、剣を覆いつくしてく。


「これで確実に君を殺す」


まともに受けたら確実に死ぬなぁこりゃ。

冷静にそう分かった。

だから余計にライガールは()()()


「最高だなぁおいっ!!」


「原子へ帰れ、【終焉の園(エデンズ・ゼロ)】」


放たれるは圧倒的な虹の奔流。

先ほどまでの攻撃すべてがおもちゃに思えるほど。

避けるにも後ろには大量の部下たち。


後ろを横目に見てみれば皆が不安そうにだが信頼した目でライガールの背中を見つめていた。


「負けられないよなぁおいっ!!!」


自信のマナのほとんどを右こぶしに集中。


【部分霊獣化】


神々しいまでの光が右拳を中心に纏われる。

それは柊の【終焉の園】にも負けずとも劣らない見るものを安堵させる安らかな極光。


その拳で迫りくる虹の奔流をに向かって殴りつける。


「ー-っうぉぉぉぉぉォォぉッ?!!!!」

「ー-ッらァぁぁぁぁぁぁぁぁっ?!!!」


相対する2対の光。

互いに譲れぬもののために命を懸けて、各々の攻撃にすべてを賭ける。

その輝きはお互いに譲ることを知らず、柊は力を放ち続け、ライガールもまた拳を引くことはありえない。


拮抗した力は限界まで凝集され、そして一気に行き場をなくし---




ー---爆散する。



ズガぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁンッ!!!!!!!!!!




この戦場にいるもの全てを閃光が包んだ。


お久しぶりです。

引っ越しようやく落ち着きました!

物語もいいトコロなので再開していきます!


Twitterもよろしくお願いします!

@KakeruMinato_

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