104話 激突
静かな朝だった。
ここ数日の戦闘では、獣人部隊がゲリラ戦や奇襲を仕掛けてきており、どこかしらで悲鳴や雄たけびのようなものが聞こえてきていた。
部隊に損害ももちろん出てはいるが、全体から見ても軽微なもの。
客観的にそう考えてしまう自分がいた。
異世界に慣れた証拠か……。
「いよいよだな」
隣には秋人。
「もう起きたの?」
「ああ、高ぶっているのか早く起きちまった。柊もか?」
「まぁそんなとこ。 朝日が綺麗でね、思わず起きちゃったよ」
「おいおい俺と二人の時にそんなロマンチックなこと言わないでくれよ……」
横を見れば少し秋人が距離を取り身体を抱えるようにしている。
ふぅん。
「……どうしたんだい秋人? 朝日が綺麗じゃないか。 あれはまるで僕らのーー」
「ーーやめろ気色悪い!! 誰かに聞かれたらどうするんだ!! 勘違いされるだろ!!」
「あはははっ」
秋人の焦る姿を見て思わず笑ってしまう。
そうだよなぁ、だって秋人は夏希のことが……
「お、おおおおはよう!!!」
「おはよー」
いつも通り気だるい感じで入ってきたのは夏希。
そしてなぜか桜はめちゃくちゃきょどりながらやってきた。
あれ?
「朝から何2人でロマンチックに話してるのよ、桜が誤解しちゃうじゃない、と言うかしてるし」
どうやら話をすべて聞かれていたらしい。
「そ、そうなんだ、聞かれちゃったてたか。 必死で隠してたんだけどな、実は俺たち……」
「え、え、えぇぇぇぇぇぇぇぇっ?!」
俺の悪乗りを素直に信じた桜は素っ頓狂な声を挙げる。
「ふ、2人ってそういう関係だったの?!、い、いつから!! いやそれよりもどどどーしよ、えぇぇっとあわわわわっ」
「おい柊、なにいってるんだ!!」
慌てだす桜。
憤慨する秋人。
「はぁ」
呆れる夏希。
「ふふっ」
そして楽しそうに笑う俺。
「ごめんごめん冗談だよ、おれらはなんもないよ」
「そ、そうだぜ! だ、だから勘違いすんなよ夏希!!それに桜も」
「別に勘違いしないわよ、でもよかった」
「……え?」
秋人がなぜか期待のこもった目をしていた。
怒ったり、期待したり、忙しい。
「みんなの表情昨日よりいいもんね」
「…………確かに緊張が色々と吹き飛んだな、逆に変な汗はかいたが」
「あぁよかったぁぁ、柊君がちゃんと女の子のこと好きで。 あー確かに戦争のことを忘れてたね」
「アハハばれちゃった?」
緊張をほぐすため。
でも多分地球にいたころの俺ならこんなちょっと下品なこと言わなかった。
俺は異世界に来て変わった。
桜も明るく、自分の意見を言うようになったし秋人も周りの空気を読めるようになった。
「……ん? どした夏希?」
秋人が夏希の様子を窺う。
まぁ心配なのは、本当に俺との仲を信じていないかと言うのもあるのかもしれないが。
「ううん、大丈夫よ」
にこりと夏希が笑う。
その笑みは彼女の職業通り、まんま【聖女】の様で。
彼女の雰囲気もまた、地球にいたころとは変わっていた。
*
「さぁ正念場だぞ? お前ら」
俺らの目の前にはブランさん。
ここ数カ月は一緒に戦う機会と言うのは無くなっていた。
最初のころは一緒に戦うというよりも守ってもらう、と言う感じだったし。
そうなると肩を並べて、ってまではいかないかもしれないが、それに準ずる形はここ異世界に来て初めてかもしれない。
ならここは俺らの立つ場じゃない。
いつまでも守られてばっかじゃいられない。
ブランさんと肩を並べられると、彼の認識を改めてもらうためにあえて柊は横に立つ。
「……行きましょうか、未来をつかみに」
柊の言葉を皮切りに「シキ」のメンバーもブランを囲むように横に並ぶ。
「……お前ら」
成長したんだな、そんな言葉がブランの口からでかけた。
がその言葉はすんでで止まる。
まだ戦争は終わっていない。
話すとしたらこの戦争が終わってから。
「私たちを忘れるなよ?」
更には白銀騎士団を率いるミリア。
その後方には白銀騎士団の団員と更に兵たち。
「……いくぞ」
個々にいるのは柊たちだけではない。
だからすべての言葉を飲み込み、そう隊長として彼は戦闘開始の合図を彼は出した。
目の前に現れるのはライガールとホウ率いる獣人部隊。
ここまでは予想通り。
「「「うぉぉぉぉっ!!!」」」
両者あい激突。
先頭をひた走るのは勇者シキとブラン。その後ろには白銀騎士団と兵たち。
対してノーラ側もライガールを筆頭に後ろから獣人がついていく。
イシュバルノーラ双方後方からの魔導での援護。
お互いの魔導が当たり合い、激しい爆発が生じる。
その余波でお互いの兵が少し削れる。
が、先頭のライガールや勇者パーティーにはあたらない。
そして両者激突。
ライガールに突っ込むは、秋人と柊。
二人がかりで槍と刀で突っ込む。
その前には桜からの援護。
「我、願い奉るは風の精霊なり、我らの宿敵を何時のその不可避の矢を持ちて、風の藻屑としたまえ
トルネードシュート!!」
100発を超える暴風のごとき風弾が、柊たちを追い越しライガールへと向かう。
「ふんっ!!!」」
だがその魔導はライガールは自身の周囲にマナを爆発的に放出し、すべて防ぐ。
一種のバリアのようなもの。
「マジかよ!! だけどな!!」
柊と秋人が剣で斬りかかり槍でつく。
桜の風弾の影響もあって、バリアは彼らの攻撃を受け止めきれずバリアは破裂する。
そのまま柊と秋人は突撃するが、あろうことかライガールは槍を交わし剣をいなす。
そしてそのまま二人へ接近すると二人を抱え投げ飛ばす。
「オラァァ!!」
「うおっ」「うぇっ」
空中に投げ飛ばされた二人は一瞬無防備になる。
その隙をただ安易に逃すノーラ側でもない。
ライガールの裏からホウが魔導を放つ。
「逃げ惑え、黒闇千針」
全てを飲み込み様な黒き針が二人を襲う。
「すべてを弾け聖光波」
歴戦の猛者でもあるホウの魔導を聖女の魔導がすべてを弾く。
「へぇ」
空を飛び追撃の魔導を放とうとするホウ。
その下にはブラン。
「お前の相手は俺だ」
「総指揮官のお出ましですか」
下から斬り上げるブランに相対するホウ。
勇者パーティー「シキ」と白銀騎士団に相対するライガール。
この戦争の行方を左右する決戦が幕を開けた。
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