表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
117/123

102話 人獣部隊と反撃

 

「げはははははあぁ」


 耳障りのする笑い声を上げながら、人獣部隊がイシュバルの兵士たちを苦しめた獣人の部隊を一掃していく。


 その姿はまさに異形。

 下半身が甲殻類の魔物で上半身は人間。

 右半身は人間で、左半身はオーク。


 同じイシュバルの兵士たちでさえ恐れおののいている。


「……あぁん? なんだァその目は。 不甲斐ないてめーらを助けてやったのはおれらだぞ? そこらへん分かってんのかこの雑魚どもは」


「まぁそう言ってやるな、ザーコシ。こいつらはこいつらなりに頑張っているんだ。 雑魚の割にはな。 それにこいつらが不甲斐ないおかげで俺たちは予想よりも早くこの戦場に出ることが出来たんだ。 こいつらの無能ぶりには感謝しないといかんぞ? シェシェシェ」


「あんたの方が言い草ひでぇぞ? ショーの旦那ゲハハハハハ」


 そんな雑談をしながらも、彼らを筆頭にイシュバルの人獣部隊はノーラの兵士たちを蹴散らしていく。

 時には己の尻尾で、時には毒を吐き、また火焔を吐く。

 爪で肉を裂き己が歯で骨を断ち角で胴を貫く。


 そのたびにノーラの兵士たちが傷ついていく。

 彼らが通った先には惨憺たる光景が広がり人間と獣人の戦闘と言うより、人対化け物、その構図であった。


 イシュバルの兵らは彼らの攻撃の巻き添えにならぬよう、彼らの後方へと下がる。


 イシュバルの軍としては人獣部隊を前面に出す構え。

 1人1人が一騎当千出来るような実力の持ち主たち。


 ノーラ側もただ無策に、兵を突撃したりはしない。

 徐々に徐々に前線を下げ、人獣部隊だけが孤立するように動かしていく。


 数としては20程度。

 たったそれだけの数なのにイシュバルの人獣部隊を止められない。


 獣人の100人ほどの部隊が瞬く間に半壊させられていく。

 残ったのは部隊長一人のみ。


「っ!! 何たる屈辱」


「はははぁ、どうだどうだお前らが見下していた人間族に負ける気分はよぉ!!!」


 愉悦の笑みと共に隊長をいたぶるザーコシ。


 そこの戦場にあったのは戦争ではない。

 ただの殺戮。


「……ふっ、人間?」


 ザーコシにいたぶられながらも部隊長は嗤う。


「オマエのどこが人間だ? ……見た目はまさに化け物。 我らのことを獣と言うのはこの見た目ゆえだろう。だがな外面は人の皮を捨て去り、内面にしても残虐性しかお前ら。 はたから見た時にどちらがよりお前らの言う、「人間らしさ」があるだろうな、くははっ……ごふっ?!?」


 ザーコシに踏みつけられ部隊長は吐血する。

 が、その笑みは消えない。


「……うざってぇうざってぇうざってぇなぁっ?!?!?! さっさと死ねやごらぁぁぁっ!!」


 あぁ、俺はここで死ぬのか。

 走馬灯って本当にみるんだ。


 家族との想い出。

 友と語らいあった時間。

 恋人との夜。


 そのすべてが脳内で駆け巡る。


 せめて、最後に。

 最後に生まれてくるであろう我が子を見たかった。


 だからその我が子を守るために……

 こんな奴らに我らが国を、皆が幸せに暮らすこの国を蹂躙させるわけにはいかぬなっ!!!!


 動くのは右手のみ。


「……ぬあぁぁぁぁぁぁっぁっ!!!」


 残る力を引き絞って、小刀をザコーシの人間の部分の左足に突き立てる。


「うぐるぅぅっっ?!」


 強化されたとはいえ、人間の部分はモンスターの身体の部分に比べてももろい。

 足の甲を小刀が切り裂く。


「この程度の傷をつけるがお前の最後の、命をかけた攻撃で無駄な足掻きだぁぁぁっ!!!!」


「……」


「いーやちがうぞい? こやつの攻撃は確かに次へとつながったぞい」


「……あん?…………ぐふっ?!?!?!」



 そんな声と共に、炸裂するのは数多の魔導。

 火、水、光。


 様々な魔導が織り交ぜられ、ザコーシの前で炸裂。


「なんだァこの魔導はよえぇぞ、よえぇぞ、効かねぇぞぉ?」


「じゃが今眼は見えてないであろう?」


「あぁん?」


「おぬしのその身体、人間の部分は傷つくんだろい??」


 謎の男は、自身の得物で左胸を狙う。


「当たらなきゃ意味がねぇっ!!!」


 ザコーシは右手の平で斬撃を防ぐ。

 それをみて謎の男は嗤う。


「たわけ」


 そのまま背後へと下がる。

 気配が遠のいたのを感じ、ザコーシは一瞬いぶかしむが、すぐにその意図に気付く。


「まさかっ!!」


「別にわしは一人で戦っている訳ではないんでの」


 謎の男の背後から味方である大量の魔導。

 そのすべてが水の魔導。



「……な、なんだこれは」


 徐々に徐々にザコーシたちは水の魔導によって押し流されノーラの兵たちから引き離されていく人獣部隊。


「こんなものでぇっ!!」


 人獣部隊の副隊長であるザコーシを筆頭に半数以上が押し流されていく。

 押し流された先は、戦場の端。

 誰もいない場所。


「こんな端に追いやってどうする?! いずれ俺らはまたお前らを蹂躙しに戻るぞぎゃははっ!!」


「戻るなんてことありえんぞ?」


「あんッうおっ?!?!」


 水流が押し流した先には丸い大きな穴。

 穴の中は沼のようになっていて簡単には出られないようになっており案の定、人獣部隊の大半は穴から出られないでいた。


「穴から出られない状況、さてどんな風にいたぶってやろうかな?」


「おまえぇぇぇ!!」


「あーうっさいうっさいのぅ、お主は我らが同胞を残虐に殺した。なれば貴様には地獄のような苦しみがよかろうて」


「……ま、まてはなしを……」


「あいにくとわしらは人でも獣人でもない化け物(モンスター)と話す言葉は持ち合わせていないんでのう」


 軽く手を振ると一斉に火の魔導がザコーシ達人獣部隊を襲う。

 後に残されたのは地獄のような火にあぶられもだえ苦しむ化け物(モンスター)の声のみ。


「……お前らは」


 助けられた部隊長は謎の男に目をやる。


「普段はいがみ合ってるとはいえ、同じ国の者じゃ。 あんな化け物(モンスター)なんてせいぜい本職の俺ら冒険者で十分だよ」


 残りの人獣部隊も程なく、冒険者たちの連携によって倒されていく。

 だが、500人ほどの冒険者たちも余裕はない。


「なんとか、間に合ったようじゃな……」


「ああ、助かったぞ。 ()()()()


 だが二人の顔は依然として厳しい。


「こっからじゃな」


「ああ、まだまだ働いてもらうぞ」


「引退した老体には厳しいて」


「ははっ血気盛んだったお主では考えられない台詞よのぅ」


「年には勝てぬ」


「「はっはっは」」


 そう言う二人の眼は現役さながらに獰猛に光っている。


「さぁさっさとこの戦争を終わらるぞ」


「ですな陛下」



冒険者ギルドとノーラの国のトップが並び立つ。

それだけでノーラの士気は上がる。


「やられたらやり返さんとの」


いつもお読みいただきありがとうございます!!


そのままブクマ、応援メッセージ、感想など頂けると嬉しいです!!


また画面下の「☆☆☆☆☆」を「★★★★★」にしていただければ作者のモチベに繋がります!!


誤字脱字報告いつもありがとうございます、めちゃくちゃ助かってます!!


ツイッターやってます。更新情報等乗せますので皆さんしゃべりかけて来てもらえたら嬉しいです。(´;ω;`)


https://twitter.com/KakeruMinato_ 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ