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99話 開戦ー獣王の息子と勇者パーティー「シキ」


「行くぜぇぇぇぇぇっ!!!」


ライガールの咆哮と共に400人の少数部隊が一気果敢に山を下り奇襲をかける。

その後ろからは魔導師部隊が掩護射撃で西側の魔導師たちを土の魔術で戦闘不能にしていく。


イシュバル軍の西側は小高い山に覆われており、横からは奇襲できない、と元々ブランは考えていた。

が、結果はこのざま。 その山から攻め込まれている。

またアスカロンを撃った反動で魔導部隊があまり動けないのも大きい。 


「邪魔だ邪魔だぁぁっ!!」


ライガールが西側の軍の中央を穿っていく。


「ライガール様!! 少し出すぎですッ!!」


が、ライガールが少し出すぎている。

その間をつなぐようにホウが敵を何人も自身の攻撃で屠りながら諫めるように後ろから進言する。



「ッそうかすまん!!……だがこいつらにゃ自分たちがやったことのけりをつけさせる必要があるからな、あんな戦えもしない民間人たちを狙う下種共にな!!」


その熱い思い。

玲夜のところに行ったのも本来はお礼の一つを言いに行っただけだが、素直に礼を言うことが出来ず照れ隠しの為、あんな突発的に喧嘩を吹っ掛ける形になってしまったのだった。


「分かってますよ、もちろん。 お前たち!! 若がこんなことをおっしゃっている。 お前たちも若の思いに応えて見せろ!! あんな屑どもを叩き潰すぞ!!」


「「「おぉォぉっ!!」」」


あの毒の件で怒っていたのは何もライガールだけではない、皆憤っていた。

獣人は個の身体能力はもちろん高い。

が、1番の強みはその連帯力。

故に。

自信の種族を傷つけられ、しかも戦えないものを狙われたというその手段い憤らない訳がない。

だからこそ。

彼らは心はあつく、頭は酷く冷静にイシュバル軍の軍勢をそいでいく。

その先鋒がライガール。


彼が突破口をどんどん開いていく。


とは言ってもこちらはたったの500。


敵の2000、3000、4000を削っても残りはまだ半数以上いる。


だから。


「なるべく殺すなよ!!」


彼らはイシュバル軍をなるべぬ殺さなかった。

別に情をかけたとかでは無く、より多くの敵を殺すために生かした。


殺せば敵は物言わぬ死体になる。

ただそれで終わり。

敵を殺せばまた別の敵が倍の兵を怒りと憎しみをもって襲い掛かってくる。

そうなれば次第に数に劣るノーラの我らが各個撃破されていくのは目に見えている。


が、仲間が目の前で負傷しながらも生きていたらどうか。

目の前で泣き叫んでいる友を前にして、剣をその手に掴むことが、一般の兵にできようか。

それも正規兵ではない、


断言しよう。

否だ、そんなことできるはずがない。


何とか生き残っても国に帰れば恨まれる。

恨まれなかったとしても仲間を見捨てたその罪悪感が己を苦しめる。

その決断をできるものはいるだろう、いるだろうがだがその決断を躊躇なくできるものはそうはいない。

それが時間という戦場において大切なものを相手から奪わせる。


その結果。

もちろんノーラにも被害は出ているが、圧倒的に少ない。

ライガールの周囲では人間の阿鼻叫喚。


「自分でさせたことはいえ気分がいいものでは無いな」


「それはそうでしょう、これで気分が良いとしたらそれは戦闘狂か狂人です。 してどうなさいます?」


試すように尋ねてくる。


「撤退する」


「承知いたしました、殿は……」


「合図を出す、下がっていろ」


「はぁあなたはそう言うお方ですよね、それも獣王譲りというかなんというか」


ホウは戦場には似つかわしくない呆れ半分嬉しさ半分といった表情。

だがそれに気づき慌てて思考を戦場へと切り替える。


ドン!


ライガールは1束息を吐き、大地を思い切り踏みしめ、吼えた。



「ワォォォォォォォォォぅぅッ!!!???」



ビリビリと大気をふるわせる咆哮。

それによって相手の兵士の視線が一瞬ライガールへと向く。


その機を見計らい、目の前の敵にダメージを与えるノーラの兵。だが与えて怯ませたあとは徐々に後ろへと引いていく。

さらに奇襲部隊の後ろからは煙幕のようなものがノーラの魔術師によってはられ、戦場の視界が遮られる。


ライガールたちが引いていくのと同時にノーラの部隊が前線を上げていく。


「このまま退くぞっーーーーうおっ!!??」


ライガール目掛けて飛んでくる斬撃。

それを間一髪で躱す。


「あ〜あっぶな、あの男とやってなかったら当たってたな」


ライガールは玲夜によってコテンパンにボコられたが、その1戦がライガールを成長させた。

が、攻撃はそこでやまない。


「我、願い奉るは火の精霊なり。 劫火はすべてを焼き尽くし、この世に灰のみをもたらしめる フレイムインパクト!」


煙幕をはらすように、いくつもの火の火球がライガールを追撃する。


「この程度でっ!!」


ただのパンチ。

だがその余波が全てのフレイムインパクトを打ち消していく。


「嘘だろ?」


「まだだよ柊君!!」


「そうだぜ柊!!」


桜が水の魔導で牽制しているあいだに秋人が柊と前線を入れ替える。


「ウオォォォォッ!!」


「3対1……いや」


【弾き飛ばせ、聖光レナトゥス】


「4体1か!」


だがライガールの顔に脅えはない。

ライガールは、笑っていた。


「ははは、まじかよこいつらなら!!」


「なら、なんですか?」


「うぉっ!?ホウ?」


「夢中になりすぎです、引きますよ」


「だがこいつら少し厄介だぞ?」


「別に大したことありませんよ」


そう言った瞬間ホウの姿が消える。


「なっ、今のやつはどこいった!?」


秋人たちが当たりを探すが見つからない。

いち早く気づいたのは、柊だった。


「上だ!」


「水土複合魔導 鉄砲流」


ライガールの前の地面が10メートルほど隆起し、大量の土砂と岩が水の勢いを使い一直線に「シキ」を襲う。

当たれば呑み込まれるのは必須。


「何だこの質量!桜、夏希防御魔導いくよ!秋人は魔術を展開するまで守って!」



 「我、願い奉るは光の精霊なり。何者にも侵されがたき堅牢なる聖光を持って我らを守りたまえ、ホーリーライトシールド!」


「我、願い奉るは水の精霊なり。 青は生を生み出し、また死をも運ぶ。 万物の源流であり万物の終着点。 何時の藍色をもちてってすべてを見据え、すべてを弾きたまえ アイシクルウォール!」


「「我、願い奉るは土の精霊なり。 大地はあまねくすべてを守り通さん!!この世の不条理から我らを護れのみ アースフォール!」


柊の土壁が勢いを殺し、桜の魔導でその流れを止め、夏希の魔導が全てを弾いていく。


「なんて威力だ、詠唱短縮してこれかよ」


3人の魔導を持ってしてやっと互角。


視界が開けた先に既にノーラの部隊はきえていた。


「なんて強さだあのフクロウの男」



シキのメンバーは少なからずショックを受けていた。

だが


「今は落ち込む時じゃない、負けたわけじゃないんだ!」


とりあえずは生きた、それが1番。


「「ウォォォォォォォォッ!!」」


戦場に響く怒声。

本隊同士が入り乱れるように激突しあっている。


「……今はここよりも本隊の援護に向かう!」


柊の後に続いて残りの3人も続いていく。


戦争はまだ始まったばかり。

凄まじい凡ミスをしていることを発見しました。

最近の話では「魔導」のことを間違えて「魔術」と書いてあることが唐突に気づきました。

正確には「魔導」です!魔法はそのままでいいのですが…… いやーやらかしましたね。

今後直してはいきますが、もし見つけたら誤字報告していただますと幸いです。

お手数おかけします。


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