95話 無職と獣王の息子
ゼニスとサーラが特訓に参加してから3時間。
俺は既に虫の呼吸のようになっていた。
「はぁはぁつ、辛ぃぃぃっ!?」
なんだこれなんだこれ。
めちゃくちゃキッツイんだが!?
マナももちろんえげつない量減っていくが、それよりは精神的な負担がヤバい。
終わりなき戦いって感じがする。
まあ今回は長くて3日とか言ってたから終わりはあるがそれでも長い。
繊細なマナコントールをずっとするとなると、かなりの忍耐が必要になる。
しかも内部で激しい争いになっているのか、頻繁に結界が壊れかける。
そのため適度に魔法の修復をしないといけないからそれはそれで集中力が必要となる。
「まあ修行にはなるかっ!?」
でも修行はサーラとの特訓時にもしてたんだけどなぁ。
てかあれ?俺ってこっちの世界に来てからほとんど修行してね?休んでなくね?
休んだのこの間の1日2日じゃね?
ヤバい……異世界来ても社畜してるっ!?
いやでもこの前昼まで寝てたし!?
大学生みたいな生活してたから休めてるうん休めてる!
なんだかんだ修行もしたけどそれは誤差!
誤差の範囲内
「っつあぁぁぁぁぁぁぁ!?」
またどデカいのゼニスがかましやがった!!
サーラはまだ空間を破壊できるほどの質量の魔法は使えない。
最初よりはマシになったがレベル差とかもあってまだまだ。
必然俺を苦しませるのはゼニス以外にありえない。
今あいつは嬉々として魔法を放っているに決まっている。
「そういやゼニスはこれを死にかけながらも俺のために使ってくれたんだよな」
思い出すのは初対面の時。
あの時ゼニスは俺が魔法使いと知ってこの魔法を発動させた。
あの時は恨みつらみしか考えていなかったが、今思うとこの魔法ゼニスにとってかなり分の悪い賭けだったと気づく。
「初対面の相手、しかもあの状況だから魔法使いであることしか知らない。俺の性格も何も分からず下手したらというかかなりと確率であそこで腐っていることも十分考えられた、そうなっていればあのままあそこで2人とも死亡」
ゼニスの胆力に呆れてしまう。
「あの一瞬でその決断を下すとは恐れ入るよ、ほんと」
この魔法を死にかけの状態で何とかやり通したんだから。
時間的にもかなりギリギリだったみたいだし。
「ま、本人には絶対に言わないけど」
結界の中で楽しげにサーラを特訓しているであろうゼニスの姿がありありと目に浮かぶ。
そんなことを考えていたら結構時間が経っている。
「さてさて。ちょっとはコツも掴んで楽になってきたし、それじゃ俺は俺で結界を構築しながら別魔法の準備を……ん?」
今俺たちがいるのは人気のない山頂。
それこそランダと戦った周辺。
故にまだ獣人にとって有害なものが除去されているとは言えず、出入りはされていない。
つまりこの程度の毒などが影響ないようなやつ、それかはたまた人間か。
「だがこの感じ……隠れるつもりは無い、か。まっすぐここに向かってきている」
誰だ?
正直心当たりはない。
「おーい!!」
ドアのノックとともに野太い男の声が聞こえる。
だがなんというかどこか聞き覚えもある気はする。
まあドアをノックすると言うよりは、推し叩くと言った方が表現は正しいな。
ここの建物どうせ結界作るし、ということで外装はかなりテキトーにしたためドアがミシミシ言っている。
「…………」
「おーい誰もいないのかぁ?」
不審者には返事しない。
これ日本での常識。
まあつまり居留守。
「確かにここにいるってギルドの奴らは言ってたんだけどな」
ギルドの奴が漏らしたのか。
後でちゃんとおしおきしないとな、戦争後に。
「…………」
「まあ入って見ればわかるか」
は?
「……ふんっ!!」
ただでさえボロかった扉が木っ端微塵に粉砕された。
まあパンチされれば壊れるのは分かるけどさ。
居留守したからってパンチします普通!?
「なんだいるじゃねぇかよ!!」
扉の前に佇むのは筋骨隆々な獅子の獣人。
堂々とした生まれながらの王者。
……まあだからなんだという話だが。
「獣王の息子か」
「よく分かったなお前!!」
快活にハキハキと喋る。
その根底には確固たる自信があるんだろう。
「で?」
「…………で?とは?」
「用件は」
「ああそうだった!そうだった!」
ガハハと豪快に笑うこの男。
「お主父上と拳も拳の語り合いをしたらしいではないか」
「……まぁ」
「ワシともしてくれぬだろうか!!」
「いや無理」
忙しいし、修行あるし。
「それでは行くぞ!!」
「お前はなし聞かないなっおいっ!?!?」
その瞬間、場の雰囲気が変わる。
変わったその刹那。
その殺気に思わず反応してしまった。
故に……。
「おヴっ!?」
玲夜は獣王の息子を殴り飛ばしていた。
「……あーもうなんなんだ他人の所に勝手に入ってきて、話聞けや!!!って殴り飛ばしちまったか」
無事獣王の息子は吹き飛び玲夜たちの眼前からは消えた。
ほんとになんだったんだアイツは。
「そういえばあいつなんて名前だったんだ?…………ま、関係ないか〜、でも一瞬とはいえ反応しちまったか俺もまだまだだなぁ」
しかしすぐに玲夜は彼のことを考えるのをやめ、扉を修理していく。
修理が終わった頃には玲夜の頭の中にはすっかり彼のことは消え去っていた。
いつもお読みいただきありがとうございます。
前回更新した際にポイントで殴られた結果2話出してしまいました。
自分チョロっと思いました。
しかし残念ながらストックが0です。
ポイントで殴られても無い袖は振れないというか、まあもしこないだよりもぶん殴られたら書くかもしれませんが、ストックはありませんからね?^^;
誤字脱字報告いつもありがとうございます、めちゃくちゃ助かってます!!
ツイッターやってます。更新情報等乗せますので皆さんしゃべりかけて来てもらえたら嬉しいです。(´;ω;`)
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