93話 無職と魔女は回復術師の特訓に入る
今日ちょっと短めです。
「ッあっぁぁぁぁぁあ?!?!?!?!」
目の前のゴブリンに向けてひたすらに殴り続ける回復術士。
魔法も魔術を撃つマナはとうに切れ、杖でひたすらに殴打し続けている。
「よしよし、これで杖術とかのジョブが手に入るだろ」
そのためにわざわざ倒しやすいモンスターにしたわけだし。
「ならっ!? ……こ、こんなっ!? はぁはぁ……こ、こんな大量にモンスターいらないでしょ!?」
息も絶え絶えになりながら不満を漏らす。
「まだ不満を漏らす余裕があるのか、そうかそうか」
玲夜はサーラの質問には答えずただニヤリと笑い
「500体追加な?」
告げた。
「……。」
それを聞いたサーラはただ唖然。
と顔はしながらも、身体はゴブリンを倒すという曲芸をやっている。
「あ、気をつけろよ?」
「なに!?」
サーラはまだなにかあるのかっ!とギンっと鋭い眼光を向けてくる。
「今まではただの数の暴力だがそろそろ、来るぞ?」
「……ゥえっぅぅ!?」
火の魔術がサーラを襲う。
肌に触れる瞬間に気づくが、完全に回避はできない。
「……っぐぅぅぅっ!? 」
何とか出来たのは腕へそらすことだけ。
ゴブリンメイジの攻撃だから腕がちぎれたりはしないが、元が紙耐久たる回復術士のサーラ。
火傷しこのままでは左腕はもう使えない。
しかし回復する時間もない。
「っあぁぁぁ!?」
故に唇を噛むことで痛覚に耐え、目の前のゴブリンを一振で数体薙ぎ払う。
っ!!見つめる先にはゴブリンメイジ。
今度は氷の魔法を放とうとしている。
あともう少しで詠唱が完成する。
その瞬間。
『爆ぜろ』
辺りを閃光が包む。
残っているのは肉塊だけ。
この辺りとは言っても50メートル範囲がぽっかり穴が空いたかのように生物が存在しない。
ただ1人を除いては。
範囲の中央でしゃがみこんでいる。
「最初にしては上々かな」
気絶するサーラを横目に玲夜は呟く。
「だが体力がまだまだ足りないなぁ?それにマナも、全部が足りない」
「だがま、努力は認めよう」
このままここに放置してもサーラはゴブリンに嬲られるだけ。
それも1種の経験といえば経験だがさすがに初めてをゴブリンにというのはな?
ないとは思うが、魔法を使えなくなる可能性もあるわけで……。
なんにせよさすがにリスクが高い。
それに見ていて気持ち悪い。
「邪魔」
玲夜が軽く一振すれば周りにいた800匹をいとも簡単に両断する。
「やることはまだまだあるな」
サーラの訓練メニューを考えながら玲夜はサーラを拠点へと運んでいった。
それ以降高校の部活の扱きでもしない様な特訓が幕を開けた。
※
「はい遅い!!もっともっとぅ!!!」
「……は…ぁはぁ」
「諦めるな! もうゴールは近い!」
息切れするサーラ。
甘いな、甘いぞサーラ。
「甘えるな!!」
「んんんっ!!」
喝を入れるために腰を押してあげたらめっちゃ睨まれた。
なんで?
あ、腰じゃなくてお尻だった。
うぇへへ。
「ちょっと!」
「なに??」
「あなた鬼畜過ぎない??」
感情のままにに怒っているからか、普段の大人びた余裕が一切ない。
「どこら辺が?」
「かれこれ既に5時間以上走ってるけど、一向にゴールがみえないわよ!」
だってゴールなんてないもん。
「あともう少しだよーん」
この世には信じてないけない言葉っていうものが往々にして存在する。
そのうちのひとつは「あともう少し」
これはいつでも使えるから、だってその人の主観が主な言葉になっているから。
残り半分だろうが八割だろうがその人にとって、あともう少しならもうその通りになるという魔法の言葉。
ちなみにもうひとつ信じたらいけない言葉は男性の言う「先っちょだけ」と女性の挨拶「可愛い〜」らしい。
どっちも実践したことないけど……。
なんか考えてたらムカついてきた。
「あともう少しだからペースあげるぞ〜!!!」
「だからって後ろに虫型モンスター呼ばないで!!」
「だってサーラこちの方が真面目に走るからさ」
「人の尊厳がかかっているから!!」
そう言って俺を追い抜いていくサーラ。
さて、と。
んじゃ俺は……。
ふわっとジャンプし空中で横になる。
「……なに空飛んで楽してんのよ!!!」
サーラは後ろにいる虫型モンスターを捌きながら空中にいる俺にツッコミを入れてきている。
器用なやつだな。
「修行だ修行、どんな体勢でも空を飛べるようにしておきたいんだよ」
「へ、へぇちゃんとした理由があるのね……意外」
「そりゃ俺だぞ? 正直者でひたむきで頑張り屋さんでスマートでさらに優しく努力家な玲夜さんだぞ?」
そう言った瞬間、じとーっとした目を向けられる…………走りながら。
器用だなおい。
「……当たってるところが半分くらい混ざってるのがしゃくよね~」
……え?
冗談で言ったつもりだったんだけど。
どうしよ。
「…………」
「……あれ~? もしかして照れてる~?」
煽るようなサーラの物言い。
ふむ。
「…………」
「……ちょ、ちょっと?! 無言で虫増やさないでもらっていいかしら!?」
サーラの楽しい楽しい特訓はまだまだ続く。
ぐへへ。
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