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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

暗闇と男

作者: 甜瓜

男は暗闇の中で目覚めた。

鉛のように重い体を起こすと後頭部に鋭い痛みが走った。

おもむろに後頭部に右手をやると冷たい液体に触れた。

目が暗闇に慣れたところで右手を見ると中央が黒ががった赤に染まっていた。

どうやら後頭部を鈍器か何かで殴られたらしい。

男は自分を殴った何者かに怒りを覚えたがほんの数秒でその怒りは目の前の光景に打ち消された。

暗闇で気がつかなかったが男の足元には2体の人型の何かが無造作に転がっていた。

男はそれらを直視することができず下を向いたが好奇心が恐怖に打ち勝ち、一瞬それらに目をやった。

それらは無論、人間だった。片方は男性でもう片方は女性だ。

二人の人間は死んでいた。死体は服を着ておらず裸体だった。

男は目線を死体の体から顔に移した。

死体の顔は潰されたように酷く歪み、人間らしい顔つきは跡形もなくなり、ただの肉片と化していた。男はその間に何度も嘔吐した。

胃の中にあったもの全て吐き出すと男はその場に崩れ落ちた。男には家族がいた。愛すべき妻、もうすぐ3歳になる娘。男は目を閉じ、静かに泣いた。その涙は絶望と怒りによる濁ったものだった。

男はまた目を覚ました。どうやらそのまま眠ってしまったらしい。男はこの状況で寝ることができた自分の精神に気味悪さを覚えた。

目が暗闇に慣れるのを待ち、辺りを見渡すと死体が増えていることに気がついた。男性と女性の他に男性のものが新たに加わっていた。その男性も裸体で顔も酷く歪み、腕はだらしなく曲がっていた。

男は立ち上がり、死体を見ないようにしながら辺りを歩き回った。

出口らしき物は見当たらなかったが自分がいる場所は何かの部屋らしきものだということがわかった。

壁があった。壁は冷たく湿っていた。壁づたいに進んで行くと元の場所に戻された為、ここは何かの部屋だと判断した。脱出は不可能だと感じた。男は孤独を味わい、力無いゆっくりとした動きでまた歩き回った。

どれくらいの間歩いただろうか。男は仰向けに寝転んだ。意味も無く天を仰いでいると白い光が男の顔を照らした。男は突如現れたその光に手を伸ばすとその光は丸い円形状に変わった。しばらく見ることのなかった眩い光だった。男は少しの希望を持ち、立ち上がった。

しかし、その希望はいとも簡単に打ち砕かれた。

先程までの光が跡形もなくなり、暗闇に閉ざされた。男は視線を上に向けたまま動けずにいた。

それは光を失った絶望からではなく見つめられていたからだった。天には輝かしい光ではなく、巨大な目があった。その目は充血し、酷く濁った目だった。

男はその目に見つめられ金縛りにかかったように固まり動けなかった。

「なんだ、まだ生きていたのか」

低い抑揚のない声が辺りに響き渡った。男は声がその目を持った何者から発せられたものだと悟った。

一瞬その巨大な目は去り、辺りが再び白く照らされたがその光もなくなり、黒い何かが降ってきた。

男は身の危険を感じ後ずさると黒い何かは地面に窪みを作った。黒い何かは木の幹のように見えた。

巨大な目の持ち主は男のことを潰そうとするように何度も地面に窪みを作った。男は必死に走った。体は気力だけで動いていた。男はしばらく走り続けたが足がもつれ、地面に倒れた。同時に男の下半身は地面に埋まった。男は声にならない叫びをあげた。

上半身だけとなった男は両手を使い、体を引きずり、死から逃れようと最後の抵抗をした。腹の辺りから温かい液体が止めどなく流れた。

下半身を失ったことが致命傷となり男は力尽きた。

男が動くことは二度となかった。

巨大な目の持ち主は男の死を確認すると男の入った壺に蓋をした。

久々のショートショートです。

なんだか変な感じになりましたがご了承ください。

感想、ブックマークなとお待ちしております。

では!

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