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第3話「伝えたい言葉」

「ぉ、オーイ? いますげー音したけど……ッ⁉ ってお前どーしたんだソレ⁉」


 様子を見に来た奴が、僕の熱くなった額を指差して目を丸くしている。

 血でも出てしまったかと焦り、反射的に手を当ててみると、指先に白いモノがついた。


「……っぷ。ぷあああははははッッ! お、お前……デコ真っ白なってん、ぞ……がははは」

 そんな馬鹿なとゴシゴシこすると、本当に手のひらが真っ白になった。


「え゛⁉」


 こんなの誰でも驚く。自分の血が白いだなんて、いままで知りもしなかった。というか、一昔まえのサイバーパンクなアニメぐらいでしかみたことないぞ? 白い血液なんてさ。


「くすくすッ……お前ッ、アンドロイドだった、のか……プッ……どーりで……ッククぅ……あーはらいてぇーッ!」


「……あははは。笑える」

 壁に貼られた『ペンキ塗リタテ』の注意書きが目についた。


 どうやら、ここのコンクリートの壁さんはジョーク好きで、ユーモアの才能があるみたいだ。笑え笑え。好きなだけ僕のことをあざ笑えばいいさ……


「ガハハハハハハッ!」

「お前はわらいすぎッ!」



 場所を変えて、手をかざすと蛇口から、温水がふきだす。シャバシャバと顔をぬらすと、お節介な温度が、額にしみる。白いペンキが落ちきると、赤くなった額が姿を現した。


「っー。いてて……すこし、コブになってるな……」

 鏡に映る自分の姿を、昔と重ねてみる。それは、知っていた自分とは違うけれども、かろうじてヒトのカタチをしていた。


「どこが違うんだろうな……なんて……な」

 そもそもが、好きになれない自分の事を考えるのはダルイしダリィし。

 磨いた虚言と妄想で現実全部を塗りつぶしてさ、世間の目は肩書だと自分に言い聞かせて、何度でもコンティニューを選択するんだ。


「……そういえば、彼女も……似たようなこと、いってたっけ……」


 僕は、彼女が書いてくれた詩をスマホに表示させると、洗面台に寄りかかり、ひとり思い出に浸る。


「へへっ……。乗車は失敗 それならダラダラ 言い訳はKNOW だるいし。だりぃしです。 でしょ……。あはは。意味わっかんねー」

 でも、彼女らしさとでもいうのかな?

 僕には欠けているリアリティが……ありのままの言葉が、現実味のある日常を描き出していて、とても魅力的な詩になっていると思う。少なくとも僕はこれが好きだ。


 彼女の事を知らなくても、聞いているだけで見えてくる。もっと知りたいと思えてしかたがなくなってしまうんだ。

 彼女からメッセージがきた時は、純粋にうれしかった。誰かに助けを求められるなんてしょっちゅうあるけれども、この時ばかりは、子供みたいにはしゃいでしまったよね。


「なつかしいなぁ……あぁ~でもなぁ。はじめは、おかたい文章にびっくりして、僕の方が、ゴーストライターでもいるんじゃないか? とかうたがったよね……」


 そんな彼女もいまじゃタメ語で話しかけてくれるようになった。いきなり会社辞めたい宣言してきたり、自分のアルバム買いますとか冗談いったりしてくれる。

 その度に、僕の関心は彼女の方に向いて。彼女の日常が、気になって、好きになって。このままずっと話していたいな、とか考えちゃって……


「……いまどうしてるだろうな…………泣いてる、かな?」


 送信したメッセージが寂しそうにしている。いつもなら、すぐに、既読つくのにな。

 …………。

 ……。

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