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第2話「いい奴 と わるい僕」

 彼女との秘密を持つようになってからしばらくが経ち、メッセージのやり取りも変に気を使うことはなくなり、僕達の関係はより深いものとなっていった。SNSを介して離れた距離が縮まりつつある、今日この頃。


 そんな中、歌い手との飲みの席で、それは起こった。


「よォ? 歌詞書いてるのお前じゃなかったんだな」

「……あうん。伝えなくちゃとは思っていたんだけどさ……ごめん」


 心配していた事態が発生してしまった。秘密がバレて、機密が漏えい。


「ッちィ。いつからだ? いつからお前、だめになったんだ……」

「……この前の曲で、知り合って……それから――」



「そ う じ ゃ ね ェ ‼ いつから書けてねぇンだ、つってんだよォッッ‼」



 一段と大きな声が心に響き、身体が縮こまる。

「……もう、半年ぐらい前から。……ごめん。書けないんだ。もう……」


「ばかやろう! ……そういう事はちゃんと相談しろよな、お前。一人で抱え込んでんじゃねェよ」

「ごめん……」


「お前ふざけんな……俺はてっきり絶好調だと思ってたから。アルバム無理してんじゃねェだろうな? 俺にはお前の方がよっぽど大事だっての‼ いまどーしてんだ」


「……うん。ありがと僕も、オマエのこと……大好きだ……」


「バーカ。好きとはいってねェし。ただ、お前がいなくなったら迷惑すんだよ! 俺の曲だれが作るんだよ」

 ほんとうに僕はバカだ。奴がいいやつだって知っていたはずなのに……こうして親身になってくれる友達がいるって何で忘れてたんだろうな。

 戯言ばかり並べて、自分がどれだけ恵まれているかを忘れていた。


「ごめんね。心配かけさせて。いまはね、彼女に作詞してもらってるんだ」


「はーン? ガールフレンドに歌詞書かせるなんていい身分じゃねェか……ケッ! 俺たちの友情もここまでだな……ッ」

「ちょ! ち、ちがうちがう! 彼女ってそういう意味じゃない! べ、別に付き合ってないから!」

「ハハハァッ! またまたぁ、そんなこと言っちゃって? ホントは気になってんじゃねェのかぁ? どーなんだァ、ネットで噂のゴーストライターと天才ミュージシャンのカップル誕生すんじゃねェの? この色男がッ」


「えっ?」


「あン? んだよ見てねェのか。ホレ?」


『【速報】新曲の作詞別人説 \(^p^)/』

『ゴーストライターってマジ?』


「めっちゃ騒がれてんぞ~」

「な……なんだよ、これ」


 僕は送られてきたURLを見て怖くなった。誰にも言っていない彼女の存在が語られていたのだ。でも、僕にとっては、どうしてバレてしまったとか、なんで噂になったとか、そんなことは大した問題ではなかった。問題は僕だ。


 僕が彼女をこの世界に連れ込んだ結果、こんなことになってしまったってことが、問題なんだ。彼女にしてしまった事に気がついた僕は、とても恐ろしくなった。


 知っていたはずなのに、この世界は広すぎて、残酷で、一人で生きていくのは辛すぎるって、身を持って経験してきたはずだったのに……


「……ち、ちょっとごめん連絡してくる」

 僕はスマホを握りしめ席を立ち、一人になれる場所を探す。すぐに言わなきゃ。気にするなと伝えなきゃ。世界から守ってあげなくちゃ。今度は僕が救ってあげなくちゃ!


 廊下の突き当たりで、アプリを起動してメッセージを開と、受信ボックスには、彼女から別れの言葉が届いていた。


『私もう、ゴーストライターやめますね』

『迷惑かけて本当にすみませんでした』

『さようなら』

 <――02:01


「……ッ」

 ゴツンと鈍い音を廊下に響かせる。


 スマホを握る手に力が入り、意味もなくイラついて、行き場のない感情を爆発させた。

 額がジンジンして、コンクリートの壁が「そんなものか」と僕をあざ笑う。

…………。

……。

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