第五話:恐怖そして担任
この使い魔なご主人のなかには本来バロンたちが知っているはずのないことも書かれているかもしれませんが、そこはスルーしていただけるとうれしいです。それとかなり遅れてしまいました・・・。
列車に揺られること30分ほど、ようやく学園の目の前にまで来ることができた。学園内へと続く道の前にはかなりの数の人間が集まっていた。まあ、人間だけではないのだが(魔導師の使い魔なのか、猫やふくろう、精霊、その他もろもろも見えた)。クラス分けの紙でも張り出されているのだろうか?人ごみに近づくにつれて聞こえてくる声を拾えばどうやらその通りだったようである。近くに来たオレたちの周りには、自分のクラスを友に伝える声や自分の好きな人といっしょになることが出来た喜びから叫ぶ声などが飛び交っている。ご主人も自分のクラスを確認しようとするが、背が足りない。周りの生徒たちの波にさらわれ、どんどんと押し戻されていく。
「バロン〜、代わりにみてきてぇ」
「面倒だからやだ」
「め、面倒って・・・」
ひどいと思うかもしれないが、背が低いのはご主人のせいなのだからしょうがないのだ。牛乳が嫌いだからっていつも残すから背が伸びない。だからこれはご主人のためを思ってのこうどうだ。決してただ面倒だったからなんて理由じゃない・・・本当だって。そうこうしているうちに、
「お〜い、シャル〜俺たちFクラスだったぜ〜。いちこれからよろしくな〜」
と少し遠くから声をかけてきた蒼い髪はグレィだ。ご主人よりもいくらか背の高い奴はクラスの確認を終えてこちらにきたようだった。ご主人もよろしくとかえしながら始業式が行われるらしい体育館へと足を進める。着いた先にあったのは、とても大きな建物であった。ここにくる途中、生徒たちが話しているのを小耳に挟んだのだが、体育館は授業などで使うことがあるそうだ。詳しくはわからないが、なんでも特殊な結界だかをはってその中で魔法の実技練習などをやるのだそうだ。(道理でこんなに広いわけだ)
オレたちが体育館へと入るとすでに多くの生徒たちが集まっていた。高等部の一学年しかいないはずだがさすがにFクラスもあるぐらいだから人数は多い。体育館の中はすごい喧騒につつまれていた。周りの生徒たちを見ると、これから始まる学園生活への不安と期待の入り混じったような顔をしている。生徒たちの声はなかなか収まりそうになかった。ふと前を見るといつの間にか、生徒とは違うローブを着た奴が一人ステージに立っていた。そしていきなり「静かにしてください…静かにしないと、 にしますよ」と急にそう言った。大きな声だったわけじゃない。なにを言ったのかもわからない。だがその声にはただならないなにかを感じとったようでさっきまでの喧騒が嘘のように生徒たちは静まり返っている。ローブの奴はいつの間にか姿を消していた。「で、ではただいまより始業式を始めます」と別の先生の合図で始業式が始まったのは二時間ほど前のこと。偉い人の話が長くてつまらないのはどこでも同じようで、ご主人のとなりではグレィが堂々といびきをかいて寝ていた。ご主人はさっきの奴がそうとう怖かったようでグレィのせいで怒られないからとキョロキョロと周りを見回している、このヘタレめ。しかしオレも暇になってきたな。
「バロン、あれ見て」
ご主人の指差した方向を見た。さっきの奴が寝てた。
「あいつ自分が寝れなくてうるさいから注意したのか。なんて自分勝手なんだ」
「いや、おまえが言うなよ」
でもさっきのあいつはかなりの威圧感というかそんなものをまとっていたような気がする。かなりの実力をもっているのかもしれないな。どうせオレの知ったこっちゃないがな。
しばらくすると(まあ、しばらくとっても二時間以上たったあとだったのだが)始業式をやっとのことで終わり、これからすむことになる学園の寮へと案内された。その道中、
「グレィ、よく寝れたね。というか、いつ怒られるかと思うとひやひやして困ったよ」
「え?オレがかっこよすぎて困った?何言ってんだよ、当たり前のことだろ」
「そんなこと言ってねぇ!困ったしかあってないよ、あとどんだけ自分のこと好きなんだよ」
相変わらず騒がしい奴らだ。教室までは高等部の上級生が案内をするのだが、構内は広いので教室に行くのも一苦労だった。しばらく歩くとFとかかれた札がある教室へとついたのだが。教室内は誰もが
「ああ、ここは倉庫なんだ、道にでも迷ったのかな」
と現実逃避したくなるの大きさだった。否、教室と呼んでいいのかさえわからない。教室への道中、小耳にはさんだ情報によるとなんでもAクラスはかなりの高設備らしい。AからFまであるクラスのうち入学筆記テストの成績のいい順にAクラスから振り分ける仕組みになっているということらしい。オレにはよくわからないが貧民と貴族みたいなものだろうか?ご主人はギリギリで試験を受けずに入ったためいきなりFクラスということだろう。災難だな、ご主人。
「おいっ、こんなの聞いてねえぞ!!なんだよこの教室は」
「そうだよ、こんな場所で勉強しろってかよ!!」
そーだ、そーだと、ご主人のクラスメイトから次々に非難の声が上がっている。それもそのはず事前に知らされていなかったせいか、文句を言う生徒は絶えなかった。そんななか、
「あららー、なんですの?この汚い家畜小屋のような部屋は?うちのペットですらもっと立派な部屋に住んでましてよ」
見るからに他の生徒とは格の違うローブ(さまざまな装飾がきらびやかに施されている)を身にまとい、そこに魔王城のようにずんっ!!と廊下に立ち、見下すような眼で周りを見ながら(明らかに見下しているのだが)そう言い放った。胸につけられているバッジ(始業式後に配られた)を見ると一年生でやはりAクラスのようだ。後ろには数人の女子を引き連れている。
「なんだてめ・・・え・・・」
当然そんなことをいわれれば黙っていられるはずもなく、言い返そうとした奴はしかし最後まで勢いよく言い切ることが出来なかった。しかも回りにいたほかの生徒たちはいつのまにかひざまずいていた。ご主人も不思議に思ったらしく隣にいるグレイに尋ねる。
「ねえグレイ、みんなあの人のこと知ってるの?様子がおかしいけど」
「ああ?お前知らないのか?ありゃ、今の現国王の娘、つまり王女様だぞ。この国に住んでりゃ知らないはずがないってことだ」
王女様といいつつもグレイにひざまずく様子はない。気づいてみれば立っているのはその王女様とやらと、ご主人とグレイだけだ。いいのだろうか、ご主人には今自分が危険な状況だってことわかってんのか?
「ロゼルティ様の前で堂々と立っているなんて、無礼でございましてよ!!」
ロゼルティ様とやらの取り巻きのひとりが叫ぶ。周りの生徒も口々に謝ったほうがいいってっなどといっている。しかしグレイは大して気にした様子もなく、
「王族だかなんだかしらねえが、この学園に入ったらそんなモン関係ねえよ。ここは実力がすべてを決める、実力のないものがなに言ったってそんなのは負け犬の遠吠えだ。権力振りかざしたいならよそでやれよ」
と啖呵をきってた。おおーっという声が上がる中、ロゼルティとやらは顔を真っ赤にしてかなきり声を上げていた。自分の思い通りにならない経験がなかったのだろう。
まったくこれだから王族は、とグレイがため息をもらしているところに、
「でも、実力がなくてFクラスになったグレイがいってもちょっと説得力にかけるような・・・」
というご主人のつぶやきにグレイは余計なことをとご主人の頭をはたいていた。クラスのみんなもああ、確かにと、グレイのせっかくのかっこいいイメージをぶっこわしたご主人であった。
そんなこんなで、ワガママ娘との第一次戦は先生が来たことによって終結した。ふう、やっと戻れると教室に入った生徒はまた固まった。担任はあの始業式の
よくわからない先生だった。今はフードをはずし緑色の髪をだらしなくうしろにながしダルそうな目つきで見回している。始業式の様子とはだいぶ雰囲気が違っていたので
みんな戸惑っている。
「私がこのクラスを担当するセシルだ。はい、じゃあ始めに出席を・・・・・・とりません」
「「「「とらないのかよっ!!」」」」
みんながいっせいに突っ込んだ。ちゃらららったらーん。クラスの団結力がアップした。
「なにその擬音!?RPGかよ」
ご主人め、こころの中にまで突っ込んでくるとは、おぬしやるな。
「だれがおぬしだよ」




