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猫とニートと底辺作家 作者: さつき けい
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7/7

『ルリオ』は短足

お久しぶりでございます。
 
 子猫の「ちび」は最初は大人しいと思っていたが、さすがに三ヶ月、四ヶ月と経つと動きが激しくなる。

ゲージに入っていてもガタガタと激しく揺らすようになった。

まだ外には出さないが、外への扉を全て閉めた状態の家の中で放してある。

母の指導で子猫には猫用首輪と小型犬用の細い紐のリードを付けた。

紐をつけたまま走り回る子猫は、首輪の鈴の音と、目の端に見える紐でどこにいるか分かるようになっているのだ。

「首に巻きついたりしないの?」

鈴を付けるのは目が不自由な父に対しての配慮もある。

紐は、

「狭い場所に入っても簡単に捕まえるためよ。大丈夫」

と母は言った。

そういえば逃げる子猫は簡単に捕まえられない。



 その年の秋、ちびは半年以上が経ち中猫くらいになっていた。

飼い猫の証である首輪は付いているがリードはない。

ちびはもうこの家の子である。

そろそろ避妊手術が必要なのではないかと獣医さんと相談していた頃である。

 台風が近づいていて強風の中、ゴミ出しに行く。

この辺りは早朝にゴミ収集車が来るので、前日に出しても良いことになっている。

「さむっ」

夕食の用意の途中だったので足早に歩く。

「みーみー」

どきりとした。何かが聞こえた。

 一番近いゴミ集積所の隣は公民館で、そこへ行く間には田畑と空き地しかない。

その空き地の所有者は誰かは知らないが、年に一度くらいしか雑草刈りに来ないので草がぼうぼう状態だ。

暗いと何がいるか分からない。

野良猫やイタチのような小動物は見かけることがある。ゴミを空き地に捨てる人もいるので餌を漁りにくるようだ。




 以前、母が隣の家の敷地で子猫を拾ったことがあった。

あの時も小さな声を聞いた。この声は間違いなく子猫だろう。

ゴミ袋を置いてカラス除けの網をかけて帰る。

そしてもう一度、空き地の側を通る。

 道はすでに暗く、空き地と道の間の側溝も真っ暗で何がいるかは分からない。

ドキドキしながらキョロキョロしていると、電灯が付いた電柱の下に黒い毛玉が見えた。

雨はまだ降り始めていないが、風はごうごうと音を立てている。

近寄ってみると、やはり子猫だった。もう鳴き声を上げることも諦めたのか、じっとしている。

私はすっとその子を背中から捕まえた。モタモタしてたら逃げられる。

「びみゃーびみゃー」

暴れるので抱くことも出来ず、ただ捕まえた状態のまま急いで帰る。

女性の片手でも十分すっぽりと入る。痩せてがりがりなのか、骨が当たる。

「ねー、ちょっと来てー」

大声で弟を呼ぶと、夕方にもかかわらず眠そうな顔で玄関に出て来た。

「なんや」

その目の前に掴んでいるものを差し出すと、つい手を出して受け取ろうとする。

「いてっ」

噛まれたのか、引っかかれたのか、指から血を出して弟が怒った。

「なにするんや、ねえちゃん!」

しかし、相手が子猫だと分かるとぶすっとしたままタオルを持って来て、そっとくるんで抱きしめた。



 ちびがいるので子猫の餌には困らない。

洗面台で子猫を洗っている間に、弟が段ボールにタオルを敷いてくれる。

「どうする、これ」

「どうって、仕方ないやろ」

二匹飼うわけにはいかない。とりあえず母に連絡をするため、弟は写真を撮っていた。

「小動物愛護センター?」

県庁所在地のある市が隣にある。田舎で土地が余っているせいか、郊外に市のための様々な施設がある。

「そこへ連絡して引き取ってもらえって」

母とメールしていた弟がネットで市のサイトを見ている。

二度ほど捨て猫を拾っている母は色々と情報を調べていた。

そして市の行政に捨て犬や猫を保護して、里親に渡すという制度があると知ったそうだ。

自分で里親を探さなくていいのなら助かるよね。

 私は夕食の用意を終え、食事を並べていた。

弟は、今日はもう遅いので明日施設に電話すると言っていた。

ちびは自分より小さな子猫をどう思っているのか、段ボールを覗き込んでいる。



 翌日は大雨である。それでも大人は仕事に行くのだ。

弟は無職だけどな。

昼休憩時間にメールしてみると

「センターに電話したら、『小さすぎるから引き取れない』と言われた」

と返事が来た。

「親が近くにいるかもしれんから、いたところに戻しとけってさ」

なんだそれ!。私は怒りがこみ上げた。

母にメールして愚痴った。母も怒っていた。

「親が来るかどうかわからんやろ。台風来てるのに、そんなところに置けんわ」

うちで預かって貰い手を探すことになった。



 子猫はちびと同じ灰色ぽいキジトラだった。

「なんだこいつ、足みっじけー」

特徴は、弟が呆れるほど足が短いこと。

いつもの獣医さんに連れて行くと「まだ赤ちゃん猫だからね、足はそのうち長くなるよ」と言われた。

短い足でトテトテと歩く子猫はかわいい。

 ちびはその子猫に興味津々で、段ボールから出していると必ず構いに来る。

ぺろぺろがぶ、引き離しておくと、また探し出してぺろぺろがぶ。

「やめーや」

私は仲裁に入るが、弟はげらげら笑いながら動画を撮っている。

仲が良いのか悪いのか、いまいち分からない。



 分からないと言えば、小説の投稿サイトもだ。

いつの間にか、私の異世界もの小説にブックマークが一つ付いていた。訳が分からない。

連載と銘打ってまだ一話しかないんだけど。

PVだって数か月経った今でも合計が二桁だ。

たった一件だけど、ありがたくて涙が出そうになった。こんなんでいいのか。いや、よくないだろう、絶対。

私はその一件をじっと見つめる。

評価というより、これからに期待、ということだろう。

うん、がんばろう。もう少しやってみよう。

そう思った。



 子猫は名前が付いた。

獣医さんに二回目の注射に連れて行った時に名前がないと不便だと言われたのだ。

子猫は生後二ヶ月くらいの男の子だった。

「ルリオ」

「なんじゃそりゃ」

「なんとなく?」

私は某地獄の鬼さんが出てくるアニメが好きなのだ。

そこに出て来るきじのキャラクターに顔が似てるのよ。苦労性ぽいとことか。

母に動画を送ったら「ルーたん、かわいいっ」と返事が来た。

また猫可愛がりする気、満々だな。

年末には戻って来るらしいけど、雪が降らなければいいなと思った。



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