真っ黒なドラゴン
ごきげんよう!諸君。私の名は… 長ったらしいので割愛。黒竜と呼ばれているな。ようは、真っ黒なドラゴンが私である。
トカゲにしては筋骨隆々で長い四本の足、生え揃う鋭い牙、隙間なく体表を覆う光沢のある漆黒の鱗、瞳孔が縦に細長い金色の瞳、赤味の入った濃い紫色の鉤爪、深海のように深い紺色の翼膜の張った大きな翼。
ちなみに、私は今、人間が頂上まで登るには少しキツイかな、ってくらい高い山のてっぺん岩場。人はたしか、えっとミロカブリエ山と呼んでいたかな。とにかくデカイ山で、動物も植物も、そして魔物や精霊も生き生きとしている。まぁ、太い地脈の上なのだから当然の摂理なのだが。
この世界に存在する魔物というのは、最初から魔物として生まれいでた者と、動物がたくさんの魔力を吸収し魔物と化した者がいるが、総じて2パターンある。
ズバリ、ケンカを売る奴と買う奴だ。ケンカを売る奴はとにかく問答無用で襲いかかってくる。買う奴は刺激を与えなければ襲いかかってくることはない。ハチで例えればスズメバチとミツバチだろうか。この山には私が来てからケンカを売る奴が減った。また、この山の麓は樹海になっていて、いちおう現在私が統治していることになっている。この山に来たときにうろうろとしていたら動物や魔物たちから勝手にご主人様認定されたのだ。最強種族の宿命なのか。
そうそう。ドラゴンな私であるが、誕生してからこのかた五百年を超える。この世界で最も深い海の海底マグマから生まれいでた。多くのドラゴンが大地のどこかしらで生まれいでるのに対し、私のように海からなのは大変珍しいらしい。しかし、まあ生きているドラゴンは今、私を含めて十体のみ。さらに、例外はあれど排他的な種族だ、孤独に死滅していく。
… あぁ、先程の言葉を訂正しよう。たった今、生存しているドラゴンは九体となった。
ドラゴンには独自のネットワークのようなものがある。この世界に存在しているドラゴンは互いのことをおとまかに把握することが出来るのだ。誕生や名前、居所などの情報が共有される。また、過去のドラゴンの記憶が記録という情報となって生まれいでた瞬間に流れ込んでくるのだ。
話がそれたが、そういう共有システムにより、同胞の死もまた、認識可能。先程、とある地竜_空を飛ぶことが出来るドラゴンを翼竜、出来ないドラゴンを地竜と言う。水竜はいないが、青の属性を持っていれば水中での活動も可能だ_の生が終わったことを認識した。
滅びへの刻が、またひとつ、刻まれた。