プロローグ
2015年8月3日。
都内某所で身内のみで行われた葬式。
故人の名前は滝上 悠一 30歳。
彼の死因はトラックに轢かれて即死というもの。
とある有名商社に勤めていた悠一は28歳の頃、上司Aにセクハラをされていたという女性B(既婚)にその事を相談される。
彼女を助けようと上司Aの元に直接行ったのだが、最初は煮え切らない態度を取りつつも否定していた上司Aだった。
だが形勢が悪くなると見るや開き直り、彼にクビを申し付けた。
そんな上司Aの態度に悠一は社会人としてはやってはいけない暴力という最悪な形を取る。
彼が事情を同期の女性Bに報告に行くと
――冗談を本気にして馬鹿みたい。
という言葉が待っていた。
後日のセクハラ問題が本当にあったのかという質問に、上司Aと女性Bが揃ってそんな事実はありませんと答えた時、悠一が陥れられたと第三者が気付くも悠一が何も語らなかった事もあり、彼一人の暴走という形でこの一件は終わる。
その後警察沙汰とはならなかったが、悠一は逃げるように会社を去り
実家で『ニート』となる。
悠一の交友関係は不明。
引き篭もるようになってからは外出が極端に少なかったため、人の縁という縁を殆ど絶ったものと思われる。
結婚をしていない悠一の家族は実家に住む両親、妹、祖母そして悠一の5人。
両親は共働きで両方医者。
妹の出来が良く、なにをさせても兄の悠一より上だったので、両親は妹を可愛がり悠一に対してはとても冷たいとの事。
その為、家庭環境は複雑ではないが悠一は親の愛情を殆ど知らない幼少時代を過ごしていたと思われる。
そんな悠一が先の一件以外素直な経歴を持つのは祖母の影響だと推測される。
その祖母を頼り、実家に帰った悠一は祖母以外が近づけない程荒れてしまった。
その後2年間もの間、悠一は働かずに実家の離れにある、倉庫らしき所に布団とパソコンを持ち込み引き篭もることになる。
だが時が悠一の心を徐々に癒やしたのか、30歳のある日久しぶりの外出をする事になる。
その時悠一に不幸が起きた。
狭いT字路。
どうやって侵入してきたのか、一時停止もせず直進を続ける大きなトラック。
その先には小さな女の子。
彼は考えるより先に動いていた。
これが滝上悠一の死因であり一生である。
―備考欄―
彼と深い交友関係にあった友人は今回の調査では発見出来ませんでした。
情報提供者は彼の元部下の男性。
その男性によると、悠一は積極的に他人と関わりを持つタイプではないが、面倒見も良く嫌われるタイプではなかったとの事。
滝上悠一
資格は十分に有ると考えられます。
彼の性格はここからは読み取ることが出来なく、不安は多少残りますが
その最後は他者を救おうとしてのもの。
実際にこの時の子供は救われており、彼は英雄たる資格を手にしました。
我々が作りし世界は彼のような人物が必要だと考えます。
素行:良 常識:可 知性:可
転生許可承認者:押印により本人確認