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統べる者  作者: 八坂カロン
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第一章ー8

津々良が尋ねて来た日の翌日の放課後。


貴人、悠奈、津々良、未来の四人がグラウンドに集まっている。

五月祭までの間、放課後のグラウンドは出場選手が優先的に使用する事ができるのだ。


「それじゃあ練習するか」


貴人が軽くストレッチをしながら言う。


「といってもどういう練習をすればいいのかわからないよね……」


勝手がわからず戸惑った様子の悠奈。


「とりあえず津々良と未来の属性を教えてくれないか?」

「私は風属性です!」

「風属性なのか!珍しいな〜」


元気良く答える津々良の言葉に驚く貴人。

六属性のうちで風属性と雷属性のウィザードの人数は極端に少ないのだ。

最も割合が高いのは火属性と水属性、次いで土属性、氷属性、そして風属性、雷属性という順になっている。


「わ、私は水属性です」


未来も答える。


「未来は水属性か。それじゃあ悠奈が未来を見てくれ。俺は津々良を指導する」

「その決め方には何か意図があるんですか?」

「ああ、属性には特性があるからな」


津々良の問いに貴人が説明する。


「それぞれの属性をタイプに分けると、火属性は攻撃重視、水属性、土属性は防御重視、氷属性はバランス、そして風属性と雷属性は攻撃特化だ。だから攻撃特化の津々良は攻撃特化の俺が、防御重視の未来はバランスがとれている悠奈が指導する方が使い方とかを詳しく知ってるからこういう組み合わせにしたんだ」

「あ、あの!」


貴人の説明が終わるといきなり未来が声を出す。


「そ、その……し、しっかり教えてくれる事は私達にとっては嬉しい事なんですけど……先輩たちは、その……戦うかもしれない相手に色々……お、教えちゃっていいんですか?」

「全然大丈夫よ。それで私達が負けたらそれは貴方達の方が強かったてことだけじゃない。ね、貴人?」

「悠奈の言う通りだな。それに俺達は未来達の癖を知ってしまうんだからおあいこだろ?」

「そ、そうかもしれませんけど……」

「まあ、そう思うのは俺達に勝ってからにしてくれよ」


納得しきれない様子の未来に貴人。


「た、確かにそうですね……」

「そうだよ未来ちゃん!今はそんなこと考えちゃダメだよ!」


津々良の言葉でこの話題は終了する。


「よし!それじゃあ別れて練習しようか」

「「はい!」」


貴人の言葉に津々良と未来が頷く。


ーーーー


二人ずつに別れた後、貴人は津々良と向かい合う。


「よし!それじゃあ最初は津々良の実力を見たいから俺に全力で攻撃して来てくれ」

「え?全力ですか?」


聞き返す津々良。


「当たり前だろ?そうじゃないと実力がわからないじゃないか。俺は避けに徹するから」

「確かにそうですけど、先輩は攻撃しないんですか?」

「したらすぐ終わっちゃうからな」


貴人の言葉に舐められていると思ったのか津々良は少し語気を強めた。


「……分かりました。全力でいきます!」


そう言うやいなや津々良は全身に無属性のディーヴァを纏う。


「よっしゃ!いつでもいいぞ!」


貴人も無属性のディーヴァを纏う。

お手並み拝見だ。


「いきます!」


津々良は左腕に風属性のディーヴァを纏う。

綺麗な薄緑色のディーヴァだ。


「すごいな。ウチのクラスですら片腕にディーヴァを纏える奴は少ないのに・・・」

「一応Aクラスの中でも上位ですから!」


津々良は左腕を貴人に向けて手刀のように振り抜きながらマギを発動する。


風刃エアカッター!」


津々良の左腕から風の刃が貴人へ向かってくる。

はやいっ、貴人はそう思いながら横にずれて躱す。

津々良が続けざまに風の刃を貴人に放つ。

数十発目で貴人の右脇腹に少しかする。無属性のディーヴァをまとっているため外傷はない。

着ていた服が少し破けた程度だ。


「流石に躱しきれないか……それにしてもすごい貯蓄量だな……」


貴人は躱し続けることは難しいと悟る。

津々良は一向に疲れたような気配を感じさせない。

中々の魔力量のようだ。


「まだまだいけますよ!先輩も攻撃してきたらどうです?」

「そんな安い挑発にのるかよっ。次は近接戦だ!」


そう言うと貴人は風刃エアカッターを躱しつつ津々良に接近する。


「攻撃しないのに近づいてくるなんて先輩はアホですか!?」

「アホとは失礼な!」


貴人に暴言を吐く津々良。


「本当に向かって来るなんて……どうなっても知りませんよ!?風鎧エアアーマー!」


呆れた表情を浮かべながら津々良は左腕を風の刃で纏う。


「そんな事もできるのか!?本当に一年か!?」


貴人は再び驚く。

一年の最初で今の愛斗と同じ段階にいるのだ。


「はあっ!」


津々良は貴人の言葉を無視し、左腕を貴人の顔に目掛けて放つ。

当たれば確実に顔が切り裂かれそうである。


「殺す気かよっ」


そう叫びながらその拳を貴人は右に避ける。

すると今度は津々良が左足を軸足にして右足で回し蹴りを貴人の顔に入れようとしてくる。

やっぱり殺す気だ、貴人はそう思いながら体勢を低くし、蹴りを躱しながら一歩後退する。

回し蹴りを避けられた津々良はもう一度貴人に肉薄し、左腕で今度は貴人の腹を狙う。


しかしーー


「津々良は左腕に頼りすぎだな。攻撃が単調になっているぞ」


と言いながら貴人は津々良の拳が届く前に少し体を反らし津々良の右肩に手を当て軽く押す。

すると津々良はバランスを崩し左腕を空振りさせてしまい勢い余って地面に転んでしまう。


「いたた、先輩攻撃しないって言ったじゃないですか!?」


津々良が声を上げる。


「あれは攻撃じゃないだろ。津々良が勝手に転んだだけじゃないか」

「むむむー、先輩ずるいです」


そう言いながら頬を膨らませる津々良。小動物みたいで可愛い。

貴人は思わず頭を撫でる。


「まあでも驚いたよ。一年でそこまで出来るなんて。まさか攻撃を当てられるとは思わなかった」

「あんなのたまたまですよ。それ以外なんて余裕で躱してたじゃないですか」


貴人が褒めてやると津々良はさらに頬を膨らませる。

可愛さが増した。


「津々良は貯蓄量が多いんだから術式を展開出来るようにしたらどうだ?」

「術式ですか・・・」


貴人が提案する。

術式はイメージの難しいマギを発動する時に用いられる。

いわばマギを行使するための媒介物のようなものである。

イメージが容易なマギなら術式を用いる必要はない。

先日の悠奈と楓が発動したマギは全て術式は使われていない。

しかしよりイメージが複雑になればなるほど術式は使われるようになる。

もちろんイメージ力は個人差があるため、ある人は術式なしで行使できたマギを術式を用いないと行使できない人もいる。

術式は自分のディーヴァで組み上げなければいけないため、必須条件としてディーヴァの貯蓄量が多くないといけない。

さらにその術式で発動させるマギの分のディーヴァも必要になってくるためディーヴァの貯蓄量が少ない人に術式は使えない。

貴人は津々良のディーヴァの貯蓄量を見て術式を覚えても良いと判断した。

ちなみに学校で術式の授業は二年の二学期からであるため、フライングになってしまうのだが。


「でもどうやって術式を組み上げるのか分からなくて……」


困った様な顔をする津々良。


「術式の組み上げ方は自分の発動させたいマギをイメージしてそのイメージを覚える感じだな」

「イメージを覚える……それ難しく無いですか?」

「最初はな。でもすぐに慣れるさ。なれたら楽だぞ。ディーヴァの消費は激しいけど」

「分かりましたっ。頑張ります!でもどんな術式を組み上げるのか決めないと」

「そうだな!どうせならかっこいいやつにしようぜ!」


こんな感じで貴人と津々良はどんな術式を組み上げるか検討し始めた。

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