第一章ー45
フィールドに降り立った寧々は前にいる計五体の魔導機兵を見据えた。
「かっこつけてみたもののどうしたものか……」
海達には威勢の良い事を言ったものの実際はノープランだった。
おそらく寧々の土刀では魔導機兵を戦闘不能にすることは難しいだろう。
出来たとしてもそれは魔導機兵が一体だけの場合であって五体を相手する事は出来ない。
「寧々先輩」
不意に津々良が声をかけてきた。
「ん?」
「十秒間私を守ってくれませんか?」
「構わないが……何をするつもりだ?」
そう言う津々良の横顔は自信で満ちていた。
どうやら津々良には良い方法があるらしい。
「師匠との特訓の成果を披露するつもりです」
なるほど、と寧々は納得する。
津々良が貴人の指導によって術式を一つ完成させたのを寧々は知っていた。
だから気分が高ぶっているのだろう、そう寧々は結論づけた。
「分かった。十秒の間護ってやるよ、お姫様」
「お願いしますよ。私の騎士」
いつものように冗談を言い合う二人。
この光景を見た観客達(主に女子)が顔を赤らめながら
「「素敵……」」
「「かっこいい……」」
などと言っていたが寧々には意味が分からなかった。
そうこうしている内に魔導機兵達が寧々と津々良の存在を確認したらしくこちらにむかって迫ってきた。
「じゃあ今から十秒は私が相手だ! 」
そう言いながら術式を二つ展開する寧々。
「土鎧! 土刀!」
寧々は術式を展開して全身に土の鎧を纏い、右手に土の刀を出現させた。
直後、一体のライオンを模した魔導機兵が寧々にむかって鋭い爪が生えた前足を振り下ろした。
「はあ!」
寧々も刀で応戦する。
ガッ!!!!
刀と爪が激しい音を出して衝突する。
(やっぱり斬れないかっ)
内心そう思いながら魔導機兵を後ろに弾く。
二秒が経過する。
「次!」
後ろに飛ばした魔導機兵の両横から爪を振り下ろしてくる別の二匹の獅子型の、頭上からは鋭い針をこちらに向けて迫ってくる蜂型の魔導機兵が一匹襲いかかってくる。
寧々は咄嗟に刀の真ん中を右手で持ち、二方向から迫り来る爪を刀のそれぞれ両横に当てて攻撃を防ぎながら頭上の針を左手で掴みーー
「うらぁ!」
思い切り投げ飛ばした。
ようやく四秒。
「まだまだぁ!」
今度は寧々が攻める。
刀で抑えている獅子型二体の爪を力付くで上に持ち上げ、寧々に無防備にさらされた腹の部分をしっかりと持ち直された刀で左から右へと薙いだ。
ガンッ!!!!
という音を立てながら二体の魔導機兵は数メートル飛んだ。
これで六秒。
「いくぞ!」
寧々はまだ攻める。
次の狙いは先程攻撃して来ずに後ろで待機していた蜂型の魔導機兵と初撃で後ろに弾いた獅子型の魔導機兵だ。
その二体に近付いた所で寧々は蜂型の方に向かって大きく跳躍した。
そして刀を蜂型に向けて思い切り地面に叩きつける。
蜂型が勢いよく落ちていく先には獅子型が。
バン!!!!
激しい砂煙を巻き上げながら二つがぶつかった。
八秒経過。
「寧々!」
不意に寧々の耳が海の声を捉えた。
海の方を振り向くと津々良の方を指差している。
慌てて津々良の方へ視線を向けると先程投げ飛ばした蜂型が術式を発動している津々良に襲いかかろうとしていた。
「くそっ!」
寧々は舌打ちしながら刀を投擲するもあっさりかわされてしまう。
寧々は急いで津々良の元に向かう。
そしてーー
「ぐっ!」
体を張って津々良を護った。
針は鎧を貫いて寧々の横腹に突き刺さる。
海が叫んでいるのが聞こえる。
「はああああああ!」
必死に痛みを堪えながら寧々はその針を引き抜きもう一度投げ飛ばした。
これでーー
「十秒間ありがとうございました」
と津々良が寧々に微笑んだ。
寧々は津々良の後ろに下がりながら余裕ぶって言った。
「あとは頼んだ、姫様」
そして津々良のマギが発動する。
「寄生する風」
津々良がそう唱えると津々良の突き出した右手の先にあった術式から細長い五つの薄緑色のディーヴァか風か判断のつかないものが魔導機兵の部品の隙間からそれぞれが内部へと入っていき
バキバキ!!!!!!!
という物凄い音がして魔導機兵達がーー
木っ端微塵に砕け散った。
その光景を見た寧々は口をあんぐり開けていた。
驚きのあまり痛みなど全く感じない。
観客席の方も静まり返っている。
しばらくして津々良がこちらに振り返り
「やりすぎちゃいました……?」
と頭を掻きながら可愛らしく舌を出した。
(こいつはこれを千凪達に発動させようとしてたのか……)
予選で貴人が津々良の術式を破壊した理由を納得した寧々だった。
怖すぎる。
しばらくして貴人達の時以上に大きな歓声が闘技場を包み込んだ。




