第一章ー2
日本から遠く離れた国のとある一室に設けられた円卓の周りに座る人物が七人。
ヨーロッパ系の顔もいればアジア系の顔もいる。
この七人に当てはまる外見的特徴は見当たらない。
ではこの七人が集まる共通点は何だろうか。
一般人が見ればただの国際交流か何かだと思うだろう。
だがウィザードが七人を見れば即座に一つの理解に達するだろうーー
人の皮を被った化け物である、とーー
世界維持管理組織ーー通称世界警察
言葉の通り世界の維持管理を目的とし作られた。
世界警察に入ることの出来るのはほんの一部の優れた才能を持つ者だけである。
ここに入る事を目的としている者も少なくない。
その中のトップ七人。
これはつまり人類最強を意味するーー
やがて七人が英語で喋り始める。
『みんな来てくれて有難う』
『天災に招集をかけられたらみんな断れないですよぉ〜』
『聖人と隠者も来るなんて珍しいね。それでも正確にはみんなじゃないんだけどね』
『未知殿はカウントすべきじゃないじゃろ。みんなって事で正しいと思うぞ』
『……あの人……いつも来ない……』
『そうそう、隠者の爺さんと虚言者の嬢さんの言ってる通りだ。それはあげ足を取るようなもんだぜぇ、皇帝さんよぉ』
『うふふ、くだらない事は置いといてさっさと要件を話して下さらない?天災さん。ワタクシたち全員を呼んだということはそれ相応の何かがあるのでしょう?』
『はは、女王も未知はカウントしないんだなぁ。受けるぜ〜』
『はいはい、この話はもう終わりです。本題に入りますよ』
天災と呼ばれた女が話を終わらせ、本題に入る。
『先ほどウチの支部の方から指名手配中の爆弾魔が日本に向かったという報告を受けました』
この言葉を聞き六人が一斉に顔つきを変える。
『あれ?なんで日本支部のトップの僕より先にそんな情報が入ってるのかなぁ?』
『どうせ貴方の怠慢でしょう?日本支部の方達は優秀ですわよ』
『そんな事は今はどうでもいいじゃろ。爆弾魔はS級レベルじゃろ?ワシ達の誰かが出向かないと甚大な被害が出るぞい』
それかけた話題を隠者が元に戻す。
『ここはやはり日本支部の方が動くべきでは〜?』
『ちょっと待て。俺が行くぜぇ。どうせ皇帝さんは忙しいんだろぉ?』
『んーそうなんだけどねぇー。模倣者に日本にあんまり来て欲しくないかも』
『んだとぉ?自分の国の情報すらろくに把握してないくせにこういう時だけ支部長面かぁ?』
『確かに僕は情報はあまり把握してない。でもね、君はもう少し自分の国の心配をすべきだと思うよ。まあ僕は情報通じゃないからあんまり分からないけどね。情報を把握してる君ならそれくらい分かると思ったんだけど……』
『てめぇ……』
『いい加減にして下さい!!』
天災が再びそれかけた話題を戻す。
協調性というものはこの場には存在しないらしい。
『私が、序列二位の立場から提案します。爆弾魔は日本支部の方達だけで対処して下さい。一般人に危害が加わらない方法であればいかなる手段も認めます。残りの方達は引き続きそれぞれの支部に待機し近隣諸国の監視に当たってください。指名手配犯はまだ多く何処かに逃げ延びています。今後事件に繋がる可能性のあるものは速やかに排除して下さい』
『君が言うなら決まりだね。残念だけど僕も自分のしたい事は置いておくよ』
『くそっ、しゃあねぇなぁ。だがもし日本支部が爆弾魔を捕らえられなければ次は俺が行くぜぇ。いいなぁ?』
女の提案に二人は渋々ながらも賛成する。
『構いません。では以上です。何かあれば逐一報告するように』
その言葉を皮切りに椅子から立ち上がり、また一人と部屋から出て行く。
『爆弾魔……日本に何の目的が……』
誰が発したかわからないこの言葉がいつまでもこの部屋に小さく響いていた。