第一章ー14
四人が一斉に無属性のディーヴァを全身に纏う。
アームズは誰も使用していない。
先に動いたのは海達だ。
「行くよ寧々!」
「寧々って呼ぶな!」
海は貴人達から距離をとり、寧々は両腕に火属性のディーヴァを纏いながら足元に土属性のディーヴァを纏う。
寧々が二属性を扱っているのを見て観客がどよめく。
「寧々ちゃんって二属性使えたの!?」
「私も知らなかったわよ」
香と阿澄も驚きの声を上げる。
普通に授業などに出席していれば文句無しのAクラスだろう。
「行くぜぇ!!」
寧々は悠奈に向かって走り出す。
「氷雨!」
悠奈の放った無数の氷の弾丸が寧々を襲う。
「しゃらくせぇっ!炎盾!」
寧々は走りながら右腕を前に出すと炎が渦状に広がり寧々への攻撃を防ぐ。
「次はこっちだぜぇ!地割!炎拳!」
一気に寧々は悠奈の立つ地面を裂き、左腕に纏っていた火属性のディーヴァを一気に左手に集め逆巻く炎を拳に纏う。
悠奈がバランスを崩しているうちに寧々は悠奈に肉薄し、炎で纏った拳を放とうとする。
「やめろ寧々!罠だ!上を見ろ!」
海が急に声を上げる。
咄嗟に寧々は顔をあげた。
「何!?」
そこには氷属性のディーヴァがあった。
咄嗟に寧々は悠奈と距離をあける。
ばれちゃったか、と言いながら悠奈は溜息をつく。
「もしかしなくとも嶋先輩は寧々さんに指示を出す役割をしているんですね?」
貴人は寧々に指示を出した海に問う。
「まあ……僕は無属性のディーヴァしか使えない欠陥品だからね。Bクラスにいれている事が不思議なくらいさ。指揮をとることしか出来ないんだよ……」
「自分でそんな事言うんじゃねえよ海!お前はお前にしか出来ない事をしてるんだ!」
自虐する海をフォローする寧々。
「寧々……そうだね、僕が誘ったくせにこんな事を言ってちゃ駄目だよね……」
「分かればいいんだ。行くぞ海!私に指示を出してくれ!」
了解、といつも通りになった海が言う。二人の話が終わったところで貴人達が動き出す。
「そろそろこっちから行きますよ!」
「氷雨!」
貴人は寧々に接近し、悠奈は両手で海と寧々に氷の弾丸を放つ。
「海!」
「僕は大丈夫!寧々は千凪君の対処を!」
気にするな、と言う海の言葉を信じたらしく寧々は貴人の接近に備えた。
「行くぞ寧々さん!」
貴人は寧々の胴体を目掛けて無属性のディーヴァを纏ったまま左ストレートを放つ。
「だから寧々って呼ぶな!」
そう叫びながら寧々は貴人の拳を右手で流しながら左手で貴人の頭にカウンターを入れようとする。
貴人の接近が思ったより早く、炎を纏う時間が失われた寧々も貴人と同じ無属性のディーヴァを纏ったままだ。
「おっと」
その寧々の拳に対して頭を右に向けて紙一重で回避する貴人。
貴人はそのまましゃがみこみ、寧々の足元をはらう。
「くっ!」
「今だ!悠奈!」
「分かった!氷柱!」
バランスが崩れた寧々はすこしふらつく。
貴人はすぐにその場を離れる。
その瞬間を狙って悠奈が寧々の頭上に広げておいたディーヴァを針のような氷に変化させ寧々へ降り注がせる。
体勢を崩した寧々は動けない。
マギを行使する時間も余裕もない。
このままいけば戦闘不能になる。
しかしーー
「寧々!」
氷の弾丸を凌いだ海が寧々を庇いながら倒れこんだ。
「いってー……おい海大丈夫か!?」
寧々が自分を庇った海を心配する。
「大丈夫だよ……大分ディーヴァを消費しちゃったけどね……」
背中に少しの傷は負っただけだから、と海は軽く微笑み寧々を安心させようとしている。
「寧々。やっぱりあの二人には本気を出さないと勝てそうにないよ……」
「そうだな……今日は楽しいから全力で行っても良いぜぇ。……これ以上海に痛い目をさせたくないしな……」
ボソッと言う寧々。
「ん?なんか言ったかい?」
「い、言ってねーよ!ほらさっさと行くぞ!私達の全力を見せてやろうぜ!」
「そうだね!全力で行こう!」
聞き逃した海が再度聞くが怒られる。
何て言っていたのか少し気になる海だったが全力をだそうとする寧々の言葉を聞いて再度気を引き締めたようだ。
その二人を見てた貴人と悠奈はなんだか居心地が悪くなる。
「なんか俺達どう見ても敵役だよな……なんであの二人はあんなに青春してるんだ?」
「そんな所で惚気られても困るよね……」
この二人の言葉を聞いて観客席の声が一つになった。
「「お前らが言うな!!!!!!」」