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統べる者  作者: 八坂カロン
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第一章ー9

貴人と津々良が術式を組み上げようと決めた日から数日が経った。

津々良と未来の指導は順調に進んでいた。


「なあ悠奈」


予選トーナメントの三日前の朝、貴人は悠奈といつも通り登校している。


「未来はどんな調子だ?」

「すごいよ……どんどん力をつけてきてる」

「そうだよな、津々良も術式を組み上げたし」

「津々良ちゃんは本当に物覚えいいよね」

「未来に至っては最初から術式を展開できたんだろ?これは確実に勝ち進んでくるな」

「そうだね」


貴人の意見に賛同する悠奈。

ここ数日二人のスペックの高さに貴人は驚かされてばかりだった。

津々良は一つの術式をこの短い期間で組み上げた。

一般的なウィザードが術式を組み上げようと思うと簡単なマギでも一ヶ月かかる。

それを津々良は十日足らずで組み上げたのだ。

未来に関しては悠奈が初めて指導した時から術式を展開できたそうだ。

二人がハイスペックであるのは言うまでもない。


「何が足手まといになるから、だよ。津々良一人だけでも勝ち進めるじゃないか……」

「会長の勧誘も体力が持たないからって断ってたよね……」


貴人と悠奈は同時に溜息をつく。

まさかここまで成長著しいとは思っていなかったのが理由だ。

悠奈も同じ理由だろう。


「最近では俺の事師匠って読んでくるんだ……嫌味に聞こえる時があるよ……」

「はは……よく聞こえてるよ」

「本当に自分達で壁を作ったしまったな」

「でも戦い甲斐があっていいじゃない」

「そうなんだけどな」


などとぶつぶつ呟きながら二人は校門に辿り着いた。


ーーーー


教室に入ると愛斗がやって来る。


「よー、お二人さん」

「なんだよ愛斗……最近機嫌良いじゃないか」


やたらとご機嫌な愛斗。

それもここ最近ずっとこの調子である。


「これも氷上のおかげだな」

「え?私?」


悠奈本人にも心当たりが無いらしく首を傾げる。


「水月さんに指導してるんだろ?おかげでウチのチームはめちゃくちゃ強くなってるぜ。昨日術式を展開された時はびびったけどな」

「あぁなるほど」


合点がいく貴人。

どうやら昨日未来は生徒会チームで術式を展開したらしい。

実際は悠奈が教えるまでも無く出来ていたのだが。

しかし徐々に未来が力をつけてきているのは事実である。

最近愛斗の機嫌がいいのはこれが理由らしい。


「お前はどうなんだよ?ちゃんと両腕にディーヴァを纏う練習してるのか?」

「当たり前だろ?最近では少しの間だけなら両腕に纏えるようになったんだぜ?」

「そうなのか?すごいじゃないか」


愛斗も着実に成長してるらしい。

やはり愛斗は優秀だ。

津々良達が例外なだけで。


「お前に一発当てられる日も近いな」


鼻高々に言う愛斗。


「そうだな。ちなみに俺の弟子はもう俺に一日の練習ごとに一発ずつ当ててるけどな」

「まじかよ!?あの貴人の事を師匠師匠って言ってるあの子が!?まじかよ……」


貴人の言葉を聞いて驚きを隠せない様子の愛斗。

自分はまだ一発も当てられていないのに、そんな思いが愛斗の胸に巡っているのだろう。


「よし!これからもっと特訓するぜ!その子に負けないようにしないとな!」

「相変わらず熱血だな……」

「見た目とのギャップが激しいね……」


二人でやる気に満ちている愛斗を見る。

本当に熱心な奴だ。


「と言うことで今から俺は特訓に行って来るぜ!カエデちゃんによろしく言っといてく……ださらなくて……結構ですよ……千凪君……」


突然歯切れが悪くなる愛斗。

どうしたのか貴人が聴こうとすると


「何をカエデちゃんによろしく言っといて、なんだ?宮永君。今そのカエデちゃんが目の前にいるから直接言ったらどうだ?」


愛斗の後ろで楓の声がする。

どうやら愛斗には楓センサーが備わっているらしい。

見つかってから鳴るので意味はないのだが。


「ソンナコトイッテオリマセンヨ?」

「ほー。私の聞き間違いとでも言うのか?千凪、こいつはなんて言っていた?」


しらばっくれる愛斗ではなく貴人に質問を振る楓。

愛斗が貴人に必死で誤魔化してくれと目で訴えているが、それ以上に貴人は正直に答えるに決まってるよな、みたいな目で自分を見つめて来る楓の顔しか目に映らない。

顔が強張っているのが分かる。

もちろん恐怖からである。


「イェッサー!宮永君は先ほどカエデちゃんの授業は退屈だから自分で特訓してくると言っていました!」

「ちょっとだけリアルな感じで盛られてる!?」

「ほう……いい度胸だな宮永。説教・・してやる。少し来い」


この後の授業で愛斗はろくにシャーペンを持てていなかった。


ーーーー


放課後第三会議室に貴人、悠奈、津々良、未来の四人が集まる。

いつもここで一回集まってからグラウンドに行くのだ。


「今思ったんだけど会長とかってチーム戦以外にでるのか?」


ふと貴人が口にする。


「確か会長と副会長は個人戦で会計の人はタッグ戦に出るそうですよ」


津々良が答える。

愛斗はチーム戦のみの出場である。


「ふーん。てことは愛斗以外の生徒会メンバーと当たる可能性があるのか……」

「会長って去年も個人戦の予選トーナメントに出て決勝まで行ったって言ってたね」


悠奈が思い出したように呟く。

決勝で前生徒会長とあたり惜敗したらしい。


「か、会長は強いです……」


生徒会チームの練習で香のマギを直接見ている未来が言う。

前会長は相当強かったのだろう。


「とりあえずこの予選で優勝しないといけないから頑張らないとな」


貴人にみんなが賛同する。


「それじゃあ今から三日後の予選トーナメントに向けて練習を始めるか!」


四人が部屋から出て行く。

そうして予選トーナメントの当日を迎えた。

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