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職場の地味OLが、幼馴染みの俺にだけ距離ゼロで甘えてくる件【ネオページ 現代恋愛 新作人気6位(2/14時点)】  作者: マルゲリータ鈴木


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3/5

飲み屋で愚痴る、幼馴染み

 無事に資料の作成を終えた俺たちは、職場から少し離れた個室の居酒屋に来ていた。


「かー、生き返る~」

 

「おっさんがビール飲むみたいな顔してるが、それカクテルだぞ?」

 

「いいじゃ~ん。ビール飲んでる人って、なんかすっごく美味しそうに飲むから真似したいの!」

 

「じゃあビール飲めばいいだろ」


 その瞬間、麗佳の顔は盛大に歪んだ。

 目は細まり、鼻はくしゃりと潰れ、口が半端に開く。

 女性が公の場で普通はしたがらない、心底嫌そうな表情だ。


「苦くてまずいからやだ。どうせ同じように酔えるなら、ジュースみたいなのがいい」

 

「はいはい、お好きにどーぞ」


 そう言って俺はビールを喉へ一気に流し込む。


「かー。そもそもビールは味わうもんじゃねーよ。喉ごしって言うだろ? 喉から流し込むんだよ」

 

「ふーん。ちょっとちょうだい」

 

「ほれ」


 ジョッキを渡すと、麗佳は躊躇なく口を付けた。


 ……たく、こっちの気も知らないで。

 さっきの顔といい、俺の口を付けたものを平気で飲むといい、全然男として見てねーよな、こいつ。


「うげー。やっぱ苦い」

 

 麗佳は舌を出して、ぺっぺっとやる。

 

「やっぱおかしいよ、こんなのが美味しいだなんて」


 口直しとばかりに、運ばれてきた唐揚げを一口でいこうとする。


「あ、バカ! そんな一度に口に入れたら――」


 制止むなしく、大きく開いた口に熱々の唐揚げが放り込まれた。


「ん、んんーー!!」


 両手で口を押さえて、うつむく。


「あーあ、慌てて食うから」


 麗佳は猫舌だ。出来たての揚げ物を丸ごと突っ込めば、そりゃ火傷する。


「いたい……ヒリヒリする」

 涙目で、手をぱたぱたと口元に送っている。


「ったく、大丈夫か。ほら、これ飲んで冷やせ」

 

「うー、ありが……って、ビールじゃんこれ!」


「おっと、バレたか」


 全然男として見られていない腹いせをしようとしたが、流石にか。


 まだ潤んだ瞳で、抗議の視線が刺さる。


「そもそも、浩一は私の扱いをもっと丁寧にするべきだよ!」

 

「な、なんだ急に」

 

「今日のこともそう! 私が仕事押し付けられて憤慨してたのに、あろうことか笑いましたよね、あなた?」


 先輩社員に資料のまとめを頼まれた時のことらしい。


「だから悪いと思って手伝っただろ?」

 

「そうだけど! 私のこと、男友達みたいに思ってませんかね?」


 ずいっと身を乗り出して詰め寄ってくる。


 麗佳はメイクこそ職場のままだが、伊達メガネを外し、髪をほどいている。

 ピシッと閉めていた一番上のボタンも今は一つ外れて、胸元がゆるい。


 そんな状態で近づかれたら――そりゃ、男として困る。


「お、おい。料理も飲み物もあるんだからやめろ」

 

 思わず視線が一瞬下へ落ちてしまう。男のさがか、職場とのギャップがそうさせるのか、自分でもわからなかった。


「ん? ほほーん」


 動揺と視線に気づいた麗佳が、にやーっと笑いながら座り直す。


「なーんだ。ちゃんと私のこと女として見てるのか~。ふーん、浩一が私をね~」


 まだ一杯程度のはずなのに、頬が少し紅い。嬉しそうに呟くな。


「うるせぇ……脂肪ばっか胸につけやがって。家事スキルでも身につけろよ」

 

 顔が熱い。きっと真っ赤なんだろうな。

 軽口で逃げようとしたが、麗佳は余裕の態度で返してくる。


「そんな脂肪の塊に興奮したのは誰かな~」


 そう言いながら、自分の胸を下から持ち上げるようにして、わざとらしく見せつけてくる。


「おい、やめろ。はしたない」

 

「そんなこと言って~。機嫌すっごくいいから、今なら少しだけ触らせてやろうかー?」


 ……はぁ?

 今、触らせて“やる”って言ったか?


 そんなの――触りたいに決まってる。

 ……って、何考えてんだ俺。


 俺はビールを一気に飲み干し、ジョッキをテーブルにダン! と置いた。


「触らねーよ。お前のことは大切に思ってる。その場の気分やノリで傷つけるようなことは、絶対にしねーよ」


 視線を逸らしながらも、腹の底からの本音だった。


 ……のに。


 返事がない。


 妙に長い沈黙が、じわじわ恥ずかしくなって、恐る恐る麗佳を見る。


「おい、なんか言――」


 言いかけて、言葉が詰まった。


 麗佳が口を半開きにしたまま、耳まで真っ赤にして固まっていた。


「お、おい! 大丈夫か!? そんなに飲んだか、お前?」

 

 水頼むか? いや、落ち着かせるのが先か? くそ、こういう時どうすりゃいい。


「い、いや! だ、大丈夫! 大丈夫だから!」


 麗佳ははっとしたようにわたわたしながら、両手をぶんぶん振る。


「そ、そうか……それならいいんだが」

 

「そ、そんなことより飲もう! もっと愚痴りたいことがございますのよ!」


 語尾が変になってる。変なやつ。

 でも大丈夫そうな麗佳を見て落ち着きを取り戻す。

 

 俺はグラスを取り直して、咳払いした。


「……はいはい。聞いてやるよ」

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