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『けろへもアニメ』~へのへのもへじとケロ子のこの世で一番くだらない会話~  作者: 阿行空


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1/3

「究極の二択」


放課後の駄菓子屋の前には、いつも通りのベンチがある。

いつも通り、そこにいるのも、二人。


ベンチの左側に、顔に白い紙を貼った男子高生。紙には、太いペンで「へのへのもへじ」。

もへじは、今日も自分が何者か分からない顔をしている。


右側には、赤縁メガネにカエルのヘアピンの女子高生。ケロ子。

手元の漫画に目を落としたまま、ページをめくる音だけが淡々と響く。


その漫画は、もへじのだ。

ケロ子は家に漫画がない。買ってもらえない。だから放課後、もへじが持ってきて、ここで読んで、ここで返す。

ルールは一応、厳密だ。


もへじは、ラムネの瓶を振りながら言った。


「なあ、二択の質問していい?」


「いやや」


「……」


「……」


もへじは瓶の中のビー玉を見つめた。

ビー玉は、何も答えない。


「ok、じゃあ質問を変えよう。カレー味のうんこか、うんこ味のカレー。どっち食べる?」


ケロ子はページをめくったまま、目だけ上げた。


「どさくさに紛れて二択の質問してるやん」


「こんな簡単な質問断られる思わんかったからな」


「長くなりそうやもん」


「ならへんよ。どっちなん?」


「条件による」


もへじの紙の顔が、少しだけこちらを向く。

描かれた「へのへの」が、若干ムッとして見えるのは気のせいじゃない。


「なんやねん条件って」


「その“うんこ味のカレー”は、どう再現するん?」


「そりゃうんこ味になるように色々入れるやろ」


「なんで出題者が曖昧やねん。入れるもんによってはカレーじゃなくて、ただのうんこになってるかもしれへんやん」


「うんこ入れへんよ。カレーにいろいろ足してうんこっぽくするだけや」


「じゃあ匂いはどうなるん? うんこ味でうんこの匂いなん?」


「味をうんこにするだけで、匂いはカレーのままや」


ケロ子は漫画を閉じずに、口だけ動かす。


「味うんこにしたら匂いもうんこになるやろ。匂いも味のうちや」


「うるさいな……。わかった。じゃあ味うんこ。匂いもうんこや」


「それはもううんこやん」


「うんこちゃうって。作り方はカレーなんやって」


「なんやねん、“作り方カレー”って」


もへじは、急に料理番組のテンションになった。


「まず野菜切るやん?」


「うん」


「肉入れて水入れて」


「うん」


「うんこ味のカレールー入れるやん」


「うんこ味のカレールーはもううんこやねんって」


「じゃあもう、カレー味のうんこ食べんねんな?」


「そういうわけじゃない」


「なんなんもう」


ケロ子は小さくため息をついて、漫画を一ページだけ戻して読み直した。

もへじの話が原因で内容が頭に入ってこない、と言わんばかりの動き。


「カレー味のうんこはどう作るん?」


「うんこは作らんやろ。出すねん」


「絶対食べたないわ」


「でも味はカレーやで?」


「じゃあもう、それ目瞑って食べるわ」


「アカン」


「なんでアカンねん」


もへじは、急に条件を盛り出すタイプの悪い神になった。


「盛り付けから見て。ちゃんとうんこ座りで待機してもらうから」


「だれやねんそいつ。勝手にセットポジションとるなよ」


「重要ポジションやで。演者や。カレーうんこ役がおらんと成立せえへん」


「そもそも、なんで直入れ前提やねん。容器に移しとけや」


「直入れが臨場感あるやろ」


「必要ないやろ臨場感」


もへじは、なぜか勝ち誇ったように言った。


「ちゃんとレバー下ろしたら出るようにする」


「バイキングのソフトクリームか」


「ほんま文句ばっかりやな」


「当たり前やろ。そもそもなんでどっちか食べなあかんねん」


もへじは、急に真面目なへのへのになった。


「そりゃ、なんか食べへんかったら死ぬとか言うデスゲーム的状況や」


「ないわ!そんな状況」


ちょうどその瞬間、駄菓子屋の引き戸がガラッと鳴って、店のおじいちゃんが顔を出した。


「今日も仲ええなぁ」


「じっちゃんセットポジションとって?」


「じっちゃんからは”そのもの”しか出んやろ!」


「お前、駄菓子屋歴60年なめんなよ!」


「舐めるもくそも、駄菓子屋歴全く関係ないやん!」


「まだ駄菓子屋歴は2年やでぇ」


おっちゃんは満足そうに頷き、引き戸を閉めた。


ケロ子は呆れたようには話を戻す。


「その状況やったらもうどっちでもええわ。 食べて、はよ解放される」


もへじは即座に返す。


「解放されへんよ」


「なんでやねん」


もへじは目を輝かせた。


「さらに究極の二択が迫られんねん」


「どんな質問なん」


ケロ子は漫画を閉じて、もへじの顔を見た。




「二択の質問していいかどうか」


「ええ加減にせぇ」








あとがき


ここまで読んでくれてありがとう。


どこか一瞬でも「アホやな」って笑ってもらえたら

高評価とブックマーク、ついでにしていってください。次の話のやる気が増えます。


ではまた次回、駄菓子屋の前で。

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