バッドフライエフェクト
仕事でボロカス言われた。資料作りが遅いだの身嗜みがなってないだの。そもそも、何の仕事をしてるかわからないとも言われたSEの俺。
気分が悪い。こんな日は、近くの定食屋でガッツリ食って回復しよう。
「カツ煮定食ご飯大盛りで」
「すみません、大盛りはやってないんです!」
「お代わりも?」
「はい、ございません!」
申し訳なさそうに頭を下げる店員にイラッとしながらも、大人な対応をする。周囲を見た。顔面に入れ墨のある強面の若者が居る。目があった。
咄嗟に目線をそらしたが、しばらくガン見されてとても怖い思いをした。ああいうのに絡まれると最悪殴られるからな。
彼らは俺を見て盛大に笑った。
(馬鹿にされてる……?)
そう思って気分が悪くなった。運ばれてきたカツ煮定食の味も、正直憶えていない。食後の珈琲を飲んでいるときに催したから、御手洗いに駆け込んだ。
……俺は重大なことに気づいた。
ズボンのチャックが全開だったのだ。
(なんてことだ。会社では誰も指摘しなかったじゃないか!)
じゃあ俺はずっと、社会の窓を開けたまま顧客や上司に怒られて、真面目に頭を下げていたというのか。あの入れ墨の奴等も、俺の社会の窓が開いてることに笑っていたのか!?
俺は、慌てて社会の窓を閉めようとした。その瞬間、
「いだだだだだっ!!!!」
大事なところを挟んでしまい、意識が遠のきそうになった。くそ、今日はツイていない。まるで動くほどに悪いことが連鎖して起こる、『不幸の蝶連鎖(言い換えるならバッドフライエフェクト)』ではないか!
オフィスに戻り、作業をしていると、後輩が盆に湯呑みを乗せてやってくる。
「先輩、お茶でもどうぞ……あ!」
後輩は足元のコードに引っかかり、俺のパソコンに茶をぶちまけ、作業中の全データを消した。会社はたちまちパニックになった。バックアップ作業をしながら思う。
(ダメな日は、何をやってもダメだ。諦めろ。その度に怒ってたら血管が切れるからな)
復元データが出来た頃には充血した目と、偏った食事で顔がパンパンに浮腫んでいた。従業員は何事もなかったのように業務を再開するが、俺が居なくなれば会社は簡単に傾くからな。
その気になれば他会社へ行こうとも思っている。
その時は、会社側がバッドフライエフェクトを味わうことになる。覚悟してろよ。こん畜生!
おしまい
最後まで読んでくれてありがとうございます!




