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完全無欠の第三王女は最強剣士を射止めたい  作者: 斉藤りた


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エピローグ

じりじりと照り付ける日差しが肌を焼き、かいたそばから汗が蒸発する。

炎の巨神の生まれ故郷と呼ばれる太陽が、まるでステーキを焼くように人々に熱を落とす。

春の女神は夏の気配を感じて逃げ去り、夏の陽気と容赦ない熱気が人々の身体を火照らせている。


王都に大量の魔物が出現する事件から約四か月。

今日もルクレイン王国第一魔法騎士団の訓練場では剣の音が鳴り響いている。


キィン・・・キィン・・・キィン・・・


「アダムス!」


団員達の指導をしているアダムスを呼び、真っ直ぐに向かってくる声。

この場において第一魔法騎士団団長の名を呼び捨てに出来る女性など一人しかいない。


「おう、イヴェリンどっか行ってたのか?」


「もう!昨日取りに来てって言ったのに来なかったから、昼休みに取りに行ってたのよ!はい、注文してたミスリルの剣よ。」


そう言って、真新しい剣を鞘ごと手渡す。

前回渡されたものとほぼ同じデザインで、念話石と名付けられた石は今回も同じ場所にはめ込まれている。


「ほら、私のも新調してきたの。鞘と柄、アダムスのとお揃いのデザインにしちゃった!」


キャッキャッと嬉しそうに自分の剣を見せるイヴェリン。

両腕で剣を持って浮き足立つ姿は、暴力的なほど愛くるしい。


「お、ホントだな~。ウチの役職付きの剣はこのデザインにするか。オリヴァンとかカリナとか。」


イヴェリンの言葉の意味が全く通じてないアダムスにドン引きしているのは、先の事件でデスウッドと戦っていたニコラスだ。

アダムスに稽古をつけてもらっていたので、汗だくで息が上がっている。


「やめてくださいよぉ~、俺まだドラゴンに焼かれたくないっすよ~。」


一緒に指導していたオリヴァンが剣を肩に乗せて一旦休憩、と他の団員達に声をかけた。

ドラゴンに焼かれる、とは正式には「人の恋路に首を突っ込めばドラゴンに焼かれる」ということわざである。


「なんでドラゴンに焼かれるんだ?」


「も~!副団長は、だんちょーとお揃いの物を持っていたいって事です!乙女心でしょ?!イヴェリン様も自分で言ってくださいよ!」


「うむ、オリヴァンご苦労。」


「カリナも!俺に説明させないでよ~身体が痒くなるぅ~。」


いつの間にか近くに来ていたカリナが、腕組をしてふんぞり返っている。

やっと意味を理解したアダムスが、ソワソワしながら口を開いた。


「む・・・そ、そうか・・・。まあ、別に構わんが・・・。そっ、それより、剣の代金はいくらだった?今日の帰りに支払いに行けばいいか?」


「いいわよ、代金なんて!ミスリルが安く沢山仕入れられたし、今後のルートも独自に確保したから、うちの商会でいっぱい作れるようになったの。だから剣くらいタダでいいわっ!」


お揃いの許可をもらったイヴェリンが、自身の剣を抱きしめたままニコニコの顔の前で手を振っている。


「いや、ちゃんと代金は支払うが・・・そういえば、前ミスリルがどうのって言ってたな。」


斜め上を見るようにして少し考えるアダムス。

しばらくして、イヴェリンに問いかけた。


「・・・ちなみに、このお揃いの剣に使われてるミスリルはどこ産だ?」


「お揃いの剣だなんて、アダムスってば!うふふ、この剣はぁ、クロイツェル伯爵領の・・・あっ。」


思わず自分の口を押さえるイヴェリン。

だが、時すでに遅し。

団長と副官ズの耳にはちゃんと聞こえていたようで、六つの瞳はイヴェリンを真っすぐに見ている。


「・・・サビーナ様に交換条件を出したって言ってたの、アタシも覚えてます。」


「ミスリルの話をしたのは確か北の森の遠征の前だったから、あの時にはもう算段を付けてたってわけか・・・。」


「うわ~イヴェリン様ってば職権乱用ぉ~や~らし~!」


三者三様の責め方をされ、誰に言い訳をするかとイヴェリンの目がキョロキョロと泳いでいる。


「べ、別に、そんな、大した量じゃなくって・・・。」


「カリナ、オリヴァン、今度お前達の剣も新調してもらえ。もちろんイヴェリンの奢りで、同じデザインでな。」


「「はぁ~い!」」


涙目でアダムスの腕に手をかけ首を振るイヴェリンに、白い歯を見せて笑うアダムス。

二人の関係は、季節と共に少しずつ変わってきているようだ。


だが、次の季節が来る前に、お呼びでないトラブルはすぐそこまで迫って来ていた。








「フェルザード様、失礼いたします。あと数日でルクレイン王国の首都、グランセリアが見えてまいります。到着後も予定通りでよろしかったでしょうか?」


入り口にかかったカーテンを捲り、一人の男が馬車の中に向かって声をかけた。

一目でわかる、平民のそれとはまったく違う作りの豪華な馬車。

異国情緒を漂わせた刺繍の幌に、金の縁取りが施されている。

馬車の周りでは上半身裸の屈強な男たちが、刺青の入った身体を見せつけるように馬車と並んで歩いている。


「ああ、一度決めた事を変えるつもりはない。向こうは断れる立場ではないからな。帰る時は王女も一緒だ。」


片膝を立てて座るフェルザード様と呼ばれた褐色の肌の男が、自身に満ち溢れた顔で答えた。

ここまでお読みいただきありがとうございました!

「完全無欠の第三王女」は今の所、三作のシリーズものになる予定です。

すぐ続編に取りかかりますので、よろしければフォローなどお願いします!

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