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完全無欠の第三王女は最強剣士を射止めたい  作者: 斉藤りた


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22/33

21.イヴェリン異変とオリヴァンの嗜虐趣味

同時刻。


大噴水広場の前ではキリルが防御魔法のドームの中で「うわぁ~」と子供のような声を出している。

ドームの外では吹雪が竜巻のように渦を巻き、風の中に混ざった鋭い氷の矢じりがキラキラと反射する。

風に飛ばされたゴブリンが氷の矢に全身を貫かれ、風に耐えたコボルトはその場で氷の散弾を受け止め、オークは突き刺さる氷が集まりやがて自身が氷の塊と化していく。


「デタラメな魔法だなあ・・・イヴェリン様~!民家に被害は出さないで下さいね~!」


「言われなくてもわかってるわよ!」


台風の目となったイヴェリンは凍り付いた大噴水の上に立ち、周囲の店に氷が飛んでいかないよう微調整している。

広場にいた魔物が全て凍り付き動かなくなると、徐々に風が穏やかになり、クリアな視界が広がった。

キリルが防御魔法を解除し立ち上がると、凍り付いた魔物にとどめを刺して回る。


「これもし生きてて氷が溶けたら、また動き出すんですかね?」


「どうかしら?そこのモルグレム辺りは生きてそうだけど。」


「え?・・・うわっ!ホントだ、Sランクじゃないですか!」


モルグレムとは、複数の死んだ魔物の魔核が融合し地中の泥や鉱物を吸い上げ、人型となった魔物である。

全身は粘土質の泥に覆われ、内部に黒鉄や魔鉱石が混じった肉体を持つ。

どこを切っても再生し、体内の鉱石類を避けて結合した魔核を完全に破壊しないと倒せない非常に面倒な魔物だ。

Sランクとしては珍しく魔法を使えず動きも鈍重だが、攻撃の際に魔力を帯びた泥と飛び散らせ、触れた物を巻き込みながら再生しそのまま吸収してしまう。

バルーンスライムと違い魔核の位置が把握出来ないので、水魔法の得意な者が数日間交代で魔核が露出するまで強力な水を浴びせ続けるしか討伐方法は確立されてない。


「これ、どうします?このままじゃまたすぐ溶けちゃいますよ。」


「あとでもっかい凍らせとくわ。ひと段落したら国家魔法師を全員呼び出して面倒な後始末を押し付けるわよ。何も働いてないんだから、使ってやらなきゃ!」


僕たちはこういう時に働くのがお仕事だからですよ~最前線で戦うのは国家魔法師のお仕事じゃないですよ~とは思っても口にしない賢いキリルである。

しばらく魔物の様子を確認していたが、ひと段落したのかグーン、と背伸びをする。


「あ~あ、仕方ないとはいえもったいないなぁ~これだけ居ればかなりの金額になったのに・・・。オークなんてどの部位もボロボロですよ。」


「アンタ段々所帯じみて来たわね・・・。そんなんじゃ結婚出来ないわよ。」


フン、と鼻で笑ったイヴェリンに少しムカついたのか、珍しくキリルが言い返す。


「結婚出来ないのなんて、不毛な片思いしてるイヴェリン様も一緒じゃないですか。」


あ、と思うと同時にイヴェリンの顔を見るのが恐ろしくなり慌てて背を向ける。

ヤバい、怒ったかもしれない・・・!と戦々恐々としながら耳を澄ましていると、背後でカチャン、と金属音がした。


「大丈夫さ、こんな女でも俺が貰ってやるからな。」


聞き覚えのない声だ・・・と思った瞬間、後頭部に強い衝撃を受け、振り向くことなく視界が暗転していった。







その頃王城では、バルーンスライムのお花畑の中をアダムスとオリヴァンが風船割りを続けながら進んでいる。


「俺には何も見えないんだが・・・」


アダムスが背中合わせのオリヴァンに小声で尋ねた。

気付かれないように出窓の近くに視線を飛ばすが、人が居るようには見えない。


「オレも魔力を目に集中させててやっと一瞬あの辺が歪んだのが見えたくらいなんで・・・ただ、確実に居ます。」


オリヴァンがそう言うならそうなのだろう。

信用している副官の言葉だ。疑う余地などない。

少しずつ距離を詰めると、確かに何かうっすらと気配を感じてきた。

そのままバルーンスライムを割りながら自然に出窓に近付いて行き、大きく振りかぶって拳を出す。


「グボェッ!!」


明らかな手ごたえの後、何もなかった空間から汚い音と吐瀉物を撒き散らす男が現れた。

光沢のある灰色のローブを羽織っているが、アダムスの拳に引っかかったのか端が破けている。


「ゲボッ、グボッ、ゲホッ・・・あ、アダムス・オルド・・・き、貴様、平民の癖に・・・」


「お、お前は・・・誰だ?」


ガクッとコケたオリヴァンの剣がバルーンスライムの魔核を外し、また四つに分裂してしまった。


「あっ!も~また!だんちょー、何で知ってる風のリアクション取るんすか!」


「いや、名前呼ばれたから知り合いかと思ったんだが・・・こんな奴知らんな。」


ゲボゲボと咳き込み続ける灰色ローブの男を見ながら手近なバルーンスライムを割っていると、背後から大声が聞こえて来た。


「あっ!お前、ニオルダン・フェルゼか?!」


カーテンをロングスカートのように腰に巻いた第二魔法騎士団長のテオバルトが後ろから追いかけて来た。

だがカーテンのせいで足が大きく開けないのか、小さい歩幅で足を小刻みに動かしながら歩いているので、その歩みは遅い。


「・・・誰?」


オリヴァンが分裂させたバルーンスライムを割りながら怪訝な顔をする。


「伯爵家のニオルダン・フェルゼだ。いや、元伯爵家だな。少女の誘拐と違法奴隷化と売買の罪で捕縛令が出たんだが、もう国外へ逃亡した後で取り逃がしたんだ。その後伯爵家は爵位を剝奪されたんだが・・・お前、こんなところで何を・・・。」


「何が罪だ!俺は貴族だぞ!何もかもあのクソ王女のせいだ!ゲボッ・・・」


解説を必要としたアダムスとオリヴァンがテオバルトを無言で見つめる。


「あ~・・・イヴェリン様が入団した後にこいつがイヴェリン様に余計な事をやったか言ったかって噂でな。そのすぐ後に中央新聞の一面にこいつの事が載ったんだ。」


「ああ、つまりイヴェリンへの逆恨みか。」


「ふっ、ふざけるな!貴族の俺が平民に何をしようと罪になるはずがないだろ!貴族なんだぞ!」


「・・・貴族が特権を与えられているのは、平民を自由にしていいからじゃない。平民を法の下に正しく導き国の為に生かし守るためだ。お前が貴族だろうと王族だろうと、違法行為である以上罪は罪だ。」


テオバルトがキッパリと言い切る。その瞳には、第二魔法騎士団長としての誇りが浮かんでいる。


「え~意外~ん!第二団長ってば意外と良い事言うじゃ~ん?」


「・・・おい、第一団長。お前のとこの副官はどうにかならんのか?」


オリヴァンの絡みにうんざりした様子のテオバルトだが、アダムスが返事をするよりも早くオリヴァンが口を開く。


「これでスカートじゃなかったらもっとカッコよかったのにな~。」


「んなっ!こっ、これは仕方ないだろう!紳士たるもの、あのような格好で」


「それで、このニオルダン氏はここで何をしていたんだ?」


不毛なやり取りを中断させてアダムスが問いかけた。

だがニオルダンはハンッと馬鹿にしたように笑うと、ガクガクと震える膝に手を置き立ち上がり、腰に付けた鞄に手をかけた。


「貴様のような平民に答える筋合いはない。俺には大義があるんだ。悪いが、お前たちに構ってる暇など・・・。」


サクッ


話している間もバルーンスライムを割り続けていたオリヴァンが、ニオルダンの膝目掛けてまっすぐに細剣を刺した。


「へ・・・?あ・・・う、うわ、うわああああああ!!」


ニオルダンの絶叫が王城の廊下に響き渡る。

オリヴァンが膝を抱えるニオルダンのベルトを切ると、鞄を剣先に引っ掛けて取り上げた。


「やだなあ。こんな所で隠れてた奴なんて逃がすわけないじゃん。君はこれから俺と楽しくお話だよ~。」


ふとテオバルトが周囲を見渡すと、いつの間にか廊下からほとんどのバルーンスライムが居なくなっている。


「いつの間に・・・」


残ったバルーンスライムも、空いた窓から空へと飛んで行っているようだ。

元々細い目を完全な糸目にしたオリヴァンが、嬉しそうにニオルダンに迫って行く。


「だんちょー、こいつなら良いっすよね?」


「あ~・・・まぁ、お前に任せる。だがやり過ぎるなよ?俺は陛下の元に行くから、ある程度聞き出したらお前も追いかけて来い。」


そう言い残し、廊下の先へと駆けだすアダムス。

テオバルトも追いかけて陛下の元へと駆け付けるか一瞬悩んだが、下半身のカーテンを見てその場にとどまる事を決めたようだ。


「は~い!んふふ。堂々と人を傷つけられるなんて、ホンット入団して良かったなぁ!一応回復魔法も使えるし、死なせないから安心してね!」


鞄からどう使うのかわからないような小さな武器を手に取るオリヴァンを見て、拷問されるとやっと気が付いたニオルダンが片手を広げて叫んだ。


「お、おい!貴様も貴族なんだろうっ?!今ならこの怪我の事も許してやる!共にあの生意気な平民や無能な王女を降してやるんだ!」


「・・・へ~え?どうやって?どう見ても勝てる状況じゃなくない?」


「す、全ての準備はもう終わっている!俺たちの優秀さが分からない国など必要ないからな。次の王族も用意してるし、この国は一度生まれ変わるんだ。そこの末席に、お前の席も準備してやろうじゃないか。」


ふへ、ふへへと震えながら喋り続ける目を見る限り、嘘は言ってなさそうだ。

テオバルトが放っておけば何でも喋りそうだな、と考えながらオリヴァンを見て、ビクッとする。


「ん~いいかな。何を準備したのか知らないけど、ウチの団長が負ける訳ないからさ。あと、あんまり喋らないでよ。俺が喋らせる楽しみが減っちゃうでしょ?」


「あ・・・や、やめ、やめろ・・・やめて、や、やめてくださいぃぃぃぃ!」


見た事がないほどにんまりと笑いながらニオルダンに近付いて行くオリヴァンを見て、テオバルトは心の中で神に見て見ぬふりをする許しを乞うのだった。

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