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完全無欠の第三王女は最強剣士を射止めたい  作者: 斉藤りた


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17.陛下の御前で言いたい放題

「第一魔法騎士団団長、アダムス・オルド参上いたしました。お忙しいところ、お時間をいただき感謝いたします。」


通された部屋に入り背後のドアが閉まると、アダムスが片膝を付き頭を下げた。

今回通された部屋は前回アダムスが一人で遠征からの帰還報告で登城した時と違い、王城の中では簡素なデザインの狭い部屋である。


中央に置かれた立派な装飾の椅子に座るのはイヴェリンの父でありこの国の国王陛下。

そしてその左にはアダムス達と同じく、いや、もっと派手な飾りと高価な素材が使われた鎧を着た若く大柄の男が。

陛下の右側には分厚い紺色の生地で作られたローブを纏う、長い白髭に眼鏡の初老男性が立っている。


第一魔法騎士団として正式に呼び出しを受けたわけではないのでアダムスも簡単に挨拶をしたのだが、それが気に入らなかったのか左側にいた男が口を開いた。


「無礼だぞ、第一団長。陛下の御前で略式とは・・・。平民出身とは言え、作法を学んでから入団試験を受け直された方がよろしいのでは?」


声の主である若い男は第二魔法騎士団団長だ。

アダムスが顔を上げるよりも早く、左後ろから声が飛んでいく。イヴェリンだ。


「うるさいわよ、テオバア。私がいいって言ってんだからいいのよ。」


「イヴェリン様!自分の名前はテオバルト・グラシエルです!いい加減に覚えて頂きたい!」


「あら、ごめんなさいね。私ってば優秀な頭脳を持ってるものだから、必要な事しか覚えられなくって。・・・ねえ、お父様。堅苦しい挨拶なんて後にして、さっさと用事を済ませましょ。」


「姫様!礼節こそが王権の礎。これを疎かにすれば、国の威信すら揺らぎますぞ!」


今度は右側に控えていた紺色ローブの男性が声を荒げた。

この男性はトラヴィアン・ローデル。この国の宰相であり、法政大臣も兼任している。

トラヴィアンの顔を見ると嫌そうな顔で「ちっ」と呟くイヴェリン。

人にも自分にも厳しく勤勉で生真面目、彼女の苦手とするタイプの人間である。


「ああ、良い良い。それよりも大事な事があるだろう。アダムス、先日言っていた袋とやらは調べ終わったのか?」


娘の方を見てソワソワしながら陛下が話を変える。

表情的に、久しぶりに会えて嬉しい気持ちと、何か言いだしそうで怖い気持ちの半々か。

イヴェリンが勝ち誇ったようにテオバルトの方を見てハンッ!と鼻で笑うと、笑われた方は苦虫を噛み潰したような顔をしている。


そもそも国の全てを守る第一魔法騎士団と、貴族や王族を守るためだけに存在する第二魔法騎士団は相いれない存在である。

第一魔法騎士団は全ての国民と国土を守るため日々鍛錬を欠かさず、要請があれば魔物を倒しに国中遠征し、同盟国に危機が訪れれば一般市民で構成される王国軍よりも早く駆け付け、事態を収束する。

魔の森が安全になった今、豊かで平和なルクレイン王国を守る唯一で最大の壁なのである。


対する第二魔法騎士団は名前こそ第二と付けられてはいるが、貴族と王族を守るためにだけ存在する。

簡単に言えば、貴族の子息に立派な経歴を作るための組織である。

訓練も週に数回程度、『社交界に影響が出ないよう最小限で』しか行われていない。

その為「特権階級の人間の為に平民は存在している」と考える者が多く、身分の差がなくトップが平民出身の第一騎士団は見下す存在でしかない。


だが五年前、そこに自分達より上位の存在の、守るべき王女殿下が入団してしまった。

それまではすれ違いざまに喧嘩を吹っかけどれだけ無礼に振舞おうと許されていたのに、イヴェリンが貴族を粛清してからは大っぴらに馬鹿にすることが出来なくなってしまった。

その為、顔を合わせればチクチクと嫌味を言うだけの子供のようなやり取りを繰り広げているのだ。


陛下の声に反応して口を開くよりも先に、またアダムスの頭上を声が飛び越えていく。


「お父様?この袋を調べるよう言ったのも、調べさせた中央商会のオーナーも、その結果を持ってきた部下の上司も、私なんだけど?」


「お、お、おお、そうだったな。えっと、イヴェリンや、その結果とやらを・・・」


「ツブラン!」


「へあっ!ひゃっ、はいっ!」


飛び上がったツブランが慌ててカバンの中から書類の束を取り出し、全員に配って回る。


「こ、こ、こちらが、精査した内容とその結果でありますっ!」


ツブランが全員に数枚の書類を配り終わると、イヴェリンが右手に持った小袋を軽く掲げた。


「まず、一枚目を見て頂くとわかるように、この小袋を見つけた場所と、中から出て来た魔物の種類と数が一覧にしてあります。そして二枚目の表が小袋に収納出来る容量と、実際に収納されていたであろう容量。そして、三枚目に魔力の残滓とそれを構成していた魔素の偏在率、および転移陣式の崩壊痕が記されていますわ。さらに、四枚目以降に記された魔力伝導繊維の歪曲パターンから見て、本来の術式構造が変化している事を確認しました。また、残留していた魔力波を解析したところ、氷結属性の固定術式が不安定な状態で残存しており、時間経過による封印層の位相ずれ、および熱伝導による魔力結晶の融解反応が確認されています。その結果、小袋内部で凍結保持が破綻し、封印されていた個体が再物質化したものと推定されます。以上より、この現象は外的干渉による開封ではなく、術式の劣化に伴う自動解放現象と結論づけられます。お分かりかしら?」


一息に説明を終えると、一同を見渡す。

ポカンとしている面々の後ろで、うんうんと一人頷いているツブラン。

皆の顔を見て同じことを思っているのだと察したのか、陛下が代表してイヴェリンに問いかける。


「ええと・・・つまり?」


「あ、陛下!補足いたしますと、今回確認された魔力残滓は極めて特異でして、通常の封印魔具に見られる術式干渉の残留波形とは異なり、むしろ外因的魔力の逆流反応、もしくは位相振幅の反転現象に近いものが観測されました。つまり、氷結術式そのものが解除されたのではなく、内包された魔力構造が自己崩壊を起こし、結果として凍結保持機能が論理的に崩壊した・・・というわけなのです!」


フンフンと鼻息荒く早口でまくし立てたのは、すっかり緊張が解けた様子のツブランだ。


「そ、そうか・・・。しかし、少しわかりにくいのでな。もうちょっとかみ砕いて教えてもらえないだろうか?」


「魔物を凍らせて袋に入れたら、勝手に溶けて出て来る小袋の完成って事よ。」


イヴェリンが、一言で説明を終わらせる。


「・・・初めからそう言ってくれないか?」


「あらイヤですわ。国王陛下ともあろうお方が何をおっしゃいますやら。」


どっと疲れた様子の陛下が、アダムスを見て何かアイコンタクトを取ろうとする。

おそらく「娘を大人しくさせろ」と必死で込めた念は、アダムスの分厚い筋肉に弾かれてしまって本人の首を傾けただけだった。


「あと、コレは間違いなく何かしらの目的を持った犯罪で、次に狙われてるのは王都ですわ。」


さらりと告げると、半秒まって全員が「ええっ?!」とイヴェリンを見る。

全員の視線が集まった所で、細い指をピッと顔の横で上に向けた。


「これが時限装置的な魔物出し袋であったことは今説明したでしょ。で、昨日王都で、今日は王城でもいくつか見つけたの。」


「なっ、何ですと?!」


驚く面々の中で一際大きな声を出したのは第二魔法騎士団団長のテオバルトだ。


「王城に?!何故それを先に言わないのですか?!」


「だって見つけようがないもの。北の森のと違って、ここのは隠蔽魔法がかけられてるの。見えない物をやみくもに探すより、出て来た魔物を倒す方が現実的でしょ。」


「しかし、もし今この時にも魔物が出てくるやもしれないのでしょう?!すぐに対策を講じねば、王城で働いている無力な者達も犠牲になるのですぞ?!」


次に声を荒げたのは宰相であるトラヴィアンだ。

深いシワのある顔に焦りの表情が浮かんでいる。


「だから今言ってるじゃない。今日はその相談をしに来たのよ。」


その場にいる全員が言葉を失う。イヴェリンの言っている意味を考えているのだろう。

王城はもちろん、王都で突然魔物が現れれば大変な事になるだろう。しかもその数は予想が付かない。

だが、見えない現状それを見つける手立てがなく、イヴェリンの言う通り出て来た魔物を見つけ次第倒していく他、手段は思いつかない。

すると、しばらく黙っていたカリナが口を開いた。


「・・・イヴェリン様?それ、いつ見つけたんですか?さっき、王城には年始から来てないって言ってませんでしたっけ?」


「あっ。」


全員がイヴェリンの顔を見ると、「やべっ」と小さく漏らす。


「・・・イヴェリン様ぁ~?また影を王城に入れましたね?!前に王城に忍び込ませて大騒ぎになったでしょう?!」


「いやだって実家だしさあ・・・。どうしても知りたくて・・・。」


「あっ!それ、依頼じゃなくて自分の為にしたでしょ!ダメですよ!」


カリナがプンプンと起こり、イヴェリンが小さくなる。

二人のやり取りを見た国王陛下がポツリと「今度、特別手当を出してやらにゃいかんな・・・。」と呟いた。

イヴェリンとツブランの説明は読まなくていいです。

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