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完全無欠の第三王女は最強剣士を射止めたい  作者: 斉藤りた


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13/33

12.戦闘

「こっちのが空のだったやつで、ゴブリン五匹・・・これはゴブリン三匹に初日と最終日のサラマンダーが二ひ・・・あっ!オリヴァンさん、わかんなくなるから混ぜないでくださいよ?!」


ガタゴト揺れる列を成して進む馬車の中で、普段は上官にあたるオリヴァンに指示を出しながらキリルが仕分け作業をしている。

第一魔法騎士団は北の森の遠征を終え、王都への帰路についたところだ。


五日かけて見て回った結果、森全体から大量の小袋が発見された。

ほとんどが空になっていたものの、いくつかは中で魔物が死んでいる状態の小袋もあったので一旦そのままの状態で持ち帰る事になったのだ。

だがそこで異を唱えたのが、一般団員達。


「どうせ空いてる収納袋があるんだから、それに討伐した魔物を入れて帰るべきだ!」

「せっかくあるのに使わないのはもったいない!」

「俺たちも馬車に乗せてくれ〜!」


倒した魔物をそのままにしておくと本当にダンジョンが出来てしまうので、通常の遠征では乗ってきた馬車に魔物の死体を乗せ、国から冒険者ギルドと商人ギルドへ渡される。

解体費と販売手数料、諸々の雑費を引いた額が遠征ボーナスとして団員達の手に入る仕組みだ。

だが収納魔法のかかった袋に入れてしまえば行きと同じく馬車の中にスペースを確保出来るので、歩かなくて済む!と団員達は口々にアピールしたようで・・・。


団員達の主張にも一理あり、本当に魔物を入れて持ち運べるのか確かめられると思いアダムスがそれを許可。

その為、空の袋に何匹魔物が入っているのか、発見した時に死体が入っていた袋はいくつだったのかなど一つ一つ袋を開けてキリルがリストアップする羽目になっているのだ。


ちなみに歩いて帰るのは訓練も兼ねているので、アダムスはどんな状況でも必ず歩いて帰っている。


「結局言ってたオークは見つからなかったのよね。」


馬車から顔を出したイヴェリンが、並走して歩くアダムスに声をかける。

その片手には美しい金の刺繍が施された袋があり、反対の手で中から細い指で砂糖漬けのドライフルーツやナッツを取り出し口に運んでいる。


「そうだな、せっかくだから新入団員達に経験を積んでほしかったんだが・・・。」


「ゴブリン狩りでも十分だと思うわよ?いきなりオークじゃ荷が重いってば。」


今回の遠征でも新人達は先輩の手を借りずに五匹以上のゴブリンを倒している。

集団に囲まれる経験もしたし、初めての実戦としてはまずまずと言えなくもない。


「だがなぁ。ゴブリンなんて三歳児でも狩れる魔物だしなぁ・・・。」


「それはアダムスだけだから。」


イヴェリンが砂糖漬けのオレンジを口に放り込もうとした時、先頭を走る馬車から声が上がった。


「団長!オークです!」


「お、噂をすれば、だな。カリナ、オリヴァン!新入り達を前に集めろ!」


「「はいっ!」」


「イヴェリンは・・・」


アダムスがイヴェリンの方を見ると、もう保護魔法を五台の馬車全体にかけ始めている。

その様子を見てニッと笑うと、前方に向かって走り出した。


「単体で距離五百、こちらを視認して走ってきています!大きさからオークではなくオークキングです!」


ゆるやかな丘の向こうから巨大な黒いものがドスドスと足音を響かせながら走ってきているのが見える。

馬車の先頭に集められた女性二人を含む新入団員八人は、すでに剣を抜いて構えてはいるものの、近づいて来る様を見て怖気づいているようだ。


「オリヴァン!向こうに集落は?!」


「あります!シド、スコット!行けるか?!」


「「はいっ!」」


すぐさま馬車から飛び降りてオリヴァンと共に走り出したのは、オリヴァンの同期であるシドとスコットの二人だ。

ついさっきまで鎧も脱いでリラックスしていたのだが、オークキングに狙われないような進路でその奥にある集落に向かって走って行っている。

オークキングがこちらに向かって来ているという事は、集落には配下のオークがいるはず。

住民が無事であればいいが・・・。


三人の姿を見送ったアダムスは新入団員八人の後ろに立ち、抜いた剣を地面に差すとその柄に両手を乗せる。


「死にそうになったら助けてやる。剣でも魔法でも何でもいい。名前順に相手をしに行くんだ。」


「ええっ?!」「名前順?!」「ひ、一人ずつですか?!」「あ、あれ、オークキングなんでしょう?!無理ですよっ!」


口々に戸惑いを言葉にする新入団員達。

が、アダムスはオークキングから目を離さないまま無言を貫いている。

団長の様子を見た新入たちはお互いの顔を見合わせ慌て始めた。


「な、名前順って誰だ?!」「俺じゃないぞ!」「あ、あたし・・・?」


ジャイアントモスの幻覚でカリナを襲っていた女性隊員が前を向くと、すぐ近くまでオークキングが迫ってきている。

急いで震える手で剣を構えると、思い出すように宙を見ながら口を開く。


「あ・・・あぁ~、えっと・・・『燃え盛る焔よ、我が剣を包み、斬撃に宿れ!』フレイムスラッシュ!」


詠唱が終わると、柄を握る手元から出た炎が巻きつくように剣先まで伸び、大きな火の剣となる。


「フレイムボム!」


オークキングに向かって剣を振ると、纏っていた炎の一部が火の玉となり飛んで行く。

あまりスピードはないように見えるが、当たるとその名の通り爆発した。


「やったっ!」


笑顔になり小さくガッツポーズをする女性団員。

だが、爆発などなかったかのように表情も変わっていないオークキングが煙の中から現れると、振り払われた腕に数メートルの距離を吹き飛ばされて転がっていく。


「カリナ!」


「はいっ!」


馬車から飛び出してきたカリナの手には、魔法の効果を増幅させる効果のある魔法石が握られている。

火炎魔法以外も使えるがあまり得意でないので、状況に応じて使っている物だ。

オークキングに殴られた衝撃で飛ばされた女性団員の元に近付くと治癒魔法を施し始める。


「次ぃ!」


「ひえぇぇ・・・」


アダムスの声で前に出たのは、まだ幼さが残る十代の新入団員。

肩をすくめて抱えるように両手で剣を持っている。


「ええっと、ええっとぉ・・・!わ、『我が身よ、風と共に駆けろ』エアラッシュ!」


そう言うと、つむじ風のように素早くオークキングの振り下ろした拳を避けて後ろに回り込むと両手に持った剣を振り上げる。


バインッ


赤い肉の裂け目が見えるはずが、太く固い毛と分厚い皮膚に阻まれ弾き返される。

反動で体勢を崩して尻餅をついた新入団員の頭目掛け、振り向いたオークキングが足を上げた。

危ない!

頭が踏みつぶされるショッキングな光景を覚悟した残りの新入団員たちが目を開けると、アダムスが気を失った少年団員を抱えてオークキングの足元に片膝をついている。

両足を地面に置いたオークキングも何が起こったのかよくわかっていない顔だ。


「いいか、覚えておけよ。こいつは図体がデカいだけで、動きは遅いんだ。さっきの攻撃もよく見て重心を叩けば簡単にズラせるんだ。」


そう言うともう一度、今度はアダムスごと踏みつけようと頭を狙って落ちて来たオークキングのくるぶしの内側をグーにした手で横に叩いた。

くるぶしを叩かれたオークキングは、その重心を崩されてアダムスたちの横に足をつき、また不思議そうな顔をしている。


そのまま少年団員を抱えたまま素早く立ち上がると「次、行け!」と叫びカリナの元に走って行く。

次の新入団員がオークキングに向かって行った時、残りの団員の一人が後ろを向くと地面からアダムスの剣が生えているのに気が付いた。


「え?団長、素手でオークキングに向かって・・・?」


ふとその後ろを見ると、数人の団員が馬車から降りて来て立っている。

視線に気が付いたのだろう、そのうちの一人がひひっと笑った。


「オークキングくらいなら、団長は素手でも倒せるぜ?剣がありゃ一瞬だろうけど。」


「おい、やめろって。そんな事言ってたらホントに団長が倒しちまうだろうが。新人の訓練にならないだろ」


「へいへい。でも危なくなったらどうせ団長、すぐ手ぇ出すぜ。」


ポカンとして団員達の話を聞いていると、「次ぃ!」の声で我に返った。

正面を見ると、残りは自分一人になってしまっている。


「えっ・・・えっ?!あ、ええっと・・・『走れ、空を駆ける刃よ、切り裂け、風!』ウィンドカッター!」


剣を思いっきり振ると、白い風が半月状の刃となりオークキングに向かって飛んで行く。所謂かまいたちだ。

正面に向かって飛んできた風の斬撃をオークキングが片手でいなそうとすると、その目前でウインドカッターがクン、と上向きになる。

そのままカーブを描いてオークキングの頭上を越えると、背後に回りオークキングの足元、アキレス腱の辺りを切り裂いた。


「グオオオオ!!」


叫び声が響き渡り、思わず耳を塞ぐ。

オークキングが傷をつけられて激高する。


「おお!やるじゃねえか!」「あれどうやったんだ?」「詠唱の時にイメージを練り込むんだろ?こうやってこう、みたいな」


背後からは先輩たちの楽しそうな声が聞こえてくる。

なんでこの状況で呑気に喋ってるんだ?!

オークキングなんて、B級以上の冒険者じゃないと太刀打ちできない相手なんだぞ?!

基礎訓練をしただけの自分がいきなり戦える相手じゃないって!!


心の中で叫びながらも睨んでくるオークキングからは目を逸らさない。

逸らした瞬間に襲ってくるのが本能で分かっているのだ。


と、突然オークキングが口をパカッと開いた。

背後で「やべっ!」「馬車に入れ!」と声が聞こえてくる。

何が・・・先輩の方を振り向こうとした時、視界の端に映ったオークキングの口の中に小さな火種が見えた。

火炎魔法だ、という事は、オークキングの中でも上位種、BランクじゃなくAランク・・・

頭をフル回転させながらスローモーションのようにしか動けない。防御を・・・!

そこまで思考が辿り着いた時、視界の半分を黒い影が覆った。


「団長!」


自分やオークキングがスローモーションなら、団長の動きは二倍速だった、と後にその新入団員は語っている。

それほどの早さで新入団員とオークキングの間に身を滑り込ませたアダムスは、いつの間にか手にしていた大剣を構えると、その大きさに見合わないスピードで剣を横に振った。


まさに一閃。


グラリと傾いたオークキングの頭から、空に向かって火炎魔法が放たれる。

首を落とされたオークキングの身体がよろめき倒れると、ズズン・・・と地響きが起こった。

アダムスの背中に守られ腰が抜けていた新入団員は、目の前にオークキングの首が落ちて来て「ひっ!」と小さな悲鳴を上げると、そのまま泡を吹いて気絶してしまったのだった。

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