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完全無欠の第三王女は最強剣士を射止めたい  作者: 斉藤りた


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11.調査

「・・・ねえ、ちょっと離れてくれない?」


「ん?ああ、悪ぃ、初めて見るから興味深くてな。」


北の森に入ってすぐ、雪が解けて土がむき出しになった部分に座って手を当てる・・・顔を赤くしたイヴェリン。

の、すぐ横で顔を近づけてその手元を覗き込んでいたアダムスが、顔一つ分ほど後ろに下がった。


何か異常が起こっていそうな北の森で、念のためダンジョン化の可能性を確かめようとしている。

通常であれば数人の国家魔法師を呼んで調査を行うのだが、非公式にイヴェリンがその調査をしようというのだ。


イチャイチャしているようにしか見えない第一魔法騎士団のツートップの横を、何とも言えない顔で通常通り森へ討伐に向かう団員達。

調査中イヴェリンが無防備になるのでその護衛と、万が一に備えて団員達が自分を探さずに済むよう森の入り口でアダムスも待機となっている。

ちなみにアダムスが呼ばれた時に備えてカリナも横に控えているが、これは虫が嫌いという理由では決してないそうだ。


「俺は魔力が使えないからわからないが、難しいんだろう?」


「そうね、土属性の魔力に鑑定魔法を練り込んで、木の根みたいに細かく細く遠くに伸ばすような感じかしら。でもそれほど難しくないわよ。」


後ろでカリナがブンブンと首を横に振っているが、二人は下を向いているので気が付いていないようだ。


複数の魔力の属性を持つものが珍しく、さらに高等魔法である鑑定魔法を使うのも至難の業で、その両方を同時に展開するのは超人の域にある。

キリルの言っていた「ダンジョン認定をする国家魔法師」も土属性の魔力を持つ魔法師と鑑定魔法が使える魔法師、それらを混ぜて索敵エリアを定める魔法師の三人の事を指していたのだが、それをイヴェリンはこともなげに一人でしようとしているのだからカリナが首を振るのも当然である。


イヴェリンの身体が淡く光り始め、地面に向かって魔力を放出し始める。

しばらくイヴェリンの手元を見ていたアダムスだったが、時間がかかると判断したのだろう。

手頃な場所にあった木の太い枝を切り落とすと、更に数本に切って自分の分とカリナの分の座る場所を確保した。


「ありがとうございます。・・・これ、もしかして結構かかるんですかね?」


「ああ、キリルに聞いとけばよかったな。」


「もしこの森がダンジョンになったら、来年から討伐はなくなるんですかね?」


「最終決定は陛下がするだろうが、ダンジョンになって魔物が増える事はあっても減る事はないだろうし来る機会は増えるんじゃないか?」


「うえ~やだなあ・・・団長が就任した時以来の地獄の連続遠征になりそう。」


カリナが腰に付けた小型の水筒を取りだす。保存魔法で冷温機能の付いた、いわゆる魔法瓶と呼ばれる水筒だ。

アダムスが団長に就任した二十五歳の時、当時カリナはまだ平団員で二十二歳。

まだ小娘だったなぁと思い出しながらお茶を啜るカリナを見て、アダムスがニヤリと笑う。


「でもそのおかげで強くなったんだから結果オーライだろ?」


「そりゃそうですけど、あんまり強くなっちゃうと嫁の貰い手が無くなりますよ~。もうアタシ二十八だし、三十までには結婚しろって親にせっつかれてるし。」


「ん?オリヴァンに貰ってもらうんじゃないのか?」


「げっ!やめてくださいよ!アタシ可愛いのが好きなんですから!」


「オレも可愛いってば~。」


カリナのすぐ後ろで声がして、危うくお茶をひっくり返しそうになるカリナ。


「あれ、お前どこから来たんだ?」


森に向かって座っているのに、オリヴァンは背後から声をかけて来たのだ。


「入り口に向かって来てたはずなんですけど、外に出ちゃったんで大回りしてきました~!」


えへへ、と細い目をさらに細くして笑う。

が、オリヴァンがここに来たという事は・・・。


「何かあったのか?」


剣に手をかけ立ち上がろうとするアダムス。

それを見たオリヴァンが慌てて続ける。


「あ、急ぎじゃないんで大丈夫です。ただ、ちょっと見てもらいたい物がありまして・・・。」


オリヴァンが取り出したのは、手の平サイズの小さな麻で出来たような小袋。


「何、これ。」


「袋だよな。何か入ってるのか?」


「魔物です。」


「「・・・はぁ?!」」


距離を取るカリナと、再度剣に手をかけたアダムス。


「あ、これはもう空です。ただこの袋からゴブリンが出て来てたんですよ。」


「ちょっと貸して」


オリヴァンの手から小袋を奪い取ると、カリナが中を覗いたりひっくり返したりして確かめる。


「これ・・・」「そう、収納魔法がかかってるんだよ」


収納魔法と言えば有名なのは中央商会で販売されている魔法バッグ。

その見た目に反し、小さなポーチでも貴族女性の身支度に必要なものが全て収納出来ると評判で、各地を回る商人や冒険者にも大型のケースやカバンが人気の売れ筋商品だ。

中央商会が王都一の店になったのも、このバッグのおかげである。

だがポーチやバッグの内側に収納魔法を定着させ、布が歪んでも使えるようにした技術は中央商会が特許を取っていたはずだが・・・。


「イヴェリン様も全ての商品を知ってるわけじゃないだろうし、聞いても分からないかもしれないけど・・・。」


「そう、一応聞いてみようと思って持ってきたんだ。もしこれが原因なら、ダンジョン化は関係ないかと思って。」


三人が淡く光り続けるイヴェリンの方を見ると、ちょうどその光が弱まっている所だった。


「ふう・・・終わったわよ。」


「イヴェリン様ナイスタイミングぅ!今コイツと話してたんですけど、この袋が」


「聞こえてたってば。とりあえず私の方からね。アダムス、この森はダンジョン化してないわ。魔力の乱れもないし、ちょっと集まってる所はあったけど、ダンジョンにしようと思ったらあと数百年はかかるんじゃないかしら。」


手を当てていた地面に座り込もうとして、カリナが慌てて自分が座っていた木の枝を譲る。


「で、その袋だけど・・・うちで扱ってる商品じゃないわ。そんなダサいの売ってたらクビにしてやるもの。」


三人がカリナの手元を見る。確かに飾りっ気もなく、その辺に落ちていても気が付かない雑物とした見た目である。


「でも、他の店で違法商品として売ってたら流石にわかんないわ。収納バッグの技術自体はそれほど難しいもんじゃないし、私が八歳の時に思いついたやつだもの。」


それは大層難しい技術なのでは・・・?と副官二人は思ったが、専門家ならば作れるものなのかもしれない。

戦闘に全振りしている自分たちにはわからないだけで。


「ただ、魔物がそこから出てくるのは無理よ。中に入れるのは何とか出来たとしても、結局出てきちゃうし、出られないようにしたら中で死んじゃうし。」


「でも、実際に出て来たところをオレ見たんすよ~?!」


「見間違いなんじゃないの?それかジャイアントモスに幻覚見せられてたとか!」


「まさか~カリナじゃあるまいし・・・いてっ!暴力反対!」


追いかけっこを始めた二人から袋をひょいと取り上げると、イヴェリンがアダムスに近付いて行く。


「ね、これ貰って調べてもいい?」


「ああ、頼む。それと一度全員集めて、昼からは討伐とその袋の捜索もするようみんなに伝えよう。」


イヴェリンの手にある小袋を見ながら、アダムスが答えた。

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