9 個性とか有能といっても、どんぐりな背比べなときあるよね。
なんか増えていく。
「丁寧に扱ってね、リランカ。」
「わかってるっす。冗談っす。」
その言葉通り、彼女の持ち方は中身を気遣った安定したものだった。
「で、これなんなんっすか。動物の卵?」
「きひひひ、まあ後のお楽しみってやつだ。」
ヱンペル先輩は、俺の正体を隠したいらしく、それは俺にリランカさんにも乗っかることにした。
「今日は近くに来たついで、ヱンペルが視察をしたいって言いだしたのよ。これは、任務で回収したよくわからないものよ。」
「そうなんですか、見た目は玉子っすね。卵焼きがたくさん作れそうっす。」
やめてーねー
「・・・食べ物ではないと思うわ。」
「冗談、冗談っすよ。」
笑いながら、割れないか力込めてない、この子?怖いわ、スポコン少女怖い。
それはさておき、正体がばれる前に、こっそりチェック。
ネーム ヘサカ コルディナ デイビス
種族 マジックガール(見習い)
状態 過労
HP B
MP D
攻撃 B⁺
防御 D
速さ B
賢さ D
適正 火、土
スキル 苦痛耐性 コルディナ流拳闘術 視力強化 動体視力強化
精霊適正 あり
なるほど、デイビスだから「デイー」なのか。状態が過労というのは気になる。あとスキルがなんか近接特化っぽいな、拳闘術ってボクシングでしょ?
「それで、最近はどうだ、デイー。」
「あはは、絶好調とは言えないっすけど、元気っすよ。」
「・・・お前の適正は遠距離には向かない。だがそれ以上に。」
「リランカ様・・・。そう言ってもらえるのはうれしいっすけど。」
「誰しもが通る道だ。それを乗り越えるか、諦めるかは本人次第だけどな。」
ステータスに意識を向けていたらちょっと重い話がされていた。まあ、魔法少女って言葉とリランカさんの様子を見ていると、遠距離で派手な技をぶっ放すイメージあるよねー。でもプ〇キュアは割と肉弾戦もしていたぞ。
「これは、リランカ様。ご苦労様です。本日は、」
「御苦労、そのまま訓練を続けてくれ。」
訓練場につくや、敬礼?のようなものをする門番さんを制してリランカ様は中へと距離を詰める。広さはバスケットコートぐらい、白線で仕切られたエリアに置かれたいくつかの的があり、横に並んだ10人ほどの少女たちが、順番にそれらを狙って魔法を放っていた。
雷や氷、空気の刃っぽいものなどが次々に放たれる様子は中なkに面白い。が、リランカさんの派手な炎を見た後だとちょっと地味に思えてしまう。
「射撃場は相変わらずだな。もっと他の訓練もしてほしいものだが。」
「きひひひ、まあ一番の見せ場だかな。リランカだって昔はそうだったろ。」
現役の人達からしても、どこか物足りないものだろう。
「でも、やっぱここが一番っすから。」
「デイーのようにまんべんなく訓練する方がいいと思うけどな。あっそうだ、ありがとう、受け取ろう。」
「はいっす。じゃあ自分も訓練に戻るっす。」
卵(俺)の受けとり、手直なベンチに腰掛けるリランカさん。えっ見てくんですかという声にならないリアクションとともに訓練場の緊張感が何段かあがる。
「きひひひ、ひよっこども。この程度で取り乱すなよ。」
「ヱンペル、やめろ。まあ、気にするな、休憩がてら少し見学させてもらうだけだからな。」
「いや、これって完全に視察ですやん。」
座り方も上品で、形の良い胸をもちあげるように腕を組む姿は威厳がある。だが思わず突っ込みをいれてしまうほどのプレッシャーがあった。これでくつろげって言う方が無理じゃない?
「あ、自分も訓練に戻るっす。」
幸いなことにディーという子は俺の声に気づかなかったようですぐに戻っていく。ここまで来たのか、彼女も的当てにチャレンジするようだった。
「いや、訓練か?」
「リュー殿、もうよろしいので。」
「いや、もうちょっと正体は隠しておきたいです。」
「きひひ、その方が面白い。正体が分かった瞬間に手の平がクルクルするぞ。」
「ヱンペル、それはさすがに。いやありそうだ。」
「まあ、見た目は卵ですからねー、俺。」
二人にだけ聞こえるように声を抑えていると、次々に的当てが行われ、デイーの番となった。
「行くっす。」
ベンチからは横向きに彼女たちの様子が見れる。だから、デイーが緊張しているのがよくわかった。さきほどまでのワンコっぽい顔から、緊張と不安が濃い顔色の彼女は手のひらを突き出して、意識を集中する。高まるなんか不思議な力の気配、ただその力は他の子と比べても明らかに多く、集中に時間がかかっていた。
「ファイヤーバレットっす。」
掛け声とともに彼女の手から放たれる拳大の炎の塊。勢いよく飛び出したと思うそれは、1メートルほど進んだところで急に勢いを失い地面に落ちる。そして地面に落ちてメラメラと燃えすぐに消えてしまう。そんな様子にデイーはがっくりと肩を落とした。
「ああ、またっす。」
目に見えて落ち込む彼女に周囲の目は冷たい。なんならクスクスと笑っているやつもいる。
「デイビスさん、終わったならどいてくださらないかしら。」
「あ、すまないっす。」
彼女を押しのけるように現れたは、いかにもお嬢様って感じの子だった。
「縦ロールってリアルで初めて見たなー。」
「ああ、あれは彼女の家の伝統的な髪型らしいですよ。
そう縦ロールだ。背中まで伸びた金髪の少女の髪は、もみ上げのあたりに大きなものが二つと毛先にいくつものドリルがついていた。ばさりと髪をかき上げるとやや重そうな髪が跳ね上がってちょっと面白い。
「時間をかけすぎですわ、威力も大事ですけれど、そんな速度では使い物にならないでしょうに。」
言いながら、彼女が手をかざすと、いくつかの炎が飛び出し次々に的を撃ちぬいていく。炎の弾のサイズはピンポン玉程度で、的にも焦げ跡が着く程度。ただデイーと比べると明らかに派手で実用的に見える。
「あれはエーベル。アンナ・フォン。エーベルヴァイン。能力的には訓練所でもトップです。」
ほうほう。
ネーム アンナ・フォン・エーベルヴァイン
種族 マジックガール(見習い)
状態 良好
HP C
MP C
攻撃 C
防御 C
速さ C
賢さ B
適正 火、雷
スキル 高速詠唱 ダブルキャスト
精霊適正 あり
ステータスを見る限り、満遍なく高い。デイーがスポコン少女なら、彼女は器用な優等生タイプってろころだろうか?高速詠唱っていうのもちょっとカッコイイ。
ただ、リランカさんのステータスを見た後だと、そんな差は感じない。なのにこの差はなんだろうか?
「きひひひ、適正の問題だなあ。炎は威力で、雷は発動速度だから、この二つを持っている奴はあんな感じに器用かつ速度が速い。」
「そうですね、私の場合は水による展開領域の広さもありますが、エーベルの場合はあのような高速展開が可能となります。魔法少女としては理想的な適正ですね。」
俺の疑問に、先回りして解説してくれる2人。となると、デイーの「火と土」というのは。
「デイーも「火と土」という複数の適正を持っているレアな才能なのですが、そのせいであのようなピーキーな性能となってしまっているんです。」
なるほど、見た限りは威力は高いけど、発動は遅くて射程も短いって感じだろうか?まあ、火と土って相性悪そうだし。
「きひひひ、複数の適正を持つのは立派な才能だけどな。あれじゃ、宝の持ち腐れた。鍛冶師や技術屋からすると、喉から手がでるほどほしいけどな。」
リュー「なんかたくさんいる。」
見習い「なんか、先輩は卵持ち歩いてる?いや、訓練に集中しないと。」