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6 思った以上にレアーな存在だったらしい。

 卵さんの進路相談

 「片付けは任せます。叔父さん、こんな無茶はもうやめてね。」

 そう告げたリランカさんは、そのままボロボロになった部屋をあとにした。いや、この惨状ってほとんどあなたの所為ですよね。

「きひひひ、気にしなさんな卵ちゃん。これはリランカなりの気遣いってやつだ。」

 そうなんですか、先輩?

「あっこら。」

「きひひひ、ここで、こいつが片付けを手伝うだろ。それで万が一にも精霊を召喚したなんて証拠がみつかってみろ。そしたら今度こそ、あいつらを捕まえないといけなくなる。」

 ああ、なるほど。だとすると、あの派手な登場も証拠を消し去るために。

「きひひひ、そういうことだ。こんな見た目だけど、叔父さん大好きの甘ちゃんだからな、うちの魔法少女は。」

 ケラケラというエンペル先輩だが、俺としては顔を真っ赤にして俺を抱きしめるリランカさんの腕力が怖い。あれー、魔法少女って武闘派? 俺の卵ボディがミシミシ言っているような気がするんだけど。

 そんな命の危機を抱えながら、がっしりと抱えられ、気づいたら、同じ建物の別の部屋に案内された。(残念ながら素敵な美少女戦士の感触はわからなかった。)

 迎え合わせのソファーとテーブル、サイドテーブルには見たことがない花が活けてあり、壁にはどこかの森が描かれている。全体クリーム色な配色で落ち着いた印象のいい部屋だ。

「・・・普通だ。」

「きひひひ、さすがにあんな尖ったセンスの部屋はそうそうないぜ。」

「あれで、公務用というのだから・・・失礼。」

 俺の感想に苦笑しつつ、リランカさんはソファーに俺を置いて、対面に座り、エンペル先輩はその肩にマフラーのように乗って顔だけを俺に向ける。

「こほん、ここは王城の応接室の一つです。私の権限で借りているので、しばらくは安全です。」

 ああ、やっぱり応接室か、シンプル過ぎてそれ以外思いつかなったけど。

「改めまして、精霊様、私は、ランキング4位の魔法少女、シュリ・スカーレット・リランカ。とある情報からおじ、ブラックドラゴンウイングスの不穏な動きを感知し、貴方を保護させていただきました。えっと。」

「俺はリュー。こうなる前はあんたたちみたいな人間だったと思う。」

「えっ?」

 とりあえず異世界リテラシーに合わせて、ヒコロクさんにした挨拶と同じ挨拶をしてみた。そしたら魔法少女がポカンと間抜けな顔になる。

「に、人間?」

 ああこれ、説明しないとダメなパターンか、スルーしたヒコロクさんの胆力を見習うべきだぞ、魔法少女。

「ええっと、つまりですね。」

 そんなわけで、俺は、前世で自分が死にかけていたこと、そして目が覚めたらあの部屋で、このチャーミングな卵になっていたことを説明することになった。

「きひひひひ、こいつはまた見た目以上に面白いことになってるなー卵ちゃん。」

 ケラケラと笑うエンペル先輩に対して、リランカさんは目を 白黒させ、えっ、どういう、そんなとぶつぶつとつぶやきながら、俺の話を聞いてた。

 イヤー気持ちは分かるよ。卵がしゃべるって時点で普通におかしいから。

「先輩はあんまおどろいてないっすね。」

「きひひひ、精霊も生き物だからな、輪廻転生ぐらいはするさ。その過程で前世の記憶をもった個体がでてくるのありえるだろ。」

「へえー。」

「珍しけどな。長いこと精霊をしているが、前世の記憶ってやつを思い出した生き物に出会ったのは2度目だ。ちなみに精霊は初めてのケースだな。きひひひひ。」

「おい、それって、まるでキューカンバさまと同じ・・・。」

「きひひひ、ヒコロクのおっさんの悪運もすごいってことだ。」

 なんかまずい感じこれ?

「ええっと、俺はどうすれば?」

「きひひひ、うんまあとりあえずは、精霊ってことにしときな。卵ちゃん。」

『黒竜の卵ってことは黙っておきな。』

「うん?」

『こっちは念話だ。人間には聞こえない。あとで詳しく話してやるから話を適当に合わせな。』

 耳に聞こえる2重の声には、とりあえずうなづいておこう。うなづく以前に動けないけどね。

「こ、こほん。それで、エンペル。こちらの精霊様は。」

「きひひひ、記憶云々は知らないけど、感じる力は普通の精霊だな。まあこれだけはっきりと意思疎通ができるから上位、いや、ユニーク精霊であることには間違いないなー。」

「ユニーク。」

「きひひひ、それはな。」

「精霊は大きく3種類に分類されています。人間と意思疎通できない、あるいはする気のない精霊は一般精霊、言語を話し、人間と意思疎通する気がある精霊を上位精霊と呼んでいます。そして、その中でも特に強い力を持つ精霊をユニーク精霊と呼んでいるんです。」

 強い力をもつ精霊? お世辞にもそうとは思えないけど。

「きひひひ、あの爆炎を無傷でしのいだ時点でユニーク確定だ。見た目以上にやばいんだよ、卵ちゃんは。それに力の強い精霊は独自の姿を持つことが多い。このエンペル様のようにな。」

「えっ、もしかして卵型の精霊様ってことなのか、私はこういう形の精霊様なのかと。」

 いや、それは流石に勘弁ですわ。せめて移動手段をください。

「きひひひ、それはないな。俺の目から見て、こいつは、卵だ。それも中々に力の強いやつのな。」

「は、はあ。だが、エンぺル、精霊様が、卵でしかも前世が人間なんてことがありうるのか。」

「そうですね、自分もよくわからないですけど、何かの卵っぽいですね、俺。」

「そ、そうなのですか?」

「うん、ええっと。」

 とそこで、エンペル先輩が目を細めた。余計なことは言うまい。

 

 ともあれ現時点でわかっていることとして、

1 俺は黒竜の卵 元人間としての記憶がある。

2 人間と意思疎通を図ることはできる。力もそこそこあるらしい。

3 それは人間には言うべきではなく、精霊として振舞った方がいいらしい

4 精霊の社会的地位は高い。

5 自分で動くことはできない。

 5が致命的すぎるんですけど。可及的速やかに保護を求めたい。

『きひひひ、安心しな、卵ちゃん。ちゃんと面倒を見てもらえるからな。』

『そうなんですか?』

『おや、もう念話と使い分けているのか、優秀だね。まあ、このまま任せておきな。』

 俺の不安を感じ取ったのか、エンペル先輩は念話で俺と会話をしてから、ぬーんと首を伸ばしてリランカさんの眼前に顔を差し出した。

「きひひひ、生まれたての精霊が自由に動けないこともある。そういう精霊の保護も魔法少女の仕事だ。万が一ご機嫌を損ねたらとんでもないことなるよな、リランカ。」





リュー「超VIPだけど、自分では動けません。」

 卵な彼の今後はいかに?

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