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30 卵 招待する。

 卵さんはマイペースにピンチです。

「そうだよ、とりあえず安全なルートを教えるから正面から入ってきてもらえるかな。」

 その言葉の意味を理解した瞬間、2人は罠で暴れることを辞めてガタガタと震えだす、

「「せ、精霊様のいる場所とは知らず、失礼いたしました。」」

 揃って謝罪する2人(宙吊り)が哀れでとりあえずバリアーで足場を作り落ち着いてほどけるようにしてあげる。

「落ち着いて、紐は切ってもかまわないから。」

 宙吊りから尻もちに体勢が変わったことで、リーダーとアンナさんはすぐに拘束をとき、バリアーで作った階段を降りて仲間たちを引き上げる。

「リーダー、これは。」

「今は従うしかない。大丈夫、きっと悪いことにはならないから。」

 こそこそと話しているけど、こっちにはまる聞こえだ。でも聞こえないふりをするのがマナーということで。それよりも。

 ぶん。

 バリアで道を用意して、天幕へと誘導する。また罠にかかったら面倒だしね。

 彼女たちはそのようすに驚くが、その意図を理解してすぐにそこを歩き出す。

「「「「し、失礼します。」」」」

 家に上がるかのようにそっと足を乗せるのはちょっと面白いなー。


 そして、天幕まで伸びたバリアーの道、バリアーロードを通り4人の冒険者たちは俺のいる天幕へと訪れた。

「ぎぎ!」「ぎー」「ぎゃー。」

 ゴブリン達はプチパニックだったが、彼らと冒険者たちをさえぎる様にバリアを貼ってあげると、安全と理解したのか、静かになって様子を伺いだす。何とも現金な奴らである。

 冒険者たちもゴブリンを前に武器を構えそうになるが、バリアーで隔離されていることに気づいてすぐに手を引っ込める。安全もそうだけど、実力差ははっきりしているしね。

 ただ、いつまでも警戒されるのはちょっと・・・。

「初めまして、リューです。野良で精霊やってます。」

 仕方ないと俺はバリアで椅子を用意して、俺の近くに用意して、声をあげる。

「え、ええっと卵?」

「そうですよー、食用じゃないから、食べないでくださいね。」

 驚くリーダーに声だけはおどけて見せるけど、なかなかにシュールな光景だなー。

「まあとりあえず座ってください。なんのおもてなしもできませんが、安全は保証しますよ。」

 うーん、われながらヤクザっぽい気がしてきた。

 これって完全に・・・。

「こ、この度は我々の不見識で無礼な行為をしてしまい、お詫びの言葉も思いつきません。責任はリーダーである。私にあります。どうか、罰は私だけに。」

 ほらリーダーさんが勘違いして土下座しちゃったよ。卵に土下座する美少女って絵面がひどい。

「ああ、いや、そういうのいいんで。弱肉強食?は世の常ですし。」

「ひいい。すみませんでしたー。」

 気を使った発言だったつもりが、男たちまで土下座してしまう。やめてよ、アンナさんって最後の1人がどうしていいか、わからなくて半泣きになっているじゃん。

「座ってください。話はそれからです。」

 思わず低い声で指示を出すと、3人は飛び起き、4人は椅子へと腰かける。

「ど、どうかみんなの命だけは・・・。」

 あとになってわかったことだけど、見知らぬ力、それも精霊の作った椅子に座ることは、冒険者たちにとっては、命知らずの蛮行だったそうだ。君子危うきに近寄らず。なるほど悪い事をしてしまった。

「ええっと、リーダーさんたちは冒険者って認識でいいのかな?」 

 ただ、その時の俺はそんなことを気にかける余裕はなかったし、あったとしても配慮しなかっただろう。ヱンペル先輩やドレン老師、2人しか会ったことのないけど精霊の本質はマイペースで、人間に気を使いすぎるのはかえってトラブルになるとさすがに学んでいたしね。

「はい、4人でパーティーを組み。この地域の生態調査をさせていただいています。この地域は魔物も少なく、近く行われる大規模開拓の候補地になっていまして。」

「なるほど、確かにここら辺は平和ですからねー。」

 山から転がり落ちた関係で自分の正確な場所は分かっていない。人里からはかなり離れているような気がするけど、魔物が少ない立地に新しい村なりなんなりを作ろうというのはわからなくもない。

「ちなみに一番近い街とか村はどのくらい離れてるんですか?」

「ええっと、私たちは2か月ほどかけてここまで来ました。寄り道もしていましたから、まっすぐなら一番近い城塞としまで一か月といったところですかね。」

 一か月・・・。ヱンペル先輩は数時間で運んでいたような。

「うーん、開拓の規模はよくわからないけど、それって現実的にどうなの?」

「さあ、我々はこの森を最奥に大規模な開拓計画であるとしか。」

 魔法があるこの世界だ。重機代わりに使えば森を切り開くなんてことは難しくないだろう。それでも自然が多いのは、魔物の脅威と自然の逞しさというやつなんだろう。

「そ、それで、開拓予定地にゴブリンの集落を見つけて、調査をと。」

「ああ、そういうの気にしてないからいいですよ。誰だってこんな立派な魔物の集落を見つけたら、お宝の可能性を期待しちゃうよねー。」

「「「「すんませんでしたー。」」」」

 いやだから、怒ってないって。

「ご、ゴブリンにしてはずいぶんと豪華な施設と思っていましたが、精霊様の住処だというなら納得です。」

 いや、これはゴブリン達が勝手にやったことですから。この子たち放っておくとって、今も作り始めてるし・・・。


 

卵   「うーん、魔物の玉子として食べられなくてよかった。」

リーダー「そんな恐ろしい事できませんよ。」

メンバー「「「そういう問題?」」」

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