3 魔法少女に襲撃されました。
魔法少女襲来?
「黒竜様、どうか我らに魔法少女の力をお与えください?」
「なんで?」
急に割り込んできたのは、ヒコロクさん以外の男たちだった。
「お前たち、急に何を。」
「ヒコロク総裁は黙っていてください。」
今の話では、精霊の力とやらは女の子限定のはずでは?
「そこを何とか。」
こちらが疑問を出す前に、一斉に土下座をするブラックドラゴンウイングスの皆さん。
「我らには精霊の、「魔法少女」の力が必要なのです。この世界の歪を正すために。」
「そうです、女、子どもを前線に立たせる。こんな世界は間違っているんです。」
「しかもあんなカッコウで。」
内容はともかくとして、4人の男が流れるように話すのはちょっとおもしろいな。
「貴様ら―黒竜様に不敬であるぞ。」
「「「「ひいいいい。」」」」
ヒコロクさんの一喝で転がるように逃げていく様子もなかなか面白い。
「申し訳ありません。長年の悲願であった、お目通りが叶って、我を忘れたようです。」
「おおおう。」
なんかめっちゃ威厳でてない?
「精霊との接触は、キューカンバ様により厳しく制限がかけられています。だから、男が精霊を召喚、ましては会話をすることなど夢のまた夢なのです。」
うーん、ルール的にはだめだけど、できなくはない的なものか?
「こういう時はステータスオープンとか言えばいいのか?」
ブーン あっでた。
ネーム リュー
種族 黒竜
状態 卵 健康
スキル 鑑定 自動防御
「うわー、微妙な情報。」
青いプレートの上に並んだ4行の文字列。名前に関しては、最初に名乗った偽名がそのまま登録された感じで、種族は、黒竜で見た目通りの卵と。
「んで、鑑定ってのは?」
疑問を口にしながらヒコロクさんをみるとプレートの文字が切り替わる
ネーム クロベ リーランド ヒコロク。
種族 ヒューマン
状態 成体 腰痛
HP C
MP C
攻撃 E
防御 B
速さ F
賢さ B
適正 風 水
スキル 火炎耐性 苦痛耐性 睡眠耐性 簿記 高速演算 料理 裁縫 掃除
精霊適正 あり
なんか微妙に防御に偏ってるなー。じゃなくて、精霊適正とはなんぞ。
「ど、どうされました。」
「ヒコロクさんって、料理とかできちゃう系?」
「ああ、料理や家事は必要に迫られてですが、最近は趣味ですなー。」
うん、鑑定内容は教えないほうがいいな。というか、女子限定というの。
ドーン。
「そこまでだー。この迷惑ジジイどもー」
爆発と罵声、そして圧倒的な熱量が俺たちの会話に割り込んでくる。いや、これ死んじゃう系?
壁をぶち抜いて現れる圧倒的な熱量と衝撃。さながら燃え盛るトラックのような攻撃は走馬灯が走るレベルだ。とっさに腕で顔を隠し目を閉じる。いや、卵には腕も目もないんだけどね。
『脅威判定を感知、自動防御を発動します。』
そんな俺の意志に反応して、卵から紫色のエネルギーは放出され、ヒコロクさんといつの間にか集まっていた残りの男たち覆うように広がる。
「「「「ひいいいいいい。」」」」」
カルテットな悲鳴を聞きながらも俺は、本能的に自分は大丈夫だと分かってしまった。例えるならば動物園などで見る檻越しの猛獣、あるいはヒーローショーの爆発などだろう。自身から放出したエネルギーによるバリアーはそれだけ頼もしかった。
「な、なんだこれは?」
「きひひひ、これはすごいな、あんななりだけど、上位精霊クラスの防御力だ。」
安心というのは大事だ。安心するといろんなことを冷静に判断できるし、情報も収集できる。いや、卵だから耳とか目はないけどね。
「ぐっ、とにかく、お前たちのしていることは完全な違法行為だ。シュリ・スカーレット・リランカ。精霊とキューカンバ様の意志と正義の名の下に、アナタたちを逮捕する。」
「きひひひ、エンペル様の炎に焼かれたいのはどいつだー?」
爆炎と煙の向こうから現れたのは、高校生ぐらいの女の子と、その周囲をパタパタしている小さな竜だった。
「うわ、きつ。」
失礼を承知で最初の感想はそれだった。
だってねー、この子って。
なかなかにスタイルのいい子だった。きゅっと引き締まった体と手足は健康的で活発な印象を受ける。長い金髪のポニーテールとややきつめだけど幼さの残る顔は少女らしい。それでいて身体のラインがはっきりでているレオタードと主張の激しい胸部がちょっといやらしい。フリルやリボンで着飾っているが、ベースは新体操などで来ているそうなレオタード?でいいのだろうか。かろうじてスカートははいているが、生足はむき出しである。防御力はどこへ置いてきたんだろう?
これあれだ、魔法少女というよりも美少女戦士よりのタイプだ。違いがわからなくて、見ているだけでエロいってからかわるやつ。
「きひひひ、お前か卵さん、なかなかやるじゃないか。」
「あっどうも、なんかすいません。自分でもよくわからないんです。」
「そりゃ、卵だもんな、むしろ無傷なことを誇れよ、きひひひ。」
そんなインパクトのある恰好に驚いていると、先輩らしき竜が俺に近づいてきた。敵意は感じず、バリアーは発動しない。
「きひひひひ、お前さん、ずいぶんと面白い状況になってるな。」
「どうなんですかねー。」
同類?同族?よくわからないけど、フレンドリーなあたり、この人も竜というやつなんだろうか?見た目はデフォルメした西洋風ドラゴンって感じだけど、よく見れば、その鱗は燃えるように赤く、とげとげしていて攻撃的だ。
「ちなみに、俺ってどうなる感じです? 違法に召喚された精霊とかそんな扱いですか?」
「きひひひひ、まあ取って食ったりはしないから安心しな。」
でもなんかいい人(竜)っぽい。まあ見た目はあれれだけど。とりあえず身の安全は確保されたと思って思う。
そして、あれだ。
「リランカ、よりもよってなぜその恰好なんだ。お前というやつはどうしてもう。」
「お、おじ様に言われたくありません。なんですか、そのゴツゴツしたの?」
なんか蚊帳の外っぽいし。
コスプレとか、実写版の美少女戦士のコスチュームって刺激が強いですよねー。




