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マスコット転生  悪の組織に召喚され、魔法少女のマスコットに転生しました。  作者: sirosugi


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27 卵 集落を見つける。

 転がった先に待ってたのは?

 流れに身を任していると卵はゴロゴロと蛇行し、時に段差でジャンプしたりしながら卵はどんどん山肌を転がっていく。突き出た岩やくぼみを巧みなカーブで避け、時に吹き飛ばしながら転がっていく様子はちょっと面白いが斜面を歩いていたトカゲのような生き物を弾いてしまったのは申し訳なかった。

「ぎぎぎぎ!」

 そして必死になって卵を追いかけるゴブリン君。下手に速度を緩めれば彼もひどいことになりそうだ。

そんな、楕円形のフォルムとすべすべボディが起こすミラクルを卵な俺は他人事のように見下ろしていた。

それでも自力で動いているわけではないので、いつかは止まる。そう達観しているとやがて山のすそ野に勢いよく着地してしまった。

「とまったか…。」

 もはやどうにでもなれと思いつつ周囲を見回すと、そこは切り開かれた集落だった。

 丸太や材木を適当に組み合わせた粗末な住居に、石を積んだ竃らしきもの。文明レベルは低そうだが、自然にはできない風景は、知性を感じさせた。

 人間ではない、だが、それなりに知性のある存在が集団でいるのは明らかだ。

 そして、その正体はすぐにわかった。

「ぎぎ?」

 粗末な家の隙間から顔を出す緑色の顔。毒気はないが粗末な布に身を包んだ姿は子どもサイズ。

「ぎ?」「ぎぎぎ?」

 その数は10人程度。恐る恐るといった様子で近づいてくるが、どうにも

(痛痛しい。)

 半分が足を引きずり、誰もかれも生傷とたんこぶがある。さきほどあったゴブリン君の元気っぷりを思い出すと同じ生き物とは思えない。

「ぎぎー。」

 そんな風に思っていたらそのうちの1人が俺にかじりついてきた。まるでゾンビのような姿に呆気にとられてしましバリアを貼れなかったが、ゴブリン程度では傷一つつかない。

「ぎー。」

 そして、そのまま力尽きてバタンと倒れる。どうやらボロボロな上に体力も限界だったようだ。

「ぎー。」「ぎぎぎ。」

 倒れたゴブリンに駆け寄り助け起こそうとする仲間たち。何とも痛痛しいがそのうちの一匹が空腹に耐えてかねて再び俺に噛みついてくる。当然ながら効果はない。

「ぎー。」 

 そして弱弱しく俺を叩く。よほど空腹なのか、それとも俺がおいしく思えるのか悩むところだが。それ以上に

(鬱陶しいが、さすがに見過ごせん。)

 バリアで追い払うことは簡単だ。だが、ボロボロの彼らにその仕打ちはさすがにできない。焼石に水かもしれないが、ここはひとつ。

 俺は意識して、回復の力をゴブリンたちに送り込む。見習いさんたちの特訓に付き合った経験を活かせば、任意にオンオフだけでなく出力も調整できる。一年近く使っていなかったので、ゴブリン君には誤射してしまったが、感覚は忘れていなかったようでメキメキとゴブリンたちの体力が回復していく。

「ぎ?」「ぎぎ?」

 体力回復はもとより、治癒力を高めるのでケガも治る。たんこぶが引いて、生傷が消えていく。ちなみに空腹的なものや睡眠的なも一時的に誤魔化せるので、本気になれば不眠不休で働けます。

(よく考えたらやばい力だな)

 ゾンビから生き物に戻っていくゴブリンたちの姿に驚愕しつつ、卵は念のためにいつでもバリアーをはれるように気を引き締める。ゴブリン君のように元気になってから襲い掛かってくるようなら今度こそ追い払うつもりだった。

 つもりだったのだが・・・。

「ぎー。」「ぎぎ。」「ぎー。」

 しばし、キョロキョロと周囲を見回していたゴブリンたちは、すぐに俺に向かって拝みはじめる。手を合わせながら土下座。何を言っているかわからないが敬われていることは分かる。

「ぎー。」「ぎー」

 そのまま10人がかりで持ち上げられ、集落の広場に石畳に置かれる。あれ、もしかして調理されると思ったが、どうやら見栄えの良いところへ置きたかっただけらしく、気づいたらどこかから水を汲んできて、きれいな布で俺のことを拭き始めた。

 これはかなりありがたい。

 鳥のゲロやゴブリン君のあれやこれ、更には斜面を転がっていたのでかなり汚れていたが、ゴブリンたちは力を合わせて俺を磨き上げ、もとのツルツルボディが露になる。

「「「「ぎーーーー」」」

 歓声を上げるゴブリンたち。うん、この子たちいい子だわ。

 元気になったゴブリンたちは勤勉でそこそこ優秀だった。数名が水を汲みに行き、残りが森へ入って木の実や小動物をとってくる。半日もせず、竃に火がともり野性的な食事が始まり文化的な生活を再開していた。

「ぎー。」

 よくわからない肉が俺にささげられるように置かれたが食べれないので放置。だが気分は悪くない。ボロボロな姿に同情したから手助けをしたけれど結果として、ゴブリンたちは温厚な種族らしい。卵的には食べようとしないだけでかなり文化的で知的な生き物だ。

 腹が満ち、夜になれば大分周囲の気温は下がってくると、ゴブリンたちはかがり火を俺の近くに集めて10人で固まって眠りについた。

「俺も人がいいねー。」

 なんとなく感じる夜の風、震えるゴブリンたちが気の毒でそっとバリアーで風よけを作る。ちなみに俺の周りはじんわりと温かいらしいからそこそこ居心地もいいらしい。

 我ながら、便利な卵である。

「ぎー?」「ぎー。」

 まどろみながら空気が変わったことに気づいた一部のゴブリンが、ゆらりと頭を下げる。そして深い眠りへと落ちていく。どうやらゴブリンは眠くなったらどこでも眠るらしい。

 卵「神様?そんなめっそうもない。」


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