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22 卵 説教される2

説教が続きます。

『それを踏まえて、お前さん少しやりすぎじゃぞ。』

 やりすぎ、僕は無害な卵ですよ?

『とぼけるなよ、ここまでで自覚があるだろう?』

『・・・はい。』

 いるだけで体力を回復させるスペシャルな卵。バリアで的やルートを作ることで見習いさん達の訓練を手伝っていた。

 彼女たちはこの世界の上澄みであり、魔法少女は常に人手不足。だからまともな教官がいない。そこに同情して、アドバイスやブートキャンプを実施してしまった。

『いるだけで周囲を癒す精霊もいる。バリアを貼ったり才能を開花させたりすることが得意な精霊もおる。人間ごときには精霊の力は図れん。いまのお前さんは、過去に類にないほど親切で力を持っている精霊ということになっている。』

『ああ、そもそも竜の存在自体を知る人がいないんでしたっけ?』

『そうじゃな、そもそもその発想がない。』

『なら、問題ないのでは?』

 今後は黙っていれば問題ないと思うけれど。

『そうだな、竜云々はオマケのようなものだ。黙っていれば問題はない。気づかれて、悪用しようなんて輩がでれば、他の精霊たちが忙しくなる。それだけは覚えておきなさい。』

『はい。』

 竜云々について詳しく教えてほしいんだけど。うん、そんな雰囲気じゃないねー。

『まあ、竜か否か以前にお前さんは与えすぎじゃ。』

 本番はここかららしい。

『精霊の力は膨大だ。それが竜ともなれば凄まじい。だが人間達はそんなことは分かっていない。我らの気まぐれにすがり、機嫌をとることで、彼らはモラルを保っている。』

『うーん。』

『悪い事したら精霊は力を貸してくれない。それが常識だ。同時に魔法の力や運用も常識の範囲にとどどまっている。どうせ叶わぬと思っていた彼女たちに夢を与えたのはいい。しかし』

『道筋を示したのはやりすぎってことですか?』

『そういうことじゃ、理解が早いのー。良いことだ。』

 例えるならば、試験勉強をしている相手に、勉強法を教えるつもりが、試験の答えを教えてしまったようなものだ。

『見習いさん達もいずれは自立し、精霊とパートナーとなる。その過程で自分なりの方法というものを見つけて居場所を見つけていく。Sやリランカなどはその典型だ。精霊の多くはその努力を好む。共に歩む道を大事にする。』

 うん、長くなりそう。

『長くはならん。攻める気はない。ただ、お前さんこれ以上はやめておけ、彼女たちが望み、力を貸してほしいと願うならば答えればいい。此方から手をだしてしまうと、人間はそれに甘えてしまう。甘えてしまえば研鑽を怠ってしまう。それではどちらのためにもならん。まあ、わしらに手はないけどな。』

 なかなか難しい話だ。同時に興味深い。

 精霊という存在は、この世界で重要な役割を担っている。そして魔法少女たちにとっては、力を貸してくれるありがたい存在だ。

 俺からすれば大したことじゃないが、当たり前のように力を貸していれば、その地位が脅かされることになりかねない。そして安易に力を借りれると思った人間は驕る。

『それが旧世界、キューカンバが嫌悪し壊して最構築した理由の一つである。お前さんも精霊ならば、わかるのではないか?』

 ドレン老師の言葉は分かりやすい。

 例えば火縄銃がそうだろう。戦国時代に日本にもたらされた火縄銃によって、それまでは極限まで鍛えた侍が主体だった戦場の実力差が減った。銃という力を得た人々は侍を滅ぼし、戦争はもっと血生臭いものとなった。

 旧世界がどんなところだったかは知らない。だがそれなりのことをがあり、結果として生まれたのが魔法少女と精霊というシステムとセーフティなのだろう。

『来たばかりなら歪に見えるかもしれん。だが、この世界はこのシステムによって比較的安全にまとまっている。』

 女の子を前線に出すことはどうなのかとは思う。危険な世界で生き残るために鍛えることは否定しない。けれども、必要以上の介入や、精霊が人間を守るなんて考えはやりすぎということだろう。

『難しい。』

『そのうち、慣れる。それにお前さんのような優しすぎるやつに注意を促すのもわしらの役目じゃて。』

 ありがたいことだ。全面的に受け入れるのは難しい。けど自重はすべきとは思った。

 なかなかどうして、この世界も、俺には居心地が悪い。

 いつまでも寮にいることも問題だ。早々にパートナーを決めろというアドバイスも今なら理解できる。


 まあ、それはそれとして。

『ところで、なんで魔法少女なんですかね?今の話を聞く限り、意識が高ければだれでもよさげですけど。』

『それは、キューカンバの趣味だ。』




リュー「がんばったら怒られる、なんか理不尽」


間が開いてしまい、申し訳ない。こちらも3日に一度ぐらいのペースでは更新できるように頑張ります。

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