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19  卵、見習い達を鍛える。

エッグスタイルブートキャンプ

「じゃあ、エーベルは、この円筒を壊さないように意識しつつ全力で行こうね。」

「は、はいい。」

 円筒はあくまで狙いの補助で絶対ではない。全力をだしつつ、それを全力で制御する。これができるようになれば、俺の助力は必要ない。必要なのは、それを繰り返しても許される環境と、指標だ。バリアで囲えば周囲への被害は気にしなくていいし、慣れてくればデイーが円筒を作るだけでいい。

「なんか、自分はお手伝いって感じっすね。」

「ちがうよ、これはお互いに必要な訓練だ。ともかく今は、反復練習を繰り返そう。」

 そのあたりもいずれ分かることだろう。

 素直に俺の指示に従い、エーベルは場所を替えながら、次々に収束した魔法を撃ちだしていく。ちょっともで威力を加減しようとしたら、俺が助力して強制的に全力を出させる。

「ちょっ、エーベルもっと絞ってくださいっす。バンバン壊れてるっす。」

 指向性はまずまず、だが勢いに任せているとことがあり次々に円筒は壊れてしまい、その都度デイーが補充していく。

「あ、作りが雑になってるよ、厚みと大きさは均一になるように意識しないと。」

 ちょっとでも雑になれば、バリアで破壊しておく。速度と精度を高めていくにはやはり反復が大事。

 そのまま一時間近く、反復させる頃には、エーベルはヒビ程度の破壊で済むぐらいまで魔法を収束することに成功し、ディは呼吸するように円筒を作れるようになった。

「うんイイ感じだね。」

「お、おかしいですわ。これだけ魔法をつかったら動けなくなるはず・・・。」

「おかしいっす。全然魔法が使えるっす。」

 それはあれです、卵な私のスペシャルな効果です。俺を触れることで体力を回復させる御利益があることは、ここまでの生活でわかっていたけど、意識すると周囲の人間の体力も回復させることもできる。今回はそれをフル稼働して、消費したそばから、体力と魔力を回復させていたのだ。

「さあ、どんどんいこうね。」

「「鬼だー。」」

 鬼じゃなくて卵ですよ。こういうのは、死ぬほどやって覚えるしかない。


 そんなスパルタな特訓の日々は一週間ほど、気づけば2人の魔法は格段に上達した。

「じゃあ、行くよー。」

「「はい。」」

 訓練場の中央に立つ2人の周りに板状のバリアを何枚も展開する。

「ディ、右から」

「ハイっす。」

 エーベルの合図でデイーが瞬時に円筒を生み出し、それを目印にエーベルが魔法を発動させる。10センチほどまで縮小された円筒を通ったビームは、それなりの強度で作られたバリアを撃ちぬく。

「つぎ。」

「ハイっす。」

 一つ目の的が破壊されたときには、次の準備が、それも複数用意されてた。

「バースト」

 上下左右、計4か所に展開された円筒から飛び出すビームが的を撃ちぬいていく様子はなかなかに爽快なものだった。

「やるじゃん。」

 積み重ねの中で、2人は完全な分業を決めた。的に対してまっすぐになるようにデイーが円筒を設置し、それを通すようにエーデルが魔法を発動させる。そうすることでエーデルは魔法の発動と制御に集中することができ、デイーはより質の高い精度と空間把握能力を取得し、エーデルの魔法を間近で体験することで射程ものびた。

 最終的にはお互いに1人で、このレベルの作業がこなせるようになるだろう。そして、今後は俺の助力なしでも訓練になる。

「や、やっと解放されるっす。」

「疲れない、眠くならないってこんなにも精神を・・・。」

 達成感のわりに2人が煤けているような気がする。命短しなんとやらだ。体力を回復させながら、無限に訓練ができるというのは、俺が彼女たちにできる助力だと思う。

「され、次は?」

 2人は大丈夫だ。だが、他にも課題が見えている見習いさんは多い。お世話になっているわけだし、彼女たちの将来のためにも。

「おいおいおい、なんだか面白ことになってるなー。」

 ちなみに、この周囲にバリアを展開して、的にする訓練は、Sさんにも好評だった。

「私にもやらせろ。」

 訓練を始めたら割とすぐにふらりと現れて、お玉片手に、素敵な模擬演武をみせてくれた。

「速く動けるなら、悟られる前に動け。 動けないなら、近づかれる前に打ち落とせばいい。」

 なるほど、未だに契約相手はわからないけど、一人前になるにはこのレベルはこなせないといけないのか。

「「「いやいや、Sさんと一緒にしないでください。」」」

「「大丈夫、できるようになるまで訓練すればいいんだから。」」」

 圧倒的な実力を前に見習いさんたちがドン引きしていた。しかし「岩陰草」の採取の時点で命がけの仕事をするのが魔法少女だ。少なくとも鍛えすぎて困ることはない。

「そうだな、精霊がこれほど好意的に力を貸してくれているんだ。お前たちもちょっと死ぬ気で鍛えろよ。」

 そう言い残してSさんは寮へと帰っていく。そんな感じにSさんやリランカさんが時々様子を見に来てくれるけど、この訓練所には教官と呼べる存在がいない。

 これはおかしい。自主性を重んじているのか人手不足なのかはわからないけど、貴重な人材である見習いさん達を導く存在がいないのはなぜだろうか?

 そう思ってリランカさんへ聞いてみると。

「彼女たちはここにいる時点で、魔法少女見習い、一般的な兵士としてはすでにかなりの水準となっていので教えられる人材がなかなか見つからないんです。」

「くくく、そんな実力があるなら、さっさと現場に引っ張り出されているんだよ。」

 とのことだった。

 うーん、歪だ。社会にでたら誰にも頼れないぞってこと?しかし、彼女たちはまだ若い。それなのにそんな放置気味でいいのだろうか?

 そんなことを思いつつ、デイーとエーベル。それに他の見習いさんたちの訓練を見て、アドバイスやフォローをしているうちに、俺は気づいた。

「そうか、いないなら、育てればいいんだ。」



 



リュー「やっぱ、俺要らないねー?さあ、次は。」

見習い達「逃げろー。」 

 体力と魔力は回復するが、精神は回復してくれないスパルタ。

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