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17 卵 飾られる。

やっと落ち着いた、卵さん

「そうそうにパートナーを決めることだね。それだけ賢いなら気づいてるとおもうけど。お前さんは、絶食中の肉食獣の前に放り込まれた肉のようなものだからね。」

 そうは言われても、自分が何者かもわかっていない状況で決められるものだろうか?そうやってかしげる首のない卵なのだが、今はSさんから許可がでたことに安堵しておくことにする。

「とりあえずは中に戻るか、お前さん食事は?」

「たぶん、必要ないですね、卵なので。」

 ひょいと俺を持ち上げて、中にも戻るSさん。ちなみに庭で伸びているデイーはスルーされた。

「はい、全員集合。」

「「「はい。」」

 ホールに戻るなり、よく通る声で見習い達を集めたSさん。エーベルやデイーなど一部の姿はない、まだ気絶しているのだろう。

「知っている者もいると思うが、今日からこの寮に滞在される、ええっと。」

「リューです。」

「リュー殿だ。見ての通りのフリーの精霊様だが、契約にも前向きな考えを持っていらっしゃるが、くれぐれも失礼のないように。」

「「「はい。」」」

「あとお前ら、精霊でもなんでも、生き物を持ち込む場合は次からは、ちゃんと先触れをだせ。許可云々は別として、色々と面倒だ。」

「「「はい。」」」

「以上、解散。」

「「「・・・はい。」」」

「夕飯はいらないならしいなー。」

 訓練場で見なかった人もそうでない人も、興味津々に俺を見ていたが、Sさんの一喝で解散していく。なるほど、確かにあれは獲物を狙う目だわ。

「リュー殿は食事は?」

「あっいらないです。そうですね、布とかでいいんでしばらく視界を遮るものを貸していただけると。」

 さすがに疲れた。体力という概念は分からないけど、今日は色々ありすぎた。

「そうか、なら、丁度いい大きさの箱があるから今日のところはそれに布でも詰めておくか。」

 言いながら夕飯の用意と並行して俺がすっぽり入る箱を用意して、そこに布を敷いて簡易的な寝床を釣ってくれた。うん、手際がいい。

「これでどうだ。」

「これはなかなかいいですね。蓋をしていただいても?」

 柔らかい布のクッションに包まれ蓋をされると、程よい暗闇になり、俺は心地よく目を閉じた。卵なのに目を閉じるとはこれ以下にと思うけれど、目を閉じたいと思うと自然と近くする範囲が狭くなり、見下すような視線から一人称視点に切り替わり、最終的に周囲の情報から切り離されていく。


(俺は一体どうしてしまったんだろうか?)


 奇妙で夢のような一日にだった。眠りに落ちる直前にそんな疑問が浮かぶ。本当の自分は未だにベットの上で死にかけており、卵になった夢を見ているのではないか?名前や家族といったパーソナルな情報がぼやけているのも夢だから? 夢ならもう少し満喫したいなー。

 そう思いながらも、睡眠への欲求は抗いがたく、俺の意識はすぐに闇に落ちていった。


 んで、起きたらなんか神棚に飾られていた。

「あっ、リュー様、おはようございます。」

「まだ、寝ぼけてるんっすか?」

 そして2人は、なぜ俺が起きたことに気づいたのかな?見た目に変化はないぞ。

「おはようございます。で、この状況は?」」

 周囲を見回せば、場所は女子寮のエントランスホール。階段脇に設置されたひな壇に赤いカーペット、中央に置かれた俺の寝床もとい木箱と、左右に燭台。周辺にはお供え物らしき、お菓子や果物の数々。お花がないのは文化的な違いだろうか?

「実は、昨日、リュー様がお休みになられてからですね。」

「みんなで、だれがリュー殿と一緒寝るかで争奪戦になったんす。寮内は安全っすけど、あのまま食堂に置いておくのはまずいって話になったす。」

 なぜだろう、見ていないのに、箱を前ににらみ合う見習いさん達の姿が存在できてしまう。それでなんやかんやあって、なんかんやこの形に落ち着いたのだろう。

「うーん、お供えはいらないです、食べられないので。」

 色々と深くは考えないようにしよう。夢でないと分かった以上、何事も前向きに考えるべきだ。卵なので、どっちが正面かわらかないけどね。

「まあ、しばらくは寮でくつろげと、Sさんがおしゃっていました。」

「それはありがたいですねー。」

 その言葉に甘えて、俺はしばらく寮でお世話になることした。昼間は箱から出され、夜は箱の中で眠る。見習い達はエントランスホールを通るたびに俺のことをなでて挨拶をしていく。時折、訓練の愚痴や相談などをされてアドバイスをするなどはあったが、基本的には最低限の接触のみ。俺は自分の置かれた状況やこの世界のことについて考えたり、自分の能力を把握したりするといった内向的で充実した時間を過ぎることになった。

「なるほど、わからん。」

 結論としては、分からないことは分からないということだ。自力では動けないこと。魔法少女とタッグを組むと色々できることぐらいだ。

 ただ、問題として、魔法少女なるものがどんな存在なのかイマイチつかめていない。だからこそ、契約には慎重にならざる得ない。

 それらも素直にSさんに相談させてもらった。

「そうか、なら、実際に魔法少女の任務に参加してみてはどうだ?」

 


 


リュー「なるほど、こうやって外堀が埋まっていくと。」

S「早くしないと、食われるぞ。」

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