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16  卵 対話をする。

絶体絶命((笑)続行

「しかし、固いなー。抵抗する食材は初めてじゃないが。ちょっとお前素直じゃないぞ。」

「そりゃ、命がけですからねー。」

 言葉はフレンドリーだけで、振り下ろされるお玉は凶悪だった。いや、まて、どういう状況だ

「ま、待ってください。話を。」

「話せばわかるというやつか・・・。」

 そうだよ、話が通じる時点で、一旦落ち着いてくれないかな。

「しゃべるから食べれないということはないだろ。」

 あっやばい、話が通じない。材料の調達からやってしまう系の人であった。

「知っているか、この寮は国の未来を担う魔法少女たちの生活する場だ。そんな未来を担う場所で、得体のしれない病気が流行ったら大変だろ。だからルールが徹底しているだんよ。」

 そうですねー、学生寮とかでも持ち込んではいけない物品とかが決まっていたような。ペット禁止の賃貸とかもわりとあるし。

 いやでもまって、

「あのー、おれ、私は一応精霊ってやつらしいんですよねー。だからリランカさんや見習いさん達に誘われてここに来たわけなんですよ。そのあたりどうですか?」

「なんだ、お前さん、精霊なのか、てっきりブラックリザードの玉子かと思った。」

 卵や。いやそこまで理解してなんでお玉の攻撃が止まらないの?

「あの子たちがそう判断したなら、そうなんだろう。だがここでは私がルールだ。」

「無茶苦茶だ―。」

「精霊ならこの程度、耐えて見せろ。じゃなければしゃべる魔物として排除する。」

 ガンガンガンガン。お玉ってこんな頑丈だっけ?それともこれも魔法なのかな?

「あるいは、自分が何者かきちっと語って見せろ。」

「ひ、ひいいいい。俺はリューです。今日、召喚された精霊です、なんやかんやあって記憶があいまいで、卵です。」

「何の玉子?というか玉子なのにしゃべれる?」

「それがわからないんです。そう言うことに関する記憶がないんです。」

 対話?の間にもお玉攻撃は苛烈だった。最初はまっすぐ振り下ろすだけだったが、俺がバリアを出せると分かったら横なぎや切り上げなど、バリアの隙間を縫うように軌道を変えてくる。ほとんどの攻撃は自動で展開されるバリアーが止めてくれるが、その都度、パリっと嫌な音とともにヒビがはいる。俺を試しているのか、それとも揶揄っているのか、バリアーが破壊される気配はないけど。

「心臓に悪い。」

 いや、卵だから心臓とかないけど。

「で、契約者はデイーなのかい?」

「いや、まだ決まっていません。どうも僕は汎用性?相性がいいらしくたいていの子と仮契約ができたんです。」

「ほう。」

 すくい上げるように出された横なぎの攻撃にバリアごと俺の身体は宙にういた。そして気づいたら片手でもちあげられSさんの顔の前にいた。達人技だ。これは観念するかしかない。

「すごいな、ユニーク精霊ってことだな。」

「ヱンペル先輩の話ならそうらしいです。」

 なるほど、どうやら攻撃ではなく、動かそうとするアクションには自動防御は発動しないらしい。となると今までのやり取りは無意味で、Sさんが持ち上げたら抵抗できなかったてことか・・・。

「なんで反撃しない?このままだと茶碗蒸しだぞ。」

「いやー、攻撃以外ではバリアーが使えないんですよ。」

 バリアーで背負子を作ったり、相手と固定することはできる。その際に傾斜をつけて多少動くことはできるけど、この状況で動くことはできない。

「卵なので。」

 まだこの世界に来て1日。それなりに濃い経験のおかげで自分の状態は把握している。この状況が詰みというのは間違いない。

「そうか、なら一思いに。」

「あっそれは抵抗できます。」

 振り下ろされるお玉の攻撃にはバリアが展開されて防御できる。だが、そのおかげで反動を利用して逃げるなんてこともできない。

「なるほど、なるほど。よくわかった。意外とまともな精霊らしいね、君は。」

「人畜無害とは言いませんが、俺は自分だけで何かできないですよ、卵なので。」

「そうか、玉子だもんな。」

 卵です。また食材扱いしているよ、この人。

「ヱンペルと会ったならわかると思うがな、精霊は気まぐれで、理不尽な存在だ。私たちにとってはな。」

 そういったとき、Sさんからの圧力が失せる。最初に見習いさんたちを出迎えた人の好い笑顔と包容力が戻り、殺気のようなどう猛な気配が収まっていく。

「魔法少女と契約してくれるような精霊ならまだいい。一方で、契約するフリをして悪さを働く精霊というのもいるんだ。」

 ああ、たしかにそういうのもいそう。

「ただ、お前さんの場合は、契約者、あるいは協力者が必須のタイプだろ。それなら信用できる。」

 そうですね、自分、卵ですから。

「そうですね、この世界の理はよくわかっていません。ですが現状で、人の手を借りないとどうしようもない卵なので、Sさんの言うような悪さをしませんよ。」

 彼女の言うことも理解できる。訓練場で見せた見習い達のあのはしゃぎようと、寮までの道のりとSさんを目の前にしたときの俺への執着。精霊との契約はそれだけ、協力で魅力的なものなのだ。

 そう思えば、Sさんの過剰なパフォーマンスの理由も予想できる。圧倒的な力を示すことで、俺を使って見習い達が調子に乗らないように戒めると同時に、俺を見定め、警告するためだ。

 やり方がめちゃくちゃだけど、悪い人ではないのだろう。あわよくば食べようとしていたのも事実っぽいし。

「そうそうにパートナーを決めることだね。それだけ賢いなら気づいてるとおもうけど。お前さんは、絶食中の肉食獣の前に放り込まれた肉のようなものだからね。」

 

得てして、寮やビルの管理人は、規約に厳しい。ペット禁止の賃貸なんかは即時退去させられたりすることもあるらしいですね。

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