表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/32

14 卵は命で、玉子は食材。

 食用と勘違いされる卵

「ただ、リュー様って、お風呂にはいってゆで玉子になったりしないっすか?」

 なるとしたら、温泉玉子だねー。そこの女子、ぼそっと、美味しそうとか言ってるの聞こえているから。

「興味レベルで聞くんだけど、俺って食材に見える?」

「ああ、魔物食材っすね。ジャイアントバードの玉子とかはリュー様ぐらいの大きさっす。一つで100人分ぐらいの卵焼きが作れるっす。」

 ダチョウの3倍かーすごいなー。まあ、俺の場合中身があれとは思わないけど、大きな卵ってロマンがあるよねー。

「寮母さんとかなら、食材扱いするかもしれませんわ。」

「みんなで説明しましょう。そうすれば。」

 ちょっとまってなにそのフラグ。あれだよね、食材と間違えれたりしないよねー。

「おうおう、帰ったかガキども。とりあえず半分は風呂で、半分は飯を食え。今日のも旨いぞ。」

 そんなワイワイとした様子で訓練場から歩くこと数分。見習たちの寮の見た目は、どこにでもありそうな学生寮だった。塀で区切られた庭を挟んであるアパートメント、大きな扉を開けるとと大きなエントランスホールがあり、そこには数名の見習いらしき少女たちと、妙齢の女性が立っていた。

「Sさん、ただいまー。」

「今日は、A班が先にゴハンですよね。」

「おう、今日もたらふく食いな。」

 交わされた言葉は和やかなもの。だが、なぜだろう見習たちが俺を隠すよう陣形を組んでいるような、デイーもシーとゼスチャーをしている。

「今日は一層がんばりましたから、お腹がすきましたわ。」

「おや、エーデルもいつも以上に張り切ってるな。それだけ身になったようで、結構結構。」

 三角巾とエプロンの下は真っ赤なジャージ。片手にお玉を持った姿は肝っ玉母さん。ただ見た目はかなり若いし、なんというか力強い。鑑定しなくても分かる。この人、かなり強いなー。

「あれは、ダメっす。」

「お料理モードだから話は聞いてもらえないわ。デイー一先ずリュー様をお風呂に隠すわよ。」

 おい、待て。なんでそんな野良猫をこっそり運び込むようなことを。

「い、いくすっよリュー様。」

 緊張で手汗がでているデイーたちの雰囲気に俺も気を使って黙る。

 ぴしりと緊張した空気。誤魔化すようにエーデルがこちらを睨んでいる。見た目は訓練で何かあってそれを引きずっているようにも見える。

「なんだなんだ。お前らまた喧嘩したな?魔法少女を目指すなら喧嘩じゃなくて競え、足の引っ張り合いなんてしてるんじゃないぞ。」

 大した演技力だよ、君たち。だけどさあ。

「で、デイーが持っているそれは何だ?まさかと思うが。」

「ちっ、逃げなさいデイー。」

「ここは私たちが食い止めるわ。」

「リュー様をお守りしなさい。」

 目ざとく見つけたこの人もだけど、見習いたちの行動もおかしい。

「お前ら―そういうことか。また性懲りもなく。」

 怒声、それを聞いた瞬間にはお玉が高速で振るわれてエーベル以下数人の見習いたちが頭を抱えてうずくまっていた。

「くっみんなすまないっす。」

 その様子に駆けだすデイー、そして倒れながらも女性にしがみついて足止めを図る見習い達。

「いや、まてなんで奥へ逃げる。」

 逃げるなら外へ逃げろよ。

「もう門限を過ぎているので外にでたら怒られるっす。」

「なんでそこは律儀なんだよ。」

 状況があまりに突然で、カオス過ぎるんですけど。驚いている間に見習いさんたちがお玉で沈められてる。

「畜生を、寮に持ち込むなーーーー。」

 ただ、俺は運ばれるだけだった。自力で動けない卵なので。意味が分からなくても流れるという悲しき運命・・・。


 いや、おかしいだろ。そう思ったのは、全力で寮内を連れ回された後で、タンスに隠れて一息ついたときだった。

「えっなにあの人?ペット厳禁なのここ?」

「そ、そうじゃないっすけど。」

 タンスの中に隠れて震えるデイーに俺は尋ねる。

「エマ・エルデス・エスコパル、この寮の管理人で、みんなからはSさんと呼ばれてるっす。」

 うん、こういう時でも質問に答えられるあたり君は優秀だよ。

「で、でも思い込みが激しい上に、大の動物嫌いなんです。前に他の子がこっそり野良ネコを連れ込んだときも、あんな感じに暴走してたっす。」

「先に言えや。」

 寮母さんにも、俺にも。

「いや、精霊はいいらしいっす。動物は寮を汚すからNGらしいっす。」

 バリ。「「ひいい。」」

 そんなことを言っていたら扉が派手にけ破られる音がして、俺たちは声を漏らす。

「に、逃げるっす。」

「いや、ちゃんと話し合ったほうがいいと思うよ。誤解だし。」

 転げるようにタンスから飛び出したデイーに、至極まっとうな事を伝えるが、デイーは足を止めない。まあ気持ちは分かる。

「ははは、卵か―。なるほど、今日は茶碗蒸しを追加だー。」


リュー「怖い怖い。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ