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1 悪の組織の切り札として召喚された? 1

勢いで新シリーズ 

魔法少女×異世界ファンタジーという闇鍋の匂いしかしない。

 運命がはじまった日。


 その日は、びっくりするほど爽快な目覚めだった。いつもなら頭痛とか節々の痛みを感じながら目覚めるはずだと違和感を感じながらも、思考はクリアでそこが夢じゃないとはっきりとわかった。。

 心なしか視界もはっきりしているし身体が動かないのは慣れ親しんだ感覚だ。

 だからこそ、見知らぬ天井を見たときに最初は死んだんじゃないかと思った。

「黒いな。」

 暗いというよりも建材そのものが黒い部屋。黒曜石のような光沢を放つ建材で作られ、黒いカーテンを飾られた黒い部屋、自分はその部屋の中央にいた。

 光源は蝋燭。燭台のようなものがいくつも置かれているが部屋の構造的に、酸欠が心配になりそうになる。が、それ以前に俺は呼吸器もないとまともに呼吸もできなかったはずだったなのにそれがなかった。

 本来なら感じるはずの息苦しさがない。薄暗いはずなのに、はっきりした視界。

「夢、じゃないねー。」 

 思わず漏れた言葉の存在感に自分でも驚いてしまう。だが、周囲の驚きはそれ以上であった。

「た、卵がしゃべった。」

 よくわからない言葉を叫んで尻もちを搗く黒づくめの男たちが5人。魔法使いのような真っ黒なローブを纏った4人は腰を抜かしているのか仰向けに倒れた状態で視線だけを向けている。しかし俺の正面、赤いスーツにサイヤ人のような肩パットつきのマントを着込んだおっさんだけはおどろきつつも、腰の後ろで手を組んだままこちらを堂々と見ていた。

「こ、黒竜殿、突然の召喚にも関わらず我らの願いに応じてくだささり感謝する。」

 精霊?召喚?なんぞそれ? そういう素敵なワードは非常に興味深いけど、俺は一般人のはず。いや、ここまでの現状確認が、現実逃避でしかない。

「まず最初に聞きたいんだけど。」

「なんなりと。」

 気づけば肩パッドおじさんとその他の黒ずくめたちも立ち直り跪いていた。これだけされれば、俺がなんらかのVIP的な存在というのは察しができる。しかし。

「なあ、なんで俺、卵なの?」

 楕円形の白い色のザラザラした質感。台座の上に固定されていなければコロコロと転がっていきそうなくらい整ったフォルム。大きさはバスケットボール大、人の頭ぐらいといったほうが分かりやすい?

 目も耳もないはずのそんな存在に自分がなっていること。それがなぜかわかってしまう。イメージとしては3Dゲームで自分を見下ろしているような感覚に近い。最初は一人称視点に近いものだったが、なんかよくわからんが、意図して視点が操作できる。身体が自由に動かない変わりに視点をある程度自由にできるようだ。

「それは、我々にも。」

「そっかー。」

 ちなみに雛が育って、孵化するものを卵、食用のものや加工済みのものは玉子と書く。いやいや、まさかこれだけ大仰な事がなされて食用ということはないだろう。

「黒竜殿はご自身の状態を理解されているので?」

「うーん、なんか卵になっているってことは分かる。見えるし、聞こえる。あと喋れるのはなんでだろうねー?そもそも黒竜とはなんぞ?」

「ご存じないと? これはやはり召喚に不手際が、それとも全く別の・・・。」

 うわーなんか不穏な気配を感じるだけど、状況的にはこの人に頼るしかないんだよねー。

「俺はリュー。こうなる前はあんたたちみたいな人間だったと思う。」

「はっこれは失礼を、ブラックドラゴンウイングスの総統を務めている。クロベ・リーランド=ヒコロクと申します、どうぞ、ヒコロクとお呼びください。」

 なんだそれ、ギャグ、ギャグなのか?

「ヒコロクさんたちは、あれ、悪の組織ってやつ?」

「いえいえ、滅相もない、名前から誤解されることはありますが、治安維持局に所属する部署の一つです。公職です、公務員です。」

 まじかよ、痛い悪の組織か、草野球チームみたいな名前じゃん。いい年して、そういう感性が爆発しちゃってるかんじ?

「こ、これはいわゆる代々の伝統衣装というやつです。ともあれ、順序だって説明させていただきますが、我々ブラックドラゴンウイングスは、国家に所属する機関の一つであります。そしてアナタを召喚するこの儀式を執り行ったのも我々です?」

「ええっといわゆる異世界召喚ってやつかなー?」

 ちょっと前から流行しているやつ、いや、俺の場合は異世界転生?

「異世界?確かにそうですね、我々の目的は黒竜様という超常の存在を召喚し、その加護にすがって力を得ることですから。」

 なにそれ、こわ。国家機関でそれをするとやばくない。

「あっいえ、そう言われるとそうなのかなー。」

 ちょっと自信なくなってるじゃん。

 まあいいや、状況が状況なので、スルーして話を進めるとして。

「俺はヒコロクさんたちによって召喚された。つまり、加護なりなんなりを与えないといけないと。」

「い、いえ。そこまで厚かましいことは。召喚に応じていただいただけでも奇跡のようなものです。ここからさらに交渉させていただけたら、我らとしては・・・。」

 どうにも歯切れが悪い。低姿勢というか怯えている?

 どうやら、この状況で俺の存在は、なかなかに高位な存在ということだろう。勇者とか聖女扱いして、使いパシリにしたり、神的なサムシングを召喚して素材にする系ですか? 

 いや待て小説や漫画のイメージとか知識で判断するのは危険だ。

「こういう儀式魔法ってさあ、黒づくめになって顔を隠して行うもんじゃないのか?」

 卵なのにしゃべれること、いや意思疎通ができることはとりあえず棚にしまおう。秒速で棚にしまっておくことが増えているが、しょうがない。

「ふむ、それは黒竜様の流儀ですかな?」

「いや、コンプラというか安全面で。」

 明らかに怪しい場所で怪しい儀式。あと怪しい人相なおっさん。後ろ暗いことをしているのは確かだ。仮にそうじゃないなら、この世界の常識を疑うレベルの怪しさだ。

「召喚とやらで読みだされるものが友好的な存在とは限らない。だから契約の瞬間がなるまでは顔を隠すものだと思ったんだが、あと、万が一に衛兵的ななにかに踏み込まれたとき身バレを防げるだろ?」

「はっ、確かに。アクマとの契約では目を合わせないように仮面をつけろと古文書に書いてありましたぞ。」

「そうだった、これまずくないか、もう幻に囚われているんじゃ。」

「いや、こんなに親切な御人がそんなことをするか?」

 怪しいんだか、バカなのかよくわからない人たちだ。なんとなく悪い人達ではないんだろうけど。


 突発的に舞い降りることになったこの世界。

 最初の出会いがヒコロクさんたちであったことが、割と幸運であったことを知るのがもう少し後の話。


 この状況を言葉にするならば?

 

 目が覚めたら、俺は悪の組織に召喚されてしまったみたいな?

はじめしての人ははじめまして、お久しぶりの人はお久しぶりです。

sirosugiと言います。


同時進行で数本のシナリオ進めています。毎日どれかは新作をだせるようにがんばりますので、もしよければ他の作品も読んでいていただけるとうれしいです。

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