プロローグ
第1章『謎多き彼』
腹が減って死にそうだ。
体はピクリとも動かず、聴覚と僅かな視覚だけが生きている。
食べたい、食べたい、食べたい、食べたい、
「全部あのクソババアのせいだ…!!」
痣と傷だらけの体を死にかけのゴキブリのように必死に動かした後、小さなうめき声を上げた。
しかし、ここは深夜の路地裏。誰も通りかかるはずもなく意識が朦朧としていた。
聴覚が死にかけていたその瞬間小さな足音が聞こえた。
「たす…………て………」
近くにいるのかも分からない誰かに向かって助けを求めた。
段々と足音が近くなるとともに、急に音が聞こえなくなった。
俺こんなところで死ぬんだ………
最後くらいゆっくり眠ろう
そして俺は全てを諦め目を瞑った。いや、瞑りかけた。
「…………ちゃん……………?」
女の子の声が聞こえた気がした。
最後くらい何も考えさせずに寝させてくれよ……
そう思ったその瞬間、大きな足音が少し遠くから聞こえながらも、再び優しい声が俺の耳を包んだ。
「お兄ちゃん、大丈夫?」
言葉を返すことも面倒なので、このまま眠ろうとすると次は女性の大きな叫び声が聞こえた。
「ヒナ!こんなところに………って、この人は……?大丈夫ですか!?今運びます!!」
周りの余りに大きな雑音に俺は目を覚まさわざるを得なくなった。
「腹………減った……」
遠ざかる意識の中、まるでホワイトノイズかのよ
うな小さくかすれた声を発し俺は気を失った。
背中に何か柔らかい物が敷かれている感覚がした。
咄嗟に自分の背中をピントが合わない全く目で確認しようとしたそのとき、体中全体に激痛が走った。
あれ、ここ俺の家か?
頭の中が絶望で溢れようとした次の瞬間
「お兄ちゃんが起きた!!」
ピントが少しだけ合った目で周囲を確認したところ、どうやら俺は他人の家で寝ているらしい。
「大丈夫ですか!?」
息継ぎをする暇もなく、女の子の母親らしき人物が俺の視界に入ってきた。
どうやら家が近かったらしく、俺を運んでくれたらしい。
俺は3日間十分な食事、休養を取らせてもらった。
――後に俺はこの親子に出会ったことを本当に感謝することとなる。
グロ漫画に少し興味があったので、書き始めてみました!! 今回の話ではグロ表現、残酷な描写はゼロでしたが、次作以降ゆっくりと描いていこうと思います!!