最後の砦
これは英語の授業のために書いた作品なので、 少しは余裕を持って下さい。
1940年5月
私は爆撃を受けた農家の浅い残骸の中に身を潜め、エンフィールド小銃を固く握りしめていた。 空気は火薬と焼け焦げた木の刺激臭、そして死の甘ったるい臭いが入り混じっていた。 ダンケルク周辺の野原は戦場と化し、今、イギリス海外派遣軍が海へと退却する中で、私はその殿軍の一員として敵の進軍を遅らせる任務を負っていた。
この二日間、執拗なシュトゥーカが空から降りてくるのを見ていた。 その爆撃は道路をクレーターに変え、肉体を無惨に引き裂いた。 戦友たちは必死の銃撃戦の末に次々と倒れ、押し寄せるドイツ軍に飲み込まれていった。 砲撃の音は次第に近づき、遠くで響いていた鈍い爆発音が、やがて地面を揺るがす轟音へと変わっていった。
私は隣にいる男を盗み見る、アラン・フィッシャー伍長。 疲労に刻まれた顔、汗と泥で汚れた制服。 我々は第2大隊・ロイヤル・ノーフォーク連隊の生き残りであり、敵を少しでも足止めするために残された者たちだった。 しかし、もはや分かっていた。 我々は撤退できない。 この場に残り、命を代償に時間を稼ぐのだと。
「そろそろ来るぞ」 フィッシャーが崩れかけた石壁の隙間から覗き込みながら呟いた。 「俺たちの部隊は見当たらない。どうやら孤立したみたいだな」
私は喉を鳴らしながら頷いた。腹の奥底で恐怖が渦巻いているのに、手だけは不思議と震えなかった。 私は前年に志願し、「国王と祖国のため」 に戦うつもりだった。 しかし、訓練ではこんな状況を教えてはくれなかった。 見捨てられることに、栄光はなかった。
遠くで響く振動が大きくなっていく。 戦車だ。 奴らが来る。
フィッシャーは身を潜める兵士たちに向かって言った。 「いいか、しっかり狙え。奴らに手痛い目を見せてやるぞ」
残弾はわずかだった。 私は弾薬を数えた、ポーチに十二発、小銃の弾倉には五発、薬室に一発。 敵を止めることはできない。 ただ、少しでも遅らせるしかなかった。
やがて、生け垣の向こうに最初の敵影が現れた、慎重に進むドイツ兵たち。 私は息を吐き、照準を合わせた。 指が引き金を絞る。
パンッ!
銃声が響き、ドイツ兵の一人が崩れ落ちた。 他の兵たちは驚き、遮蔽物に身を伏せながら、短く鋭い命令を叫んだ。 また戦いが始まった。
農家の廃墟が激しい銃撃戦に包まれる。 我々は死を恐れぬ者のように戦い、敵の隊列に向けて次々と弾丸を撃ち込んだ。 二階からは機関銃が火を噴き、敵陣を薙ぎ払う。 しかし、我々はあまりにも少なく、敵はあまりにも多かった。
ヒューン――ドカンッ!
迫撃砲弾が我々の陣地近くに着弾した。 爆発が土埃と瓦礫を巻き上げ、私はバランスを崩して地面に転がった。 耳が聞こえない。視界がぼやける。 ようやく正気を取り戻したとき、壁にもたれかかったフィッシャーが見えた。 胸から血が流れ出している。 彼の目は開いたまま、しかし何も言わなかった。 声をかける間もなく、彼は動かなくなった。
悲しむ暇はなかった。 さらに爆発が続き、農家の壁が崩れ落ちる。 私は弾倉が空になるまで撃ち続け、素早く新しいクリップを装填した。 そのとき、入口近くに何かが転がった。
手榴弾だった。
反応する間もなく、衝撃が身体を吹き飛ばした。 視界が闇に飲み込まれた。
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意識を取り戻したとき、世界は静寂に包まれていた。 ただ、炎のはぜる音だけが聞こえた。 戦闘はすでに過ぎ去っていた。
私は痛みに耐えながら身を起こした。 生きている、どういうわけか。 周囲には仲間の亡骸が散乱し、農家は瓦礫と化していた。
私はフィッシャーの遺体に近寄り、そっと彼の目を閉じた。 「安らかに眠れ、相棒」
そのとき、遠くからドイツ兵たちの声が聞こえた。 彼らは生存者を探していた。 私は動けなかった。 武器もなく、戦う力も残っていない。
フィッシャーのライフルに手を伸ばしたが、曲がりくねって使い物にならなかった。 私は無防備だった。
瓦礫の上にブーツが踏みしめられる音がした。 私は息を潜める。 目の前に、一人の若いドイツ兵が立っていた。彼もまた、私と同じくらいの年齢だった。
目が合った。
沈黙が流れる。
ドイツ兵はためらった。 そして、銃口を下げ、何かを呟きながら背を向けた。 私は息を殺したまま動かなかった。 他の兵士たちも近くを通り過ぎたが、彼らは瓦礫の中の一人の負傷兵など気にも留めなかった。
私は選ばなければならなかった。 降伏し、捕虜として戦争を過ごすか、あるいは、消え去るか。
ドイツ軍は生存者を集めていたが、死者を確認することはなかった。 私は半ば埋もれたフランス人のコートを見つけ、それを引きずり出した。 泥を顔と髪に塗り、できる限り変装する。 もし田舎へ逃げ延びれば、生き延びる道があるかもしれない。
鼓動が耳の奥で響く中、私はゆっくりと瓦礫の中を這い進んだ。 パトロールを避けながら、ただ生き延びることだけを考えて。
私はもはや、イギリス海外派遣軍の兵士ではなかった。 ダンケルクの廃墟に消えた、ただの迷い人となったのだ。
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