上手くいかない核燃料サイクル
資源に乏しい日本は、核燃料サイクル政策を推進してきました。
でも現実には、原子炉で発生した使用済み核燃料を再処理して、プルトニウムを回収するのをイギリスやフランスに委託してきたのですよ。
何とも酷い話ですよね~ 海外の再処理工場に原子爆弾の原料になる物質を、超危険なリスクを冒してまで、民間船で運んでいるのですよ。
海上保安庁の巡視船が一度は護衛をしましたが、環境活動家の抗議船に体当たりされ軽微ながら損傷しましたから、武装テロリストの襲撃ではなくて運が良かったのかも知れませんね。
海上自衛隊の護衛艦とは違い、巡視船は機銃しか装備していないのですから。
その後の海上輸送では、海上自衛隊では無くフランス海軍やアメリカ海軍に、護衛してもらったみたいですが・・・
自国で再処理をすればと思うのだが、肝心の核燃料サイクルの中核となる再処理工場も、未だに未完成なのだからどうにもならない。
肝心のプルトニウムを消費するための原子炉も、既にあるプルトニウムを消費するだけの数が無いのが現状だから、困ったことなのです。
基盤研究を目的として建設されたため発電能力が無い高速増殖炉の実験炉『常陽』は、照射試験用実験装置の上部が大きく破損する事故が発生したため、破損個所の修理自体は完了したものの、今も原子炉の運転休止を余儀なくされている。
プルトニウムを燃料にして発電が出来る高速増殖炉の原型炉『もんじゅ』も、ナトリウム漏れ事故など様々なトラブルが続き、結局廃炉となってしまった。
世界初のプルトニウムを本格的に利用する新型転換炉『ふげん』も、既に2003年に運転を終了し、廃炉となっている。
代わりに通常の原子力発電所(軽水炉)でMOX燃料を燃やす「プルサーマル発電」がサイクルの主軸となったのだが、プルトニウムの大量消費には向かず、対応できる原子力発電所も現在わずかで、たったの4基しかないのだから仕方がない。
日本の国内外に保有するプルトニウムは、2023年末時点で計44.5トンもあるのだそうだ。
それに対し、プルサーマル発電で消費するプルトニウムは原子力発電所1基あたり0.7トンにとどまるそうだから、今後もプルトニウムは減りそうもない。
更にまだ再処理していない使用済み核燃料も、各原子力発電所のプール内に大量にある。
使用済み核燃料は、常に水の中で冷やす必要があるそうなので、温度差発電が出来そうな気もするが、そんなことしないのですよね。
今後はプルサーマル発電ができる原子力発電所の数を、12基に増やす方針だそうだが、これでもプルトニウムを消費しきれる保証は無いそうだ。
かつてアメリカで開発され、歴史の闇のなかへと消え去ったまぼろしの原子力発電所、トリウム熔融塩炉ならばプルトニウムを消滅させることが可能らしいが、核兵器の開発と相反するため、日の目を見なかったのだとか・・・
アメリカとソ連が核兵器の開発競争と大量配備をしていた冷戦時代、プルトニウムが大量に必要だったのですから、消滅させる訳にはいきませんよね。
核兵器には核分裂物質の、ウラン235やプルトニウム239が必要なのだから。
近年、中国やインドでは、レアアース鉱石の精錬に伴って発生する副産物であるトリウムを、溶融塩に溶かして燃料として使用する溶融塩原子炉の計画が進められているそうですが、日本やアメリカでは残念なことに計画すらしていないようです。
上手く開発できれば、プルトニウムを減らすめども立つのに、ホント残念ですね。




