ウラン蓄電池
ウランには、質量数の異なるウラン235とウラン238が存在します。
そのうち、核分裂を起こしやすいウラン235を原子力発電の燃料に利用します。
しかし、ウラン鉱石にはウラン235が0.7%程度しか含まれておらず、残りの99.3%は核分裂を起こしにくいウラン238が占めています。
原子力発電の燃料製造時には、ウラン235の含有率を3~5%まで高める「濃縮」を行います。
更に原子爆弾等の兵器製造時には、もっともっとウラン235の「濃縮」をする必要がありますが、日本では行っていません。
その「濃縮」をする副産物として、ウラン235の含有率が天然ウランよりも低い「劣化ウラン」が大量に発生してしまいます。
劣化ウランは今の原子炉(軽水炉)の燃料には使用できないため、「燃えないウラン」と呼ばれることもあります。
劣化ウランは日本国内にはおよそ16000トン、世界全体では約160万トンが保管されています。
でも劣化ウランを有効活用する方法が、兵器意外に殆ど無いのが現状でした。
ウランは質量が非常に大きいために破壊力が高く、劣化ウラン弾として弾丸利用がされてきましたが、弾丸から放射線被ばくや環境汚染をしてしまう問題があり、非人道兵器とされています。
それが今回の劣化ウランを利用した『ウラン蓄電池』の開発により、やっかいものが有効活用される未来が見えてきました。
既に特許申請もなされているとのことですので、実験段階から工業製品化への期待が膨らみます。
課題は多くある物の、ウラン蓄電池を大容量化して実用化すれば、日本国内に保管されている大量の劣化ウランに新たな資源価値が生まれるとともに、再生可能エネルギー由来の電力供給網の調整機能として応えることができ、脱炭素社会の実現に貢献するようになりますので、それこそ『ゴミが資源になる』良い実例となることでしょう。
安全や環境に配慮しながら『ウラン蓄電池』の事業化が出来れば、日照や天候に左右されてしまうために、発電量が不安定で電力の安定供給が出来ない太陽光発電や風力発電の需給調整機能など、新たな役割を担うことが期待出来ますので、環境汚染の恐れがある危険な放射線物質だからと毛嫌いせず、優しく見守っていきましょう。
原子力発電の使用済み核燃料だって、冷却プールにずっと入れておくぐらいなら、温度差発電も可能だもったいないと思ってしまうのは、私だけでしょうか。