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5話 落ち着いたティータイム?

 目が覚めたらソファーの上で横になっていた。自分の手足には手錠がつけられ状況が呑み込めない。ソファーの前には机があり、その反対側には一人用のソファーが二つ。その奥で一人の男性がお湯を沸かしていた。


「あ、あの。ここどこですか?」


 最初の呼びかけで起きたことに気づいたのか耳をこちらに向け、続きの言葉の答えを発するためかこちらへ歩み寄る。何歩か進め目の前のソファーに手を置くと顔がはっきり見えた。深黒い髪に、光を反射しない深黒い瞳、顔立ちが整っている美成年の無表情は少し圧を感じる。その圧で長く感じる数秒のあと、彼は口を開く。


「ちょっ、ちょっと待ってもらって良いかな? いや~、もうちょいでお茶出せるから」


 気の抜けそうな言葉と共にそう笑いかけてくる。


「へ?」


 予想していたのと全く違った態度に、ポカンッとしているとまたしても天然なのかと言いたくなることを口走る。


「あれ? お茶じゃない方が良かった? ココアもあるけど?」


 変わっている、ズレている、なぜか湧いてくる疑心感。それらが秒で胸から撫で下ろされどこからか来た安心感へと変わる。言葉にするなら親の友人に会った様な感覚に、少し苦笑いが溢れ言葉を発す。


「できればココアでお願いします」


「はいよ」


 ――数分後。少し落ち着きすぎなくらい気が抜けた様な気がするも、落ち着いて会話する分には悪くないと割り切って考えながら飲み進めていると向こうが話を切り出す。てか、この手錠は外してくれないのかな?


「まあ、さっきの聞き方的に何も聞かされてなさそうだから、一から話すけど――」


「うちは奨談所そうだんしょって言う、簡単に言えば探偵とか傭兵とかかな?わかりやすく言うと学校の相談室みたいな感じ? ……それが元だし。あ、いいよいいよ飲んでて、勝手に進めるから」


 コップを置いて話そうとする俺に、まあまあと落ち着かせる。


「で、ここのリーダー? 社長? をしてるのがこの僕。黒澤清クロサワ シン。 気軽に清でも清さんとでも呼んでね」


 とりあえず紙に書き上げるね――と言って紙を左ポケットから、ペンを右ポケットから取り出す。先程名乗った自分の名前と、相談所の名前を書き出すと紙をこちらに回す。


「君のことはひかりから聞いてるよ。まあ、それ以前から知ってはいたけどそれは置いといて。色々巻き込んじゃってごめんね」


「あ~まあそれは俺が自分から首突っ込んだっていうか。そこまで謝られるほどのことは起きてないんで大丈夫です。これ以上は首突っ込むのもおかしな話なんで、俺は一般人に戻ります。あと手錠外してもらえるんですよね?」


 てかやっぱあの子ヒカリって言うんだ。まあ、それは置いといて流石に今日一日巻き込まれて疲れた。こんな疲れるなら主人公になってキャッキャウフフしなくていいや。


「う~ん。ここから話す内容的に無理かもしれない。とりあえず手錠と本題ね」


 そういうなり清さんはポケットの中を探ったと思ったら、そこから書類と鍵を取り出した。書類をテーブルに置きこちらに歩み寄る。


 無理とな? てか俺のことを知ってたってどういう――ってどうなってるんだあのポケット!? 色々気になるなおい!


「実はあの場所、少し古いし埃っぽいけど一応置き場として使われてる場所でね。取り壊す予定だったから少しぐらいなら壊しても問題なかったんだけど……」


 俺の隣に座り、鍵を使いながら話していく。手慣れた手つきで手錠を取り終えると言葉を濁しながら先程の紙を見やすいよう横にずらし、書類を見せてくる。それは、請求書だった。


「あのあと壁破壊されたせいで建物が耐えきれず崩落。それで備品とか諸々巻き添え食らったんだよ。で、結構壊しちゃった、じゃん? その……全部を」


「あの~。逃げていいっすか? てか壊したの俺じゃないですよね?!」


 ただの高校生の俺が払い切れないだろこれは。ゼロ何個だこれ、てかあんなとこにこんな大金になるもの置いとくなよ。


「敵から逃げることで破壊を幇助したといえばしたからね~」


「てことで頑張って言いくるめて半分額は譲歩してくれたけど……受け取ってください!」


「告白のノリ過ぎる!」


 やっべ。親になんて言おう……そう思うと気持ちが沈んでいく~。沈む気持ちに連動するように頭も下がってる気がする。


「大丈夫だって! あの、まだ話終わってなくてね。丁度いい? し、うちに就職しない? うちなら結構な金額渡せるし――」


「お兄さんうちに入ってくれるの⁈」

 

 清さんと俺が軽く肩を跳ねらせる。焦る清さんと沈む俺という、ある意味テンション高いのとテンション低いのでバランスを取っているとも言えなくもない面子。そこに少女がテンション高い組を優勢にする勢いでドアを開け飛び込んでくる。


 ん? てかなんでちょっと若返ってるの? ――と二度見してしまう程度には、ひかりは若返っていた。詳しく言えば、気絶する前と最初に会った時の中間ぐらいの、説明するのが難しい年齢になっている。説明しろってのがむずい年齢ってなんだよ。まあいいかと答えを発す。


「ん~~、って感じだよ今」


 入るのは良いとしても、学校あるし。けど借金できたし。けどできた原因、奨談所(ここ)だし……けど給料良くて、知り合いもいし……


 え?これ入る以外ないか?ないな。だって給料良くて知り合いいるもんな。別に目の前でプクーってフグみたいになってる人がいるからとか、清さんが深黒い目をがんばってキラキラさせてお願いしてるからとかは、いッッッちミリも関係ないけど決めた。よし決めた――


「よろしくお願いしま――」


「ちょっと待ってください!」


「入ってくるなって君には言ったでしょ」


 毎秒人来るな。さっきの静かなティータイムは何処へ?? ここまできたらもう1人来そうだな。


 指で俺を指しながら頑張って講義する子に頭を抱えながら清さんは釘を刺すも、頭に血でも上っているのか清さんの言葉に聞く耳を持たない。


「うちに入るのはいいですけどこいつと誰が組むんですか!」


「そりゃ、順当に行ってヒカリだけど」


「嫌ですよ! せっかくヒカリとなら問題ないって言ってもらったのにまた補助に戻るのなんて! あんなのただの見学じゃないですか!」


 またまた難しい問題か? こういうのは俺のいない時にやって欲しいけど。とりあえず影薄くしとくか。


「とは言ってもね〜。ヒカリは君より辰巳くんに懐いてるし相性も良さそうだよ」


 うっ、それでも僕は……結構頑張るなあの子、俺なら何でもいいからとりあえずお金くれって感じだけど。あっ、それここのせいか。あっはっはっは――


「なら辰巳くんとヒカリが組んだグループに勝ったらいいよ。もし勝てたら補助じゃなくて、君のために新しいチームも作ってあげる。どう?」


「ふぁ?!」


「とりあえず三日まってもらうけどいいかな?」


「はい、それでいいです」


 勝手に話進んでるしまぁた戦うの? 嫌なんだけど? やっべ筋肉痛な気がしてきた。てかもう一人来なかったな。あっはっはっはっはぁ……

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