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森の導の植物少女  作者: 文壱文(ふーみん)
第四章 大烏の都
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魔法講義と捜し物-1

「次は魔法総論の講義ですのでノートを少し多めに準備しておいて下さいね、三人共」


 雨がしとしと振り続ける木曜日。廊下の窓からは小粒の雨が跳ねている。シノメは転入して間もない三人に予め伝えた。


「ノート、ですか?」

「ええ。皆さんはルーン文字をご存知ですか? あれを書く量が……書き直すことが多くなると思うので」


 と、シノメは補足する。

 ルーン文字は魔法陣にも用いられているのでシーナ達も良く知ってはいる。しかし魔法陣を描く訳でもないのに、メモがたくさん必要だというのはどのような理由なのか。

 三人には全く想像できなかった。


「講義を聞いていれば、自ずと分かりますから。楽しみにしていて下さいね」


 シノメの口角が持ち上がる。長耳もピクピクと跳ねており、どこか嬉しそうな面持ちだ。

 するとシノメはマグ達の横を通り抜けた。


「……ねぇマグ」

「ん? どうしたシーナ」


 ふと、シーナの頭上にクエスチョンマークが浮かぶ。シノメに「職員室へ来い」と呼ばれた時から今まで、マグの様子はどこか違和感があった。

 シーナ曰く、どこか距離を感じると。


「あの先生と何かあった?」

「いや」


 マグはノリアへ視線を移し助けを求めた。


「ううん、何でもないんだよ。シーナさん」

「……そう」


 ノリアが兄に代わって答える。するとシーナは不満気ながらもそれ以上追求することはなかった。


「私は仲間はずれなのね」


 と、一言零すシーナ。

 自分がかつて王太子だったことを含め、言えないことの多すぎるマグは膝から崩れ落ちてしまった。




「おい」


 三人で廊下を歩いていると、ふと背後から声がかかった。シーナが後方を振り返ってみると少年の様相に目を丸くした。額から生えた二本の角には見覚えがある。


「貴方は確か……どちら様ですか?」

「っ!? あ、自己紹介は……していなかったな。俺の名前はエルム=ソムニフ。正真正銘のオニだ」


 オニ族の少年――エルムは軽快に笑う。それに対し困惑気味のシーナ。


「……それで私たちに何の用なのかしら」

「三人に謝りに来たんだ。以前の非礼な態度をどうか許してほしい」


 エルムは深く頭を下げる。それに対してマグとノリアも目を丸くしていた。


「貴方の謝罪を受け入れるわ、エルム」


 片方の角に人差し指をちょんと当てて、優しく微笑んだ。エルムは角を触らなれたせいなのか、バチリと脳に電流が走り抜ける感覚に大きく開眼した。


「ありがとう」


 エルムは一言、返すとその場を離れていった。シーナを横目にマグはエルムの背中をじっと睨んでいた。シーナ曰く、マグの様相は相当に不機嫌そうだったという。


 ***


 魔法概論の講義は予想以上に進行が早く、ノートへメモを取ることがやっとなくらいである。板書には魔法陣の枠が描かれており、そこに事細かくルーンが書き込まれていた。


「魔法陣は主に魔石を動力源として常に魔力供給を行うことが多いです。その場合は、ルーンで緻密に制御することが望ましいですね」


 一般に緻密な魔法制御にはルーン文字が向いている。しかし、有り体に言えば大雑把でも問題のない例も存在するとシノメは言う。


「それでは質問です。もしも、これが争いや自衛などで咄嗟に魔法陣を使わなければならない場合、わざわざルーンを組み込もうと思いますか?」


 皆、揃って顔を横に振っている。仮に窮地に陥った時、ルーンを組み込む暇があるかと問われれば当然そんな時間はない。


「もう一つ質問します。ルーン文字を組み込まなくとも、魔法陣として機能させることはできますか?」


 生徒たちの反応はイマイチだった。首を傾げる者、ううんと唸る者など様々だ。その中で明確に反応したのは三人――シーナ達であった。


「シーナさん、貴女はどう思いますか? できますか、できませんか?」

「可能だと、思います」


 シーナは少しの間を空けて回答する。そんなシーナの姿にマグは、誇らしげな面持ちで頷く。

 シノメは大きく息を吸って、長く吐き出した。


「私は元々、この国の生まれではありません。ダークエルフだからという訳でもありません。私の故郷は滅んでしまいました」


 シノメの昔話に目を見開く生徒たち。

 シノメは言葉を続ける。


「だから私は貴方たちに、生きていく上で必ず生き延びることのできるような……そんな魔法講義ができればと考えています」


 そのように締め括ったところで丁度、授業終了の鐘が鳴った。

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