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森の導の植物少女  作者: 文壱文(ふーみん)
第二章 エルフの園
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長命種-4

 休息をしっかりととり、遂に見えたエルフの里。里の入口、その手前。


「何もないわね。本当にここが入口なの?」


 シーナは問う。その質問にフィーロ達は実物を見せる形で解を示した。人差し指で宙に円を描き、くるくると何度か左右に回す。すると目の前の空間、その一部がくりぬかれ風が吹き込んだ。


「っ⁉ 本当に……ここがエルフの、里?」


 マグの口から困惑の言葉が漏れる。ノリアは周囲をきょろきょろと見回し、里の外観を観察していた。オレンジ色の果実や真っ赤な実をつけた木が丘の上に見える。風に身を靡かせる草花の中には、青く光るものがあったりと様々だ。

 そしてシーナはというと、


「な、な、な! なんで、どうして……」


 思わず言葉を失ってしまう。

 現在地は間違いなくエルフの里だ。しかし、彼らの想像する里ではなかった。

 エルフの里──魔法の技術のみ発展したために、生活の全てを魔法で賄おうとする集落。つまるところ家は簡素で道の舗装すらない、人間との交流を完全に閉じた集落であった。

 この場にシニカがいればきっと「足から雑菌が入り込んで当然」と思っただろう。シーナは容易に想像できた。


「やはり皆、靴を履いてはいないようね」


 里で生活するエルフ達を眺めてみると、()()だ。マグも住民の泥だらけの足元を見て、目を細めてしまう。靴下も履いていないために、ゴツゴツした岩の上では痛みが走りそうだ。


 観察を続けていると、目の前でエルフの一人が前のめりに倒れた。


「「「っ!?」」」


 シーナとマグはエルフが倒れた場所へ駆け寄る。足先をよく見るとやはりパンパンに腫れていた。

 転倒するしないにしても、住民それぞれの足先に(しっか)りと着目すれば、顔色に比べてやや赤くなった皮膚。


「お兄ちゃん、これ実際……どう思う?」


 ノリアが問う。しかしながら、マグは無言のままだ。彼ら彼女らの足をどう守るか、どこから靴の素材を見繕うべきなのか。マグは考えを煮詰める。


「シーナはどう考える? 俺はまず靴を作ることが最優先だと思うんだ」

「そうね、私はまず最初に薬を用意するべきだと思うわ」


 師匠(シニカ)の助言が無いからなのか、理由は定かではない。珍しいことにシーナとマグ、両者の意見は対立した。


「それならどうするんだよシーナ」

「こういうのはどうかしら? 多くのエルフを助けられた方が勝ちというのは」

「なんだ、勝負でもする気か?」

「勿論、折角シニカさんのいない場所で頑張るんだもの。勝負を楽しみましょ」

「いいぜ。勝った方は負けた方に……そうだな、一つ命令できるという条件も付け足そうか」


 シーナは無言で頷く。マグの前髪の奥──双眸が鋭く見開かれる。傍で眺めていたノリアは、バチバチと稲妻の音を鳴らす二人にため息をこぼした。その心を一言で表すなら、きっとこのようになるだろう。


「二人とも、素直じゃないな」


 ──と。


 ***


 シーナは昔、疫病にかかったことがある。いわゆる性病というもので、恋人を失った。ぽっかりと空いた穴をシニカ達が埋めてくれるうちに最近、どうにも心が小波(さざなみ)立つことが多い。


 ──シーナはその答えを既に持ち合わせていた。


「物足りない」


 何かが物足りないのだ。今の生活に不足はないが、満足しているとは言い難い。シニカ達、皆との生活は満たされるという感覚が欠如していた。

 ──それに加えて、自分が成長しているという感覚も。


「どちらが多く救えるか勝負よ、マグ!」




 シーナは現在、里で見繕える薬の材料を探していた。マグとノリアはペアを組み、靴の材料を探す。反対に薬を用意するべく、シーナはフィーロ達と行動を共にする。

 里の中を歩いていると、何かに気づくシーナ。


「この植物の根は……使えるわね」


 シーナの眼が鋭く光る。

 ダーオの根。一言で表せば下剤の素だが、創傷の治癒に用いることができる。エルフの里でダーオが自生しているのなら、作れる薬はかなり幅広くなるだろう。


「あとこれも」


 一見すると大葉(しそ)のような植物。しかし茎や根の色味が黄色い。シーナは茎の付け根を掘り出して、根を探す。


「二人とも、これらの根っこを集めてきてくれない?」

「「分かったよ!」」

「これでよし。あとあれが生えていれば──」


 シーナの求める植物はオレンという背の低い多年草。しかし、オレンと思わしき植物は辺りを見回しても見つからない。


「樹海の中なら、色々あったんだろうけど」

「シーナ、大丈夫?」

「ええ、私は大丈夫」


 シーナは里の中を回っては草木を観察した。それでも目的の草は見つからない。

 シーナはふと思案する。オレンの薬について関連する情報を師匠(シニカ)は何か零していなかったのか。

 代用できる草木は無いのか。


「あ、そうか……」


 吹く風が前髪を煽り、シーナの双眸が煌めく。考えをまとめ直し、フィーロとアーレに指示を出した。


「二人とも、キダハってここに生えていたりしない?」

「うん、見た事あるよ」


 アーレが意図が分からずに目を丸くして答える。シーナはすぐに「どこに生えているの? 案内してくれる?」と頼む。


「ええと、あそこのミカン畑の近くだよ」

「ありがとう、二人とも!!」


 シーナ達三人は、ミカン畑の方へ一直線に走っていった。

次回更新は1月22日です。

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