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たかが鯛焼き されど鯛焼き

よろしくお願いします。

挿絵(By みてみん)

「次の方、ご注文は?」


 お品書きといっても 'たい焼き' 'たこ焼き' しかない店。各々たのんでいった。茶色の紙袋へたい焼きを詰めてもらい店舗前の道路を挟んでの反対側の花壇へ渡っていく。座られるように椅子石が置かれている。その椅子に座って各々がたい焼きを袋から取り出した。

 その中で茉琳は他の3人に聞いてみる。


「ねぇ、みんなぁ、たい焼きってどこから食べるの?」

「頭からでしょうか」

「「尻尾から」」


 と男二人、


「私わねえ、お腹からぁ! 何気に餡子が詰まってます」


 茉琳の言動に3人は驚いている。


「何気に独創的だね」

「翔まで驚くのぉ、うわぁーん、ぼっちだよぅ」


 茉琳は人差し指を咥え涙ながらに翔に、


「翔ならって思っていたのにぃ。グスン」

「ごめん、ごめん。茉琳は目の付け所が良いって褒めてんの」

「褒められちった」


 茉琳は機嫌が良くなったのか、笑顔になっていく。

 そうして、早速、茉琳はたい焼きの腹部分に齧り付いていった。

「塩っぽいのが甘さを引き立ててるの。美味しひー美味しいね。翔」

「本当だ。甘さが引き立って美味しいや」


 アキホンさんも自分が紹介した手前、美味しいといってもらえて微笑んでいる。


「美味しくて宜しゅうございました。まりさん」


 言ってからアキホンさんは目を泳がせる。


「ごめんあそばせ、茉琳さん」

「えふぇ、ファヒイ?」


 口いっぱい頬張ってたい焼きを詰め込んでいるので、言葉として聞こえてこない。


「茉琳、意地汚いよ。」

「うゅーん、もぐゅもぐゅもぐゅ、ゴックゅん、ハー。何? おいし〜の」


 全部、喉に流し込んでからニッコリ笑って茉琳は答えている。


(確かにマリと言ってたけど、この人はなに?)


「うん、もう一個ぉ」


 ガサゴソと紙袋からたい焼きを取り出して口にしたところ、


「 」


 茉琳が固まった。顔の表情がなくなって視線も定まっていない。手も動いていない。

 口にした鯛焼きもぽろっと落ちてしまった。


「おっと勿体無い」


 翔はすぐに掬い上げる。


「お見事」


 それを見てアキホンさんも手を合わせて褒めている。そのうち茉琳も復帰する


「カケルゥ、ワタしぃ」


 翔は眉を落とし、落胆した顔になる茉琳の口へ食べかけのたい焼きをねじ込んだ。


「うぐん、モグゥ」


「すいません。アキホンさん。こいつ、偶に固まっちまって」


 アキホンさんの視線は優しかった。


「いえいえ、良いものを見せていただきました。ご馳走様ですね」

「そうですか」


 返答に困り、ポカンとした翔にアキホンさんは近づき耳元で囁く。


 「アキホンというのは構わないのですが、私の名前は秋穂と申します。神部秋穂が私の名ですよ」


 くすぐったさそうにして翔は彼女から顔を背ける。でも、気になったのか、


「どんな字で?」

「神様の部屋とかいて神部ですが」

「じゃあ、やっぱり'神'様みたいだったんですね。茉琳にも優しいはずダァ」

「ふふっ、そんな偉いものではありませんよ。茉琳さんは素直で可愛いからですよ」

「なんか悩むところですね。今はないですけど鼻ピアスに耳ピアスでしたよ」


 翔は顎に手を当てて困惑している。


「ねーえっ、2人で何、ヒソヒソしてるの」


 茉琳は機嫌悪そうに聞いてくる。


「茉琳さんの可愛い自慢ですよ。どこが良いかって話してたんですよ」

 

 アキホンさんがニッコリと答える。


「そおぅ、えへへ。翔う、私のどこが可愛い?」

「審査中につき後日、賞品の発送をもって発表とさせていただきます。あしからず」


「なにそれ」

 

 翔の答えに茉琳はヴゥーたれて、アキホンさんは口元を指で隠してッにニコニコしている。


「アキホンさんたちはこの後、どうしますか?」


 買ったたい焼きを食べ切ったのか、キョロキョロしだした茉琳を見て、翔は彼女に聞いてみた。


「せっかく地元に来ましたので実家によっていこうかと思いまして」

「彼女の家、お寺なんですよ」


 と、ゲンキチさん。


「茉琳、行ってみるか?」


 顎を指で上げる仕草をしながら思案してるマネをして、


「面白いものあるのぅ?」

「お寺ですからねぇ。…そうだ、ひげ文字なんてどうでしょうか」

「なに、それ! 見てみたいなシー」


 俄然、興味深々な顔つきになる茉琳さん。翔の手を取って引っ張って行く。


「じゃあ行こ、行こうょ」


茉琳の見たもの


挿絵(By みてみん)



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