22話 魔法を教えちゃいました。
「まずは、今魔法が使える方、使えない方に分かれて貰って良いですか?」
教室の中が半分半分程に分かれた。
「使える方が使えない方の手を握ってみてください。」
「魔法を水の流れの様にイメージして身体の隅々に流す様にしてみてください。」
「目を開けて相手の身体を見ながらやる方がやり易いと思います。ゆっくり…」
1組づつその上に手を重ねて上手く流れていない人は流す様にする。
組みになっていない人には私が魔力を流した。
全員が魔力が流れたのを確認して。
「今のが基本になります。今の流れも治療魔法の基本になります。今の様に身体の隅々まで魔力を流して怪我や悪い所を見つけたりします。3名ほど胃潰瘍になっている方がいましたね…」
「治療魔法の時は解剖学で見た身体の臓器を隅々まで頭の中で思い出しながらやると成功率が上がります。」
教室の中はまだ緊張感で張り詰めている。誰もが口を閉ざし真剣な目で私を見つめていて私以外口を開く人はいない。
「基本治療ですが、元の状態をイメージするのが1番良いと思うのでみなさん全ての臓器など身体の仕組みをしっかり勉強してください。」
「座って大丈夫ですよ。」
笑顔を浮かべながら話を続ける。
「この教室に魔力ゼロの人は居なかったみたいですね。今初めて魔法を感じた人も居るでしょうが…大体の人は今まで使えていなくても魔力を感じたり、見た事があると思います。」
全員の顔を見る。
最初の騒めきの時とは明らかに顔つきが違う。
「不思議だと思った事はないですか?何故全ての人が魔法契約書の契約が結べるのか?」
「魔法を使える人が魔法を流したから魔法契約書は有効になると考えられていますが、魔力をそもそも持たない人が記入しても効力がある意味…」
誰かが唾を飲み込む音が静かな教室で響いた。
「そこには殆ど全ての人が魔力を持っていて契約を結べているという事が根底にあります。」
先程の魔法契約書を私はマイ鞄から出す。みんなに見える様に掲げる。
「知らずのうちに、その人の魔力がその名前のサインに宿っているのです。」
息を呑む声が数人から聞こえる。
「今みなさんは力を手にしました。これを悪用しようと思うと誰かを傷つけたりできます。」
「しかし、私はその悪用の線引きはとても難しいと思います。自分が殺されそうになった時、相手を傷つけたら悪用でしょうか?自分の大切な人が殺されそうになっていたら?どうしてもお金が欲しくて治療をするからとお金を要求したら?」
「国の為に、誰かの為に使う力を全て悪用でしょうか?それは判断するのは誰でしょう?ここから始まる様々な事をどう広げていくか、どう使っていくかはここにいる1人1人の貴方です。」
「私は責任を取ると先程言いました。それは何か問題が起きたら私は自らの手でその方を止める覚悟もあります。」
「毒にも薬にもなる。力も権力もそういう物だと思います。ここにいる方はどちらも両手にお持ちの方々。その使い方を決めるのは私ではない。でも力を渡した私は見ています。」
私は教卓の前で手を打ち合わせる。集中していた人達はビクッと肩を揺らした。
「ではまず、私が見ていますので自分の魔力を光の粒の様にイメージして右から左に流してみてください。」
みんな無言で魔力の流れを回す。
出来てない人には肩に手を置いて一緒に流す。
「毎日、朝と夜に自分の身体にこの流しをする事で上達していきますのでみなさんぜひやってみてください。」
「これで1回目の《世界向上クラブ》のクラブ活動は終わりたいと思います。」
私は笑顔でカテーシーをした。