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お遣い屋 駒千の備忘録帳  作者: 世渡り
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駒千と一千のウェディングプラン前編

それから10年


駒千は森羅の右腕として働きながら、千葉にある山崎家の自宅で2人と(だん)の一匹で暮らしていた


八代亡き後、駒千は様々な手続きの元、山崎家に荷物をまとめてやってきた


数少ない荷物とは別に駒千の意向で3人で食卓を囲んだ飴色のちゃぶ台も持ってきたものの一つである


「参ったなぁ」


珍しくその日は森羅が自宅にいて、仕事の振り分けをしていた


珍しく、というのも森羅は一年の大半は井戸を通って依頼を受けにいったり依頼が長引けば1週間は帰らないことはザラにあるからだ


「何かありましたか?」


玄関掃除を終えてくると、しきりに文机で森羅万が唸っている


梅雨がはじまり毎日ジメジメとした気候が続き、森羅も自宅で仕事をする日が増えた


森羅は物事にジッと取り組むのが苦手らしくなんだかんだいいながら、現場で働くのが好きなのだ



(もともと書類仕事は駒千がやっていただけで本当は森羅の仕事である)


「知人の陰陽師が今度結婚するんだが、」


「へーおめでたいですねぇ」


「陰陽師のお偉いさん方が大勢出席するからなにか陰陽師っぽい余興を頼まれてねー」


そういえば、陰陽師の会合が時々あるらしくよく会合の招待状が届く


情報交換の場だったり、親交を深めたりするらしいが面倒臭いと森羅はほぼ出席していない


一緒に暮らしてみて森羅はかなり優秀で名のある陰陽師だと知ったのだが、森羅レベルになると会合に出席しなくとも仕事はたくさん入ってくるし、むしろ変に出席しても厄介事が増えるばかりらしい


駒千も会合に出席したことがないため、森羅の他に知っている陰陽師といえば15の時に許嫁となった芦屋千終(あしやせんしゅう)とその弟の一千(いっせん)の2人だけだ


芦屋家は陰陽師の血筋の中でも安倍晴明に次ぐ名家である


駒千のように陰陽師と近い仕事をこなすうちに他の陰陽師達にも目をつけられないように立場をはっきりとさせるために、森羅が縁組みをした


芦屋兄弟と出会ったのも、山崎家にきて直ぐだった


芦屋兄弟は元々頻繁にこの家に出入りし、森羅の世話を焼いたり、森羅から陰陽道を学んでいたらしい


兄の千終は大変に面倒見がよく、優しい。人見知りする駒千もすぐに懐いたほどだ


反対に弟の一千の方は、口数も少なく冷たい印象を受ける


どちらも大変に見目麗しい美貌の兄弟なのだが、とにかく千終は駒千の初恋の相手でもあった


「そうだ!駒千、この依頼芦屋兄弟と考えてくれよ。いつかは千終と駒千も式を挙げるだろうし、下見も兼ねて式場も一度見ておかくといいよ。その式場は陰陽師の御用達の由緒ある場所だからね」


「気の早いことです!そ、そんな結婚なんて…」


爪先から頭まで真っ赤になりそうな勢いで否定するがまんざらでも無さそうだなぁ~と畳で転がりながら丹は欠伸する


駒千ときたら千終の前ではツンツンしながらも、こんな具合で今にも蕩けそうなくらいにメロメロなのだから仕方ない


10年前までの駒千には考えられないくらい明るくなったし、なによりこんなメロメロな表情も千終の力が大きいと丹はみている


森羅ももちろん駒千を大切にしているが、やはり留守で家を開けることも多く、そんな時も芦屋兄弟はしきりに訪ねては駒千とともに食事をしたり宿題をみたりと面倒を見ていたのだ


千終は本当に子供好きで面倒見もよく、心底駒千を可愛がっていた


一千は兄の手前だからか、遠慮がちだったが実は一番駒千を気にかけていたように丹には見えた



「最近千終も仕事が忙しいみたいだったしたまにはいいじゃないか~会えていないだろ?新郎には伝えておくから今度新郎新婦に会ってくればいいよ。2人の馴れ初めなんて聞けばアイディア湧くと思うよ」


森羅は一つ仕事が片付いたと楽しげにリビングから出ていった



「そんな…千終さんと2人でなんて緊張します…あああっ。丹どうしましょうか?!」


「先生は、芦屋兄弟とっていってましたから3人で?では?」


丹が冷静に答えながら朝食の生野菜を食べる


「流石に私達の仲に気をつかって、一千さんは来ませんよ~」


すっかり頭の中はお花畑なのが残念だ



数日後


「…俺だけで悪かった、とは思ってる…」


一千は明らかにガッカリした雰囲気を撒き散らす駒千にいい放った


「別に…いいですよ…」


「聞いてなかっかのか?兄貴は連絡しとくっていっていたけど」


「来ましたよ、3日前に。多分いけないって!でも "多分"だから "もしかして" ってなるかもじゃないですか!期待したー!」


「期待するなよ。兄貴は忙しいから」


「一千さんはいそがしくないんですね」


「嫌みかよ。公務員だから土日祝日休みだ」


昔に比べてはお互い喋る用になったが、ある程度喋れば無言なるのもいつものことだ


一千には愛嬌がなく、よくいえばクール


またそれがいいと周囲は言うが駒千はやはり千終一筋だ


新郎のほうが森羅と幼馴染みらしく連絡をとってもらい新郎の家の近くの喫茶店で待ち合わせとなった


「やあ。君たちが山崎の弟子なの?ん?彼の方は見覚えがあるな・・・ああ、君芦屋のご子息だろう?」


目印がないから不安だったが、雨の日の午後ということもあってか店内はがらりとしていた

声をかけてくれた男性は例の新郎で、ふっくらとたお腹がすこしキュートな30代後半の誠実そうな男性だった


「はじめまして芦屋 一千です。この度はおめでとうございます」

 

陰陽師の名家だとは聞いていたが界隈ではかなりの有名人なのだろう


「するとこのお嬢さんが噂の式神使いの山崎のお弟子さんかな?」


以前に、あの山崎森羅が式神使いの弟子をとったらしい、

という噂が随分前から流れているらしいという話を前に千終から聞いたことがあった


「はじめまして。翠川 駒千といいます」


「俺は 伊吹(いぶき) 法師(ほうし) 山崎に頼んだら優秀な弟子たちに修行もかねて任せることにしたって言われたよ。あいつの下でよくがんばっているね、そういえば君たちも婚約者同士なんだってね」


間髪いれずに駒千は否定する


「違います。彼ではなく、彼の兄のほうと私が許嫁なのです」


おおよそ森羅が曖昧な情報を流したせいでややこしくなってしまったではないか


「ああ芦屋家は2人兄弟だったか」


納得したようだったがそれほど興味がないようだ


「今日は奥さまはこられないんですね」


てっきり二人に会えると思っていたので拍子抜けした

結婚式は花嫁が主役のようなものなので新婦の好みも把握しておきたかったので残念だ


「実は妻は、陰陽師に会うのが苦手なんだ。これから先もあまり妻に負担をかけたくないと思っている。正直披露宴も陰陽師の余興なんて要らないし望んでいなんだが、いろいろと付き合いってのがある」


どうやら披露宴での余興は彼たちの望みではないらしい


「披露宴も余興もやる代わりに今後は一切、妻には関わらない、という方針で俺の両親を含む陰陽師たちに納得させたんだ」


「素敵ですね…奥さんを大切になさっていて」


駒千はうっとりと伊吹を見つめている


「奥さまの意向も尊重したいのですが、実際に会わせては頂けないでしょうか?」


「そうだな…君たちなら……もしかして」


ぶつぶつと念仏を唱えるように伊吹はなにかを呟いていたがぱっと表情が明るくなる


「是非会ってくれるかな?」


















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