出会い編 続
「今回は一体なんなんですか?」
「君によく似た子供を預かってね、しばらく暮らしているのさ。女の子でそりゃあめんこい子で」
「子供・・・ですか。女の子」
八代は神社の横の小さな宿舎で暮らしている何度も依頼で森羅も寝泊まりしたことがある
「山崎君に紹介しようと思ってね。どうやら外にいるらしい。連れてくるから先に中で休んでいなさい」
八代が神社裏の境内の方に探しに回るとすぐに近くの茂みからウサギが一匹飛び出してきてじっとこちらの様子を観察しているように見えた
「黒いウサギ・・・」
真っ黒なウサギからは、わずかに妖気がほんのり香っているが悪いものではなさそうだ
‘妖しいのがイル。ヒト。オトコ’
ウサギは片言の言葉で誰かに伝えているようだった
茂みから同時に幼い少女が現れた
ウサギと同じ真っ黒のツヤのある髪をした実に可愛らしい少女だった
肌は雪のように白く、唇だけは血のように赤い。
色があるのは唇と吸い込まれそうな深い夜のような瞳だった
「あなたはだれ?また心のお医者さん?」
ひどく疲れたような、渇いた声。
「あっ。お駒ちゃんや。ここにいたのかい?丹も一緒かい?丁度よかった。ご飯にしようと思ってね。お駒ちゃん、この人は山崎君。山崎万象」
「山崎 森羅ですよ。いつも間違えないでください」
3人と1匹で小さな丸いちゃぶ台を囲む
丸いちゃぶ台は、飴色で美しい光沢を放っている
長年八代と森羅によって使い込まれており2人で囲んだ食卓を今は3人で囲んでいることが不思議だ
八代の料理といえば具だくさんの味噌汁だったり、鍋物が多くあとはつやつやの米に握った塩結び
それから、地元の方々の差し入れの煮物だったり漬け物だったり野菜や季節の果物もたくさんある
お駒と呼ばれた少女は夕飯を食べると眠りだしたので隣の部屋に山崎が運んだ
ウサギも少女とともに眠りについた
「八代さんあの子は・・・」
「友人の孫だよ。生まれつき霊力が高くてね、
それだけならまあよかったんだが、あの子がつれていたウサギ。
あれはあの子が造り出した。式神なんだ。
陰陽師でもない普通の女の子が修行もせずにそんなものを生み出すのだから・・・。
とにかく得たいの知れないと、母親のほうが気の病になってね。
もうじき臨月だというし、しばらく預かることになったんだ」
心の医者というのは、カウンセラーのことだろうか
なにしろ、心が傷だらけなのは確かなようだった
実の母親には疎まれ嫌われ、理解されず
「私が見たところ狐憑きなどではないようですし、普通の女の子でしょう」
「あの子に足りないのは、家族じゃない。友人でも心の医者でもない」
「愛と情だけが足りていない。昔の山崎君みたいじゃないか。」
あの頃の自分はあんな風だっただろうか
あんなにボロボロだっただろうか




